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2013年11月 アーカイブ

2013.11.08

特定秘密保護法について

衆院で特定秘密保護法案の審議が始まった。
すでに多くの法律家が指摘しているように、この法案は国民主権と基本的人権を侵害する恐れがある。
行政が特定秘密の指定を専管すれば、憲法上国権の最高機関であるはずの国会議員の国政調査権も空洞化する。
国民にしても「秘密保護法違反」の罪で訴追された場合、自分が何をしたのかを明かされぬままに逮捕され、量刑の適否について議論の材料が示されないまま判決を下され、殺人罪に近い刑期投獄されるリスクを負うことになる。
前にも繰り返し書いてきたとおり、自民党の改憲ロードマップは今年の春、ホワイトハウスからの「東アジアに緊張関係をつくってはならない」というきびしい指示によって事実上放棄された。
でも、安倍政権は改憲の実質をなんとかして救いたいと考えた。
そして、思いついた窮余の一策が解釈改憲による集団的自衛件の行使と、この特定秘密保護法案なのである。
解釈改憲は文言をいじらないで、事実上改憲して、アメリカの海外での軍事行動に参加する道を開くことである。
憲法をいじらないで、内閣法制局の憲法解釈に任せるなら、実際に海外派兵要請がアメリカから来て、その適否の判断が喫緊の外交課題になったときに「ぐずぐず議論している余裕なんかない、待ったなしだ」というお得意のフレーズを連打して、無理押しすることができると踏んだのであろう。
とりあえず、それまでは「アメリカと一緒に海外で軍事行動をするぞ」というのは政権担当者の心の中の「私念」に過ぎない。
成文化されない「心の中で思っていること」である限り、中国や韓国もこれをエビデンスベーストでは批判することができない。
特定秘密保護法案は放棄された自民党改憲案21条の「甦り」であることがわかる。
改憲草案21条はこうであった。
「出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。」
特定秘密保護法は「公益及び公の秩序」をより具体的に「防衛、外交、テロ防止、スパイ防止」と政府が指定した情報のことに限定した。
現実にはこれで十分だと判断したのであろう。
例えば、私の今書いているこの文章でも、それが防衛政策や外交政策の決定過程についての政権内部での秘密に言及したものであり、「重大な国防上の秘密を漏洩し、外敵を利することで結果的にテロに加担している」という判断はできないことはない(私のような官僚的作文の名手に任せてもらえれば、そのようなフレームアップはお安いご用である)。
私とて大人であるから、政府が国益上公開できない秘密情報があることは喜んで認める。だが、秘密漏洩についての法的措置は多くの法律家が指摘するとおり現行法で十分に対応できている。
現に、重大な国防外交上の秘密漏洩事案は過去にいくつかあったが、いずれも現行法によって刑事罰を受けている。この法律がなかったせいで防げなかった秘密漏洩事例があるというのであればそれをまず列挙するのが立法の筋目だろう。
だが、そのような事例はひとつも示されていない。
これまで存在したが罰されずに見逃されてきた事例について、それを処罰する法律を立法するのは筋目が通っている。
けれども、これまで存在しなかった犯罪について、それを処罰する法律の制定が国家的急務であるという話はふつうは通らない。
秘密保護について言うなら、これまで官僚たちが大量の秘密文書を廃棄して、国民の知る権利を妨害してきたことを処罰する法律を制定することがことの順番だろう。
この事例はまさに1945年の敗戦時の膨大な文書廃棄から始まって、開示請求に対して「みつかりません」とか「なくしました」とか「燃やしたようです」というような木で鼻を括ったような対応をしてきた官庁まで無数の事例がある。
これを許さない法律の制定であるなら、私も大歓迎である。
だが、今回の法律のねらいはそこにはない。
逆である。
「行政の失態や誤謬」にかかわる情報開示が特定秘密に指定されれば、行政への批判は事実上不可能になる。
これがきわめて強権的で独裁的な政体に向かう道を開くことであるという判断に異を唱える人はいないだろう。
政府はTPPの交渉や原発事故対応は特定秘密の対象にならないと答弁したが、原発の警備実施状況は特定秘密に該当すると述べた。
開示請求された情報の中に特定秘密に該当するものが断片的にでも含まれていれば、行政はその全部を秘匿するであろう。法律を弾力的に運用すれば、自己利益が高まるなら、政治家も官僚も必ずそうする。これは断言できる。
特定秘密保護法は賢明で有徳な政治家が統治すれば実効的に機能するが、愚鈍で邪悪な政治家が統治すれば悪用される法律である。
そういう法律は制定すべきではない。
それは現在の政治家や官僚が例外なく愚鈍で邪悪であるということを意味するのではない。
そのような人々が政治の実権を握ったときに被害を最少のものにするべく備えをしておくのが民主制の基本ルールだからである。
別に私がそう言っているのではない。
アメリカの民主制を観察したトクヴィルがそう言っている。
だが、その「民主制の基本ルール」を現在の安倍自民党政府はご存じないようである。
「民主国家」の統治者が民主制の基本ルールを知らないという場合、彼らが「賢明で有徳である」のか、それとも「愚鈍で邪悪である」のか、その蓋然性の計算は中学生にもできる。
安倍政権の狡猾さは、この特定秘密保護法が「果されなかった改憲事業」の事実上の「敗者復活戦」でありながら、アメリカのつけた「中国韓国を刺激するな」という注文については、これをクリアーしていることにある。
強権によって国内の情報統制を行うという点について、この両国は日本に「そのような非民主的な法律を作るのはよろしくない」と批判できる立場にない。
言ってもいいが、国際社会からも国内からも冷笑を以て迎えられるだけだろう。
だから、表現の自由の抑圧はいくらやっても、東アジア諸国(シンガポール、ベトナムはじめそのほぼすべての国が現在の日本よりも表現の自由において民主化が遅れている)から「非民主的なことはやめろ」という抗議が来る気づかいはない。
それどころか、日本のような豊かで安全な国でさえ、治安のために強権的な言論統制が必要なのであるから、治安の悪いわが国においておや、という自国の強権的統治を正当化する根拠として活用することができる。
つまり、まことに気鬱なことであるが、日本の民主化度を「東アジアの他の国レベルまで下げる」ことは世界的に歓迎されこそすれ、外交的緊張を高める可能性はないのである。
というわけで、安倍政権は改憲プランを放棄した代償に「東アジアに緊張関係を作り出さずに改憲の実を取る」という宿題に「集団的自衛権」と「特定秘密保護法案」を以て回答したのである。
かなりの知恵者が政権中枢にはいるということである。

