予定通り、新幹線車中で論文一本(10枚)を書き上げ、引き続き二本目を書いているところで東京着。
中央線で新宿に出て、バスで抜弁天の合気会本部道場へ。
今年最後の多田先生のお稽古に出る。
新婚のK藤くんにご挨拶。先日、お祝いにワイングラスをお贈りしたので、そのお礼の口上を受ける。まことに礼儀正しい青年である。
二時間半ほど久しぶりにころころと受け身を取る。
太刀取りの途中で、早引けのため多田先生においとまのご挨拶をする。
今年も一年間お世話になりました。先生もよいお年をお迎えください。
東京まで来てよかった。
抜弁天からタクシーを飛ばして池袋へ。
会場に行くと「元・美人聴講生」のE田くんが来ているので久闊を叙す。彼女はかつてこの表記を「元美人・聴講生」と分節を誤って読んでたいへん傷つかれたらしい。すまないことをした。
本日の主催者の角川書店とリブロのお歴々とご挨拶。
そこに春日先生が見えて、一年ぶりのご挨拶。わいわい話し込んでいるうちに開会の時間。
190名のお客さんで会場はびっしり。
話すことは別に決めていなかったのだけれども、最近の一連の犯罪と解離症状の話題を皮切りに70分間話し続ける。
どれほど破綻した家庭であれ、それによってバランスが取れて、バランスシート上は「利益」が「不利益」を上回っている場合、これを「異常」とみなすことが妥当であるかどうかという根源的な問題に突き当たる。
一家庭だけで「収支の決算」をして、「利益」を出すという発想そのものが病んでいるのではないか・・・という暫定的な了解に達したところで時間切れ。
岸田秀は個人の心理と集団の心理は同じ力学が働いているという「唯幻論」によって国家論に新しい切り口を示した。
それが「あり」だとすれば、個人の場合と同じように「家族の人格」「家族の心理」「家族の抑圧」「家族の欲望」というものを想定することはできないのだろうか。
その場合、家族の健全は、個人や国家の場合と同じように、「『うちとは違うよその家族』たちとどのようにコミュニケーションを成り立たせうるか」の能力に基づいて考量しうることになる。
しかし、家族を一個の人格とみなして、それが他の家族と取り結ぶコミュニケーションの能力や失調に基づいて家族の健全度や開放性を査定できると論じた社会理論を私は寡聞にして知らない。
おそらく家族集団ごとにひとつの「家的人格」というものを措定するという発想そのものが「家父長的イデオロギー」として退けられて久しいからであろう。
だが、現在「階層化」というかたちで進行しているのは、そのような趨勢に冷水を浴びせるような事態である。
この社会で最上層を形成し、権力や財貨や情報を占有しつつあるのは、言われるような自己決定・自己責任を全うしている単体の個ではなく、門閥や閨閥に厳重に絡め取られたせいで、成員たちは職業選択や政治意識について「フリーハンド」を封じられている代償として、ある種の特権を享受している「集団」である。
その一方で、あらゆるレベルの中間共同体から離脱して砂粒化した個体たちは構造的に「下層化」している。
生物として考えた場合、集団を形成しているものと単体でリスク社会に立ち向かっているものではどちらが有利か誰にでもわかる。
リスク社会において高い確率で生き延びられるのは彼の存在自体が「リスク」であるところの例外的強者と「リスクヘッジ」してくれる仲間を持っている弱者たちだけである。
それはサバンナにおけるライオンやトムソンガゼルの生き方を見ればわかることだ。
しかし、今の日本社会において支配的な社会理論はトムソンガゼルに向かって「群れを離れてひとりで生きること」をつよく勧奨している。
これがライオンの「思うつぼ」であることにどうして誰も気づかないのか、それが私には不思議である。
もし、弱者が社会的リソースの「奪還」や公平な「分配」を望むなら、いまのところ最も堅実な方法は「健全な家庭を持ち、家族メンバーの手厚い支援を受ける」ことである。
家父長的イデオロギーを「政治的正しさ」の名において廃棄したら、家父長的イデオロギーをいまだ墨守している「反動的」少数者に社会的リソースが集中してしまった・・・という「政治的に正しくない」現実をどう理解すればよろしいのであろうか。
今後もさらに親族や地縁共同体や「親方日の丸」的企業などの中間的共同体の「構造改革的解体を進め、自己決定し自己責任を取る単体の個がリスク社会の淘汰圧に向き合って「負け」続けるオプションをこれから先も最良のものとして推奨すべきなのであろうか。