2013.11.09

特定秘密保護法案について(つづき)

昨日のブログで、特定秘密保護法について私はこう書いた。
「安倍政権の狡猾さは、この特定秘密保護法が『果されなかった改憲事業』の事実上の『敗者復活戦』でありながら、アメリカのつけた『中国韓国を刺激するな』という注文については、これをクリアーしていることにある。(・・・)まことに気鬱なことであるが、日本の民主化度を『東アジアの他の国レベルまで下げる』ことは世界的に歓迎されこそすれ、外交的緊張を高める可能性はないのである。」
これについて、池田香代子さんから「ニューヨークタイムズが法案についての批判記事を掲載していました」というご教示を頂いた。
さっそく読んでみる。
NYTは10月30日の社説で「日本の反自由主義的な秘密保護法案」(Japan’s illiberal secrecy law)という記事が掲載されていた。illiberal は「リベラルでない」という政治的な意味の他に「狭量な、教養のない、下品な」という人格の瑕疵についても用いられるきわめて否定的な形容詞である。
タイトルは4月の同紙が掲げたJapan’s unnecessary nationalism (日本の不要なナショナリズム)と同形的であり、文体もロジックも共通点が多いので、おそらく同紙の日本担当記者によるものであろう。
いずれの社説も安倍政権が時代を逆行するような強権的で好戦的な国家を作り出そうとすることを批判しているのだが、その論拠は、一つにはリベラル派のデモクラシー擁護の立場から、一つにはアメリカの西太平洋戦略への妨害要因として批判するという「二正面」的なものである。
とりあえず全文を読んで頂こう。

「日本政府は国民の知る権利を冒す秘密保護法案の制定をめざしている。この法律はすべての政府省庁に防衛、外交、防諜、対テロにかかわる情報を国家機密に指定する権限を賦与するもののだが、秘密の指定要件についてのガイドラインが存在しない。この定義の欠如は政府があらゆる不都合な情報を秘密指定できるということを意味している。
提案された法案によると、機密を漏洩した国家公務員は10年以下の懲役刑を受ける。このような規定があれば、公務員は秘密公開のリスクを取るよりは文書を秘密に区分するようになるだろう。
現在まで、情報を“防衛機密”に指定できる権限を持っていたのは防衛省のみであるが、その記録は底なしの闇に消えている。2006年から11年にかけて防衛省が秘密指定した文書は55000あるが、そのうち34000が文書ごとに定められた非公開期間の終了後に廃棄されている。情報公開された文書はただ一件だけである。
新法案はこの非公開期間を無限に延長することを可能にするものである。そればかりか、国会議員との秘密情報の共有についての明確な規定がないため、政府の説明責任はいっそう限定的なものになる。
法律はさらに「無根拠」(invalid)で「不当な」(wrongful)な方法で情報収集を行ったジャーナリストに対しても5年以下の懲役を科すとしている。このような脅迫によって政府の実体は一層不明瞭なものとなるだろう。
日本の新聞はジャーナリストと公務員の間のコミュニケーションが著しく阻害されることを懸念しており、世論調査は国民がこの法律とその適用範囲に対して懐疑的であることを示しているが、安倍晋三首相はこの法律の迅速な制定を切望している。
安倍氏はアメリカ式のNSC(国家安全会議)のようなものを設立したがっているのであるが、これはワシントンは日本が十分な情報管理が果たせないのであればこれ以上の情報共有はできないということを通告したためである。
安倍氏が提案している安全会議の6部局のうちの一つは中国と北朝鮮を管轄し、他の部局は同盟国その他の国を管轄する。
この法案制定の動きは安倍政府が中国に対して示している対立姿勢と政権のタカ派的外交政策を反映しているが、法律は市民の自由を侵害しかねないものであり、東アジアにおける日本に対する不信をいや増すことになるであろう。」

書かれている内容は日本の新聞が報道していることとほとんど変わらない。
問題はこれがNYTの社説だということである。
4月の記事がそうであったように、NYTの安倍政権の政策批判はワシントンの意向を迂回的にではあるが示している。
前回の社説が出たあと、わずか2週間前に「村山談話の見直し」を高らかに宣言した首相は「村山談話の継承」への180度の方向転換した。
この「食言」の政治的責任を問う声は日本のメディアからはついに聴かれなかった。
アメリカの一喝で日本政府の外交方針が一夜にして逆転するという事実(つまり、日本がアメリカの衛星国であり従属国であるという事実)を日本の政治家も官僚もメディアも決して認めない。
いずれにしても、NYTの記事はホワイトハウスからのひとつのシグナルとして解読されねばならないということである。
記事そのものにそれだけの影響力があるということではなく、この記事がワシントンにおける「日本に対するそのつどのドミナントな判断」を伝えているからである。
この記事がこれからあとの安倍政府の動向にどう影響するのか、今の段階ではまだわからない。
昨日書いたように、改憲や談話見直しに比べると、「中韓を刺激しない」という点では特定秘密保護法案はアメリカの要請をクリアーしている。
「アメリカに迷惑はかけませんから」とこのまま一気にごり押しするか、アメリカとの情報共有体制を整備するための法案に当のアメリカからクレームがついたのは想定外だったからちょっと様子を見ようか、政権内部では今そういう相談をしているはずである。
まことに切ないことではあるが、私は「アメリカのクレームに屈して」政府がこの愚劣な法案の成立を断念することを願っている。
そのようにして、日本人は「アメリカの裁定に従うことが、日本にとっての最適解である」という信憑を刷り込まれて行く。
安倍首相の真意が奈辺にあるか私には忖度のしようがないが、彼が与えられたすべての機会を駆使して「アメリカへの完全従属」へと日本人を押しやるマヌーヴァーに成功していることは、わが身を省みても事実である。

2013.11.22

特定秘密保護法案について(その3)