苅谷剛彦さんが指摘しているように「自己決定し自己責任を取る主体」を組織的に作り出すことを推奨したのは小渕内閣の諮問機関であるし、「自分探しの旅」ということを言い出したのは中教審である。
つまり、社会の「上層部」の方々が下々のトムソンガゼル的民草にむかって「ひとりで生きろ」ということを強くアナウンスしたわけである。
その結果はご案内の通りである。
というような話に転がりそうだったのであるが、その前に時間切れ。
対談のあと、角川書店、文芸春秋、講談社の「三社連合」のご接待で冷たいビールと揚げ物で爆笑打ち上げ大会。
各社の皆さま、ご馳走さまでした。
学士会館に投宿して爆睡。
朝8時に起きてすぐに東京駅へ。
帰りの新幹線の中で予定通り二本目の論文にとりかかるが、車両があまりに揺れるのでパソコンのキーがうまく打てない。
断念して不貞寝。
昼前に大阪に着き、家に戻って着替えて大学へ。
会議がひとつ、授業がふたつ、それからまた会議。
へろへろになって帰宅。
投稿者 uchida : 2005年12月12日 22:29
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12月14日内田樹先生と甲野善紀氏の対談を読む(中央公論1月号)。内田先生は相変わらずエッジの効いた輪郭の鮮明なことばを発信しておられ、こちらも触発されることが... [続きを読む]
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ということで、古田選手のサイン会の後、もう一件のトークショーは、
内田樹×精神科医春日武彦のトーク&サイン会。
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内田樹さんのブログを読んで、結構思うところがあったのでそれについて書きたい。
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トラックバック時刻: 2005年12月17日 06:53
» 家庭内他者に、ドアを開ける余裕について。 from プロ家庭教師(女性)は、見た。
内田先生のブログ
を読んでいて、すこし頭の整理がついたので、記事にします。
リスク社会において高い確率で生き延びられるのは彼の存在自体が「リスク」で... [続きを読む]
トラックバック時刻: 2005年12月17日 09:30
池袋での対談、大変楽しく拝聴させていただきました。
池上先生との対談時よりもはるかにエネルギーの放射量が高く、少し前のブログでも書かれていた通り、このまま年末に向けて燃え尽きてしまわないかどうか心配になるほどでした。ご自愛ください…って不可能ですね。
それはそれとして対談のオチが(結論にあらず)「メイドと執事が日本を救う」ってものになったのは意外と現実性のある話なのかもしれません。
現に都心の共働き家庭でフィリピン人メード(メイドさんとは違うんだい!)が働き出している、と読売新聞に載っていましたし、ダイアナ元妃が心を打ち明けた手紙を書いたのは元執事でした。
ホームヘルパー業も華やかになってきていますし、日本の未来にさす一筋の光明はメイドさんなのかもしれないですよ。
ちなみにアキバ系の人がメイドさん萌えになった原因の30パーセントぐらいがこの↓マンガです。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757709722/qid=1134434839/sr=1-5/ref=sr_1_10_5/249-8599439-2979530
この古典的ともいえるメロドラマが人気を博しているのと、最近の韓流ブームとの相関性も興味深いところです。
投稿者 mamodolian
: 2005年12月13日 10:08
mamodolian さま:ご教示ありがとうございます。あのあとの打ち上げ宴会の席でも、その漫画のことが話題に上りました。「めがねをかけたメイドさん萌え」というのがいま熱いらしいですね。
聴けば純愛ものとか。
さっそくアマゾンで購入してみます。
「執事」ものもたしかあったような気がします。文春のタナカくんが詳しくて、「主人と執事が心中しちゃう」というハードコアな漫画をご紹介頂きましたが、タイトル忘れちゃいました。