特定秘密保護法案について、朝日新聞の取材があった。紙面に出るのは話したうちのごく一部になると思うので、これまで書いてきたこと以外のことについて話した部分を追記する。
これまでの話をおさらいしておく。
・特定秘密保護法案が秋になって突然出てきたのは、5月の「改憲の挫折」に対する「プランB」としてである。
・改憲による政体の根本的な改革が不可能になったので、それを二分割して「解釈改憲による集団的自衛権の行使=憲法九条の事実上の廃絶」と、「特定秘密保護法案によるメディアの威圧=憲法21条の事実上の廃絶」という改憲の「目玉」部分だけを取り出した。
・改憲は「東アジアの地政学的安定を脅かすリスクがある」せいで、アメリカも中国も韓国もステイクホルダーのすべてが否定的だったが、改憲を二分割した場合、「九条廃絶による米軍の軍事行動への加担」にはアメリカが反対せず、「21条廃絶による国内の反政府的言論の抑圧」には中国韓国が反対しない。つまり「一つの塊では『穴』を抜けられないが、二つに割ると抜けられる」ということに気づいた知恵者が官邸にいた。
・改憲による政体の根本的な改革のめざす方向は「日本のシンガポール化」であり、さらに言えば「国民国家の株式会社化」である。つまり、「経済発展」を唯一単独の国是とする国家体制への改組である。すべての社会システムは経済発展を利するか否かによってその適否を判定される。経済発展に利するところのない制度(おもに弱者救済のための諸制度)は廃絶される。
・取締役の選出を従業員が行ったり、役員会の合意事項に労働組合の承認が必要であったり、外部との水面下の交渉やさまざまな密約について逐一全社員に報告する会社は存在しない。株式会社は一握りの経営陣に権限も情報も集中する上意下達システムであることで効率的に機能するのであって、従業員の過半数の賛成がないと次の経営行動ができないような会社は存在しない。だから、「国家の株式会社化」とは端的にデモクラシーの廃絶を意味する。
・特定秘密保護法案は、安倍自民党と彼に与するグローバリストたちが画策している「国家の株式会社化」プロセスの一環である。
・それは別に彼らが「株式会社化された国家こそ理想の国家である」という牢固たる政治的確信を持っているからではなく、「その方が経済成長しやすい」というあまり根拠のない信憑に衝き動かされているからである。一言で言えば、この法案が国会を通過するということは、「デモクラシーか金か」という二者択一を前にしたとき、ためらわず「金」と回答する人々が日本のマジョリティを占めるようになったという現実を映し出しているのである。
以上はこれまでに書いてきたことである。
今日追加でお話したのは
・情報管理というのは法律で行うものではなく、「常識」で行うものである。イージス艦についての情報漏洩、尖閣での艦船の衝突映像の海保からの流出、公安テロ情報の流出など、この間問題になったのは、いずれも秘密漏洩によって国益を毀損しようとする明確な犯意に基づく事件ではなく、情報管理のフロントラインにいる公務員の「非常識」によって起きたものである。これほどデリケートな情報を管理するセクションに、これほど市民的成熟度の低い人員が配置されているということは、個人の問題ではなく、組織の「職員教育」の問題である。組織の問題である以上、秘密指定を拡大し、厳罰で臨んでも、「自分が何をしているのかよくわかっていない」非常識な公務員が制度的に生まれ続けるシステムを温存する限り、情報管理は永遠にできない。
・漏洩された情報についてマスメディアが報道を自粛するということは多いにありうるだろう。特にテレビは今後反政府的な情報の公開に対しては「それが周知されて、機密性を失うまで報道しない」という「へたれ」メディアになり、報道機関としての歴史的役割をこれによって終える可能性が高い(というか、もう終えているのかもしれないが)。
・その代わり、秘密情報にアクセスして、これを国益上周知させる必要があると判断した公務員は匿名で発信できるネットのサービス(ウィキリークスなど)を利用するようになるだろう。
・公安テロ情報の漏洩事件(結局犯人見つからず)や、PC遠隔操作事件(証拠が見つからないまま容疑者を長期拘留)における捜査当局のネットリテラシーの低さを勘案すると、発信者をトレースできないように構築されたサービスを経由した場合に捜査当局にこれを追究する能力があるとは思われない。
・今後ネット上での秘密漏洩の捜査能力を飛躍的向上させるためには大量の人員を配備する必要がある。だが、その場合に、捜査当局が「即戦力」としてリクルートするのは「エドワード・スノーデン君みたいなフリークス」の他にない。それはつまり「即戦力」即「リスクファクター」となることを意味している。彼ら特異な能力と、おそらくはそれにふさわしいだけ特異な国家観・世界観の持ち主たちを国家機密のフロントラインに大量に配列した場合、区々たる機密漏洩ではなく、システムそのものがクラッシュするリスクが発生する。
・そればかりではない。大量の「秘密漏洩トレーサー」を雇用するためには膨大な人件費支出が予想される。中国ではついに「治安維持費」が「国防費」を上回ったが、治安維持費の相当部分は一日中ディスプレイに貼り付いて、ネットに国家機密が漏洩していないか、反政府的なコメントが書き込まれていないかをチェックする数十万の「トレーサー」たちの人件費なのだそうである。日本の場合、誰がこのコストを負担するのか。国家予算の相当部分を投じてもたぶん「もぐらたたき」以上の効果をもたらさないこの作業はどの省庁が引き受けるのか。
これまでは「どういう流れの中でこの法案が出てきたのか」ということを書いてきたが、今日は法案が国会を通過した場合に、この先何が起きるかを予測してみた。
たぶん、政府は、この法律を実効的に運用しようとしたら、国家予算の相当部分を「覗き」行為に投じなければならなくなるということを想像していない。
悪知恵は働くが、根本的には頭の悪い人たちである。

2013.11.27

特定秘密保護法案の廃案を求めるアピール

佐藤学先生からお声がけを頂きました、特定秘密保護法案の衆院強行採決に抗議し、廃案を求める学者たちからのアピールに参加した。以下、そのアピールの全文と賛同者たちの氏名を掲げておく。
アピールは明日(11月28日)午後1時に学士会館でメディアに公式発表の予定。その段階で、賛同者のリストはさらに長くなるはずである。

特定秘密保護法案の衆議院強行採決に抗議し、ただちに廃案にすることを求めます


 国会で審議中の特定秘密保護法案は、憲法の定める基本的人権と平和主義を脅かす立法であり、ただちに廃案とすべきです。
 特定秘密保護法は、指定される「特定秘密」の範囲が政府の裁量で際限なく広がる危険性を残しており、指定された秘密情報を提供した者にも取得した者にも過度の重罰を科すことを規定しています。この法律が成立すれば、市民の知る権利は大幅に制限され、国会の国政調査権が制約され、取材・報道の自由、表現・出版の自由、学問の自由など、基本的人権が著しく侵害される危険があります。さらに秘密情報を取り扱う者に対する適性評価制度の導入は、プライバシーの侵害をひきおこしかねません。
 民主政治は市民の厳粛な信託によるものであり、情報の開示は、民主的な意思決定の前提です。特定秘密保護法案は、この民主主義原則に反するものであり、市民の目と耳をふさぎ秘密に覆われた国、「秘密国家」への道を開くものと言わざるをえません。さまざまな政党や政治勢力、内外の報道機関、そして広く市民の間に批判が広がっているにもかかわらず、何が何でも特定秘密保護法を成立させようとする与党の政治姿勢は、思想の自由と報道の自由を奪って戦争へと突き進んだ戦前の政府をほうふつとさせます。
 さらに、特定秘密保護法は国の統一的な文書管理原則に打撃を与えるおそれがあります。公文書管理の基本ルールを定めた公文書管理法が2009年に施行され、現在では行政機関における文書作成義務が明確にされ、行政文書ファイル管理簿への記載も義務づけられて、国が行った政策決定の是非を現在および将来の市民が検証できるようになりました。特定秘密保護法はこのような動きに逆行するものです。
 いったい今なぜ特定秘密保護法を性急に立法する必要があるのか、安倍首相は説得力ある説明を行っていません。外交・安全保障等にかんして、短期的・限定的に一定の秘密が存在することを私たちも必ずしも否定しません。しかし、それは恣意的な運用を妨げる十分な担保や、しかるべき期間を経れば情報がすべて開示される制度を前提とした上のことです。行政府の行動に対して、議会や行政府から独立した第三者機関の監視体制が確立することも必要です。困難な時代であればこそ、報道の自由と思想表現の自由、学問研究の自由を守ることが必須であることを訴えたいと思います。そして私たちは学問と良識の名において、「秘密国家」・「軍事国家」への道を開く特定秘密保護法案に反対し、衆議院での強行採決に抗議するとともに、ただちに廃案にすることを求めます。

2013年11月28日
特定秘密保護法案に反対する学者の会
浅倉 むつ子(早稲田大学教授、法学)
池内 了  (総合研究大学院大学教授・理事、天文学)
伊藤 誠  (東京大学名誉教授、経済学)
上田 誠也 (東京大学名誉教授、地震学)
上野 千鶴子(立命館大学特別招聘教授、社会学)
内田 樹  (神戸女学院大学名誉教授、哲学)
内海 愛子 (大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター所長、社会学)
宇野 重規 (東京大学教授、政治学)
大沢 真理 (東京大学教授、社会政策)
小沢 弘明 (千葉大学教授、歴史学)
加藤 節  (成蹊大学名誉教授、政治学)
加藤 陽子 (東京大学教授、歴史学)
金子 勝  (慶応大学教授、経済学)
姜 尚中  (聖学院大学全学教授、政治学)
久保 亨  (信州大学教授、歴史学)
栗原 彬  (立教大学名誉教授、政治社会学)
小森 陽一 (東京大学教授、文学)
佐藤 学  (学習院大学教授、教育学)
杉田 敦  (法政大学教授、政治学)
高橋 哲哉 (東京大学教授、哲学)
野田 正彰 (元関西学院大学教授、精神医学)
樋口 陽一 (東北大学名誉教授、憲法学)
廣渡 清吾 (専修大学教授、法学)
益川 敏英 (京都大学名誉教授、物理学)
宮本 憲一 (大阪市立大学・滋賀大学名誉教授、経済学)
鷲谷 いづみ(東京大学教授、生態学)
和田 春樹 (東京大学名誉教授、歴史学)
(2013年11月27日0時現在)

アピール賛同者のリスト

特定秘密保護法案の強行採決に反対し、廃案を求める学者たちのアピールに賛同して、私あてに「賛同します」というメールやツイートをしてくださったのは、下記のみなさんです。

アピールに賛同者してくださる方は以後は内田ではなく直接事務局のサイトにコンタクトをとってください

http://anti-secrecy-law.blogspot.jp/

こちらからリストに登録できます。

私がツイッターで告知したあと、とりあえず私のところにお名前を届け出られた賛同者の方は(これもご縁ということで)以下のリストに掲載させて頂きます。
このリストを含めて、12月3日の第二次発表のときには、アピールに賛同された全員のお名前が「学者の会」の方からメディアに対して公開されるはずです。

内田あてに賛同の意思表示をしてくださったのは下記の方々です。(11月29日16:30現在)