「メイドと執事(ついでに書生や子守などもふくめた「家庭内他者」たち)」をめぐる物語についてご存じのかた、ウチダあてにご教示ください。
「家庭内他者論」て、なかなかホットポイントですよね。
うん。
投稿者 uchida
: 2005年12月13日 11:19
はじめまして。
「家庭内他者」については最近各方面で話題になっている漫画
「今日の猫村さん」をお勧めします。
アマゾンで単行本も買えますが、先生の様にネット上で公開されていますので
手間を惜しまなければ全話読むことが出来ます。
http://www.zaq.home.ne.jp/channels/lifestyle/nekomura/?cID=ranking_3c
投稿者 TOSHI-HANA
: 2005年12月14日 07:28
はじめまして。私は、早稲田大学3年生の夏川潤香(21歳)です。現在、社会の問題点をわかりやすく綴ったブログ活動を目指しています。その最初の話題は『靖国問題』に決めました。
これを12月末までやります。他にも、起業や創業、株式市場、他国の反日教育などを取り上げていく予定です。
さて、近年のホームページ、特にブログの影響力は、世論を動かす強大なものになっています。私は、ブログで日本を洗濯していきます。そして、ブログで日本を変えていきたいのです。
混沌とした今の時代には、社会を変える『志士』が必要だとは思いませんか。『志士』は男性だけでなく、女性でもなれると思います。私は女子学生の『志士』になりたいです。
来年、ゼミの皆と、一時的に起業します。そして、卒業後は、経済産業省で働き、今までと違った女性官僚として、活躍していきたいです。ブログを読まれた皆さんの感想などが知りたいです。コメント、もしくはメールを頂けたら嬉しいです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
※闘う早大生:夏川潤香の『日本を洗濯します!』
http://yaplog.jp/uruka_natukawa/
※リンク大歓迎です。私のブログに御理解頂ける方は、ご自由にリンクを貼ってください。よろしく御願いします。
一世代前は再婚のとき自分より若い女性を選択していた男性が
今は中年以降の女性を希望しているそうです。
子どもは金がかかる。自分の人生をこれ以上侵食されたくない!若い女性は妊娠の可能性あり恐怖だそうです。
家族?なるべくたくさんでしょうか大家族で戦うのですか
男性が恐怖しているのに?主婦のわりには人と会う機会が多いのでそれとなくさぐりをいれました。男は矢張り疲れている!大家族は男性が希望していないようです。
少子化でかまわないと思うけれど、産んでほしければ教育費を
無料にしたら産む人が増えると思います。
宇宙とつながっているたましいの感覚で結婚をすればふたりでも最強のカップルになるようなのでそちらに比重をかければ
政治、経済、環境問題も改善するのではないでしょうか
小泉さんが改革とはいうけれで改善とはおっしゃらないので
うーんと思っています。
投稿者 .おきつひめ
: 2005年12月15日 13:56
TOSHI-HANA さま:ご教示ありがとうございます。
実は、「今日の猫村さん」はゼミ生が半月ほど前に「先生、いいから黙ってこれを読みなさい」と命令文でご恵投くださいましたので、拝読致しました。
こういう情報感度のよい学生に囲まれていると手間が省けて助かります。
おもしろいマンガでしたね。
やはりこれも「執事メイド」系に分類してよろしいのでしょうが、とくに猫村さんのキャラ設定が、『坊ちゃん』の清を思わせるところに「じん」と来ました。
清のようなタイプの女性が「政治的に正しくない存在」として日本社会から排除されて久しいように思いますが、清=猫村さんタイプの「癒す人」が存在することが親密圏の形成に不可欠ではないか、と考える今日この頃のウチダなのであります。
投稿者 uchida
: 2005年12月15日 17:45
「今日の猫村さん」、先日読みました。『坊ちゃん』の清をさっと想起されるところが、「教養がある」ということなんでしょうね。
そういえば、清については『「おじさん」的思考』に収録の『「大人」になること』で論及されておられましたね。
投稿者 okada
: 2005年12月16日 19:45
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