中野晃一(上智大学教授・政治学)
山口二郎(北海道大学教授・政治学)
中田考(元同志社大学教授・イスラーム学)
増田聡(大阪市立大学准教授・音楽学)
向井光太郎 (奈良佐保短大准教授・マーケティング)
遠藤不比人(成蹊大学教授・英文学)
小幡尚(高知大学准教授・日本近代史)
梁川英俊(鹿児島大学教授・文学)
村上信明(創価大学准教授・歴史学)
坂井弘紀(和光大学教授・中央アジア文化研究)
鏑木政彦(九州大学教授・政治思想史)
下河辺美知子(成蹊大学教授・アメリカ文学)
土佐弘之(神戸大学教授・国際関係論)
豊島耕一(佐賀大学名誉教授・物理学)
柳原孝敦(東京大学准教授・ラテンアメリカ文学)
上番増喬(徳島大学・栄養学)
津富宏(静岡県立大学教授・犯罪学)
佐藤友亮(神戸松蔭女子学院大学准教授・医学)
小池隆太(山形県立米沢女子短期大学准教授・記号論)
安藤泰至(鳥取大学准教授・宗教学)
吉岡洋(京都大学教授・美学芸術学)
三浦まり(上智大学教授、政治学)
遠藤雅裕(中央大学教授・言語学)
上西充子(法政大学教授・社会政策)
上脇博之(神戸学院大学教授・憲法学)
高橋巌(日本大学教授・農業経済学)
三浦欽也(神戸女学院大学准教授・認知科学)
野崎次郎(関西大学非常勤講師・フランス文学)
青木真兵(関西大学非常勤講師・歴史学)
平野幸彦(新潟大学准教授・アメリカ文学)
安西敦(香川大学准教授・刑事実務学)
西原博史(早稲田大学教授・憲法学)
関橋英作(東北芸術工科大学教授・企画構想学)
水島久光(東海大学教授・メディア論)
菅原純(東京外国語大学非常勤講師・歴史学)
平川克美(立教大学特任教授・ビジネス論)
光嶋裕介(首都大学東京助教・建築設計)
岡田健一郎(高知大学講師・憲法学)
武藤整司(高知大学教授・哲学)
金田雅司(東北大学助教・物理学)
西郷甲矢人(長浜バイオ大学講師・数学)
千野健太郎(埼玉医科大学助教・医学)
志賀浄邦(京都産業大学准教授・仏教学)
小坂井敏晶 (パリ第八大学准教授・社会心理学)
川本真浩(高知大学准教授・歴史学)
平尾剛(神戸親和女子大学講師・スポーツ教育学)
神吉直人(香川大学准教授・経営学)
鈴木準一郎(首都大学東京准教授・生態学)
小林敏明(ライプツィヒ大学教授・日本学)
貴志俊彦(京都大学教授・東アジア近現代史)
鹿野豊(分子科学研究所特任准教授・物理学)
釈徹宗(相愛大学教授・宗教学)
丸井一郎(高知大学教授・言語相互行為理論)
荻野哉(大分県立芸術文化短大准教授・美学芸術学)
門脇健(大谷大学教授・宗教学)
山下仁(大阪大学教授・社会言語学)
伊藤慎二(国学院大学助教・考古学)
宮本真也(明治大学准教授・社会哲学)
松田洋介(金沢大学准教授・教育社会学)
工藤晋平(京都大学特定准教授・臨床心理学)
西山秀人(上田女子短大教授・日本文学)
大塚直哉(東京藝術大学准教授・音楽)
嘉指信雄(神戸大学教授・哲学)
酒匂宏樹(東海大学講師・数学)
長光太志(佛教大学非常勤講師・社会学)
城一裕(情報科学芸術大学院大学講師・音響学)
伊地知紀子(大阪市立大学准教授・人類学)
山崎直樹(関西大学教授・中国語教育学)
江弘毅(神戸女学院大学非常勤講師・編集論)
吉田栄人(東北大学准教授・人類学)
宮本有紀(東京大学講師・精神看護学)
今滝憲雄(武庫川女子大学非常勤講師・教育学)
川口洋誉(愛知工業大学講師・教育法)
中條健志(大阪市立大学ドクター研究員・フランス語圏学)
加藤有子(東京大学助教・ポーランド文学)
鈴木貞美(国際日本文化研究センター名誉教授・日本文芸文化史)
上園昌武(島根大学教授・経済学)
川井巧(福島県立医科大学助教・医学)
岡本良治(九州工業大学名誉教授・物理学)
阿部昇(秋田大学教授・教育学)
岡室美奈子(早稲田大学教授・テレビ論演劇論)
小関和弘(和光大学教授・日本文学文化研究)
杉本昌昭(和光大学准教授・社会学)
八木孝夫(東京学芸大学教授・英語学)
碓井広義(上智大学教授・メディア論)
實川幹朗(姫路独協大学教授・世界学)
加藤典洋(早稲田大学教授・文学)
大河内泰樹(一橋大学准教授・哲学)
渡邊良弘(新潟医療福祉大学准教授・精神医学)
西山教行(京都大学教授・言語教育学)
大澤五住(大阪大学教授・神経科学)
堀茂樹(慶応義塾大学教授・フランス思想史)
只友景士(龍谷大学教授・財政学)
大貫隆史(関西学院大学准教授・英文学)
高橋暁生(上智大学准教授・歴史学)
桃木至朗(大阪大学教授・歴史学)
中西裕樹(同志社大学准教授・言語学)
賀茂美則(ルイジアナ州立大学教授・社会学)
砂連尾理(神戸女学院大学音楽学部非常勤講師・コンテンポラリーダンス)
藤山直樹(上智大学教授・精神分析)
瀧本知加(東海大学講師・教育学)
舩田クラーケンさやか(東京外国語大学准教授・国際関係論)
高柳美香(明治大学准教授・マーケティング)
小松田儀貞(秋田県立大学准教授・社会学)
藤井敬之(愛知教育大学教授・教育学)
小泉直子(静岡産業大学非常勤講師・組織行動学)
河野真太郎(一橋大学准教授・英文学)
吉本和弘(県立広島大学准教授・英文学)
寺田勇文(上智大学教授・東南アジア研究)
八代嘉美(京都大学)
山本奈生(佛教大学専任講師・社会学)
熊澤弘(武蔵野音楽大学講師・博物館学)
ハドリー浩美(新潟大学准教授・英語教育学)
越智敏夫(新潟国際情報大学教授・政治学)
氏家法雄(千葉敬愛短大非常勤講師・組織神学)
柏原誠(大阪経済大学・政治学)
林祥介(神戸大学教授・地球惑星科学)
海老根剛(大阪市立大学准教授・表象文化論)
中野昌宏(青山学院大学教授・社会思想史)
堀江宗正(東京大学准教授・宗教学)
笹島秀晃(大阪市立大学専任講師・社会学)
田中孝史(東京外国語大学特定研究員・言語学)
小野原教子(兵庫県立大学准教授・文化記号論)
輪島裕介(大阪大学准教授・音楽学)
橋本一径(早稲田大学准教授・表象文化論)
土屋誠一(沖縄県立芸術大学講師・美術史)
越田美穂子(香川大学准教授・保健学)
鳥山祐介(千葉大学准教授・ロシア文学)
細川弘明(京都精華大学教授・文化人類学)
出水薫(九州大学教授・政治学)
植村洋(和光大学名誉教授・英文学)
山中淑江(元同志社大学非常勤講師・西洋文化史)
山下純照(成城大学教授・演劇学)
渡辺裕(東京大学教授・音楽学)
吉田寛(立命館大学准教授・感性学)
松井克浩(新潟大学教授・社会学)
細川弘明(京都精華大学教授・文化人類学)
時安邦治(学習院女子大学教授・社会学)
山崎望(駒澤大学准教授・政治学)
今井慎太郎(国立音楽大学専任講師・コンピュータ音楽)
和田悠(立教大学准教授・社会教育)
岩村原太(京都造形芸術大学准教授・舞台デザイン)
遠藤泰弘(松山大学教授・政治学)
水野隆一(関西学院大学教授・ヘブライ語聖書学)
福島祥行(大阪市立大学教授・フランス語圏学)
田中裕喜(滋賀大学准教授・教育学)
坂野鉄也(滋賀大学准教授・歴史学)
岡井崇之(稚内北星学園大学専任講師・メディア論)
古市将樹(愛知文教大学准教授・教育学)
辻学(広島大学教授・新約聖書学)
中島宏(鹿児島大学教授・刑事法学)
滝川幸司(奈良大学教授・日本文学)
久保木秀夫(鶴見大学准教授・書誌学)
色平哲郎(独協医科大学非常勤講師・地域医療)
中島万紀子(早稲田大学非常勤講師・フランス語)
國分俊宏(青山学院大学教授・フランス文学)
浅野純一(追手門学院大学教授・中国文学)
高村峰生(神戸女学院大学専任講師・アメリカ文学)
堀川智也(大阪大学教授・日本語学)
石澤一志(目白大学専任講師・日本文学)
浅野智彦(東京学芸大学教授・社会学)
園田寛道(滋賀医科大学助教・医学)
小暮宣雄(京都橘大学教授・文化政策学)
浅川達人(明治学院大学教授・都市社会学)
武田信子(武蔵大学教授・臨床心理学)
高田友美(滋賀大学特任准教授)
水田憲志(関西大学非常勤講師・地理学)
小野寺拓也(昭和女子大学専任講師・歴史学)
木下勇(千葉大学教授・都市計画学)
内村直之(慶応義塾大学非常勤講師・科学ジャーナリズム)
加藤秀一(明治学院大学教授・社会学)
池田暁史(文教大学准教授・精神分析)
田口卓臣(宇都宮大学准教授・フランス文学)
平林香織(岩手医科大学教授・日本文学)
森隆史(関西学院大学非常勤講師・ソーシャルキャリア論)
安達太郎(京都橘大学教授・日本語学)
近藤隆二郎(滋賀県立大学教授・環境計画学)
小浜正子(日本大学教授・歴史学)
兵藤宗吉(中央大学教授・心理学)
小熊和郎(西南学院大学教授・フランス語学)
林衛(富山大学准教授・市民社会メディア論)
西田弘次(ビジネスブレークスルー大学准教授・コミュニケーション学)
和田浩史(立命館大学准教授)
高嶌英弘(京都産業大学教授・法律学)
野中浩一(和光大学教授・身体環境共生学)
斉藤昭子(東京理科大非常勤講師・文学)
菊池暁(京都大学助教・民俗学)
佐々木玲仁(九州大学准教授・臨床心理学)
生井亮司(武蔵野大学准教授・美術教育学)
佐藤憲一(東京理科大学専任講師・アメリカ文学)
小松崎拓男(金沢美術工芸大学教授・博物館学)
木戸口正宏(北海道教育大学釧路校講師・教育学)
深尾葉子(大阪大学准教授・社会生態学)
森修一(東京医科歯科大学特任助教・化学)
菊池哲彦(尚絅学院大学准教授・社会学)
岡田正巳(首都大東京教授・数理科学)
川端康雄(日本女子大学教授・英文学)
杉田俊介(同志社大学特別研究員・キリスト教学)
太田泰人(女子美術大学教授・美術史)
小沼純一(早稲田大学教授・音楽文化論)
高橋佳三(びわこ成蹊スポーツ大学准教授・スポーツバイオメカニクス)
田川とも子(神戸女学院大学非常勤講師・表象文化論)
西田昌司(神戸女学院大学教授・医科学)
神田貴成(大阪芸術大学非常勤講師・マンガ論)
北島正二朗(シンガポール国立大学博士研究員・生物学)
溝尻真也(目白大学専任講師・メディア論)
守中高明(早稲田大学教授・フランス現代思想)
中川克志(横浜国立大学准教授・聴覚文化論)
武田俊輔(滋賀県立大学講師・社会学)
佐藤守弘(京都精華大学教授・芸術学)
小野昌弘(ユニバーシティカレッジ・ロンドン上席主任研究員・免疫学)
布川弘(広島大学教授・歴史学)
住友剛(京都精華大学准教授・教育学)
小野寺秀也(元東北大学教授・物理学)
馬場重行(山形県立女子短大教授・文学)
阿部賢一(立教大学准教授・文学)
高橋雅人(神戸女学院大学教授・哲学)
清家章(高知大学教授・日本考古学)
矢田部和彦(パリ第七大学准教授・社会学)
谷本盛光(新潟大学教授・物理学)
越野章史(和歌山大学准教授・教育学)
三好永作(九州大学名誉教授・理論化学)
中野元博(大阪大学准教授・物理化学)
玉木尚之(高知大学准教授・中国哲学)
斉藤渉(東京大学准教授・思想史)
久後貴行(大阪市立大学非常勤講師・フランス語学)
山本信次(岩手大学准教授・森林政策学)
磯直樹(大阪大学特任助教・社会学)
杉田真衣(金沢大学准教授・教育学)
渋谷聡(島根大学教授・西洋史)
石川康宏(神戸女学院大学教授・経済学)
冨塚明(長崎大学准教授・環境物理学)
粟生田忠雄(新潟大学助教・土壌物理学)
金子哲(兵庫大学准教授・歴史学)
五十嵐尤二(新潟大学名誉教授・物理学)
園田英徳(神戸大学准教授・物理学)
松田正久(愛知教育大学学長・素粒子論)
高取憲一郎(鳥取大学教授・心理学)
赤井純治(新潟大学名誉教授・鉱物学)
江見清次郎(元北海道大学助教・環境学)
山本正代(神奈川大学非常勤講師・英語学)
寺尾光身(名古屋工業大学名誉教授・物理化学)
福原晴夫(新潟大学名誉教授・生態学)
小林昭三(新潟大学名誉教授・科学教育学)
田中稔(岩手大学名誉教授・機械工学)
粟屋かよ子(元四日市大学教授・環境物理学)
根森 健 (新潟大学教授・公法学)

2013.11.29

特定秘密保護法案に反対する学者の会記者会見全文

特定秘密法に反対する学者の会が12月28日13:00から学士会館で開かれました。
集英社の伊藤直樹くんが音声を記録して文字起こしまでしてくれましたものに佐藤学先生が朱を入れてくれた「決定版」が送られてきましたので、改めてご紹介します。
引用などされる場合はこちらの「決定版」からされるようにお願いします。

お手間をかけた伊藤くんとスタッフのみなさんに改めて感謝致します。では、どうぞ。

2013年11月28日特定秘密法に反対する学者の会

佐藤学 :  お忙しい真っ最中だと思いますが、今日はこのように多数、お集まり頂き、ありが■2013年11月28日特定秘密法に反対する学者の会■
佐藤学(学習院大学教授): お忙しい真っ最中だと思いますが、今日はこのように多数、お集まり頂き、ありがとうございました。最初に、ここに並んだ者の自己紹介をさせて頂きたいと思います。私、本日の司会役を務めます学習院大学の佐藤学です。専門は教育学です。
栗林彬 (立教大学名誉教授): 栗林彬です。政治社会学をやっています。
廣渡清吾(専修大学教授): 法律学をやっています,廣渡清吾です。専修大学の法学部です。
杉田敦(法政大学教授): 政治学をやっています,法政大学の杉田です。
久保亨(信州大学教授歴史学): 歴史学をやっています,信州大学の久保と申します。よろしくお願いします。
(*小森陽一氏は途中からのご参加)
佐藤学: 早速ですが、今回の特定秘密保護法案に反対する学者の会の声明を発表いたします。この経緯でございますが、特定機密保護法案に関しては学会関係でも個々の 学会、政治学 歴史学、法学関連の学会、多くの学会がこれまでもアピール出していますけれども、今回の会はそういう学際領域を超えた広い領域の呼びかけに なっていまして、ややスタートは遅れたんですけれども、事態を鑑み緊急に領域を超えた多くの学者達の声を国会に反映させたいということで組織されました。
この会は、1枚目、2枚目をご覧頂ければわかりますように31名の会でございます。この31名、代表はいないのかと問われるんですが、代表はいなくて連名 でとりくんでいます。当初、発起人を作りまして、6名でしょうか。そこからの呼びかけはしましたが、31名の連名の会として発足致しました。これで今日の 記者会見を準備していたのですが、実はですね。もう1つ、お手元に資料をお配りしました。この資料は、この31名の1名の方が、ブログで一昨日、こういう ものに同意したよ、と文面も添えて書いたところ、私も加わりたいということで多くの方々の申し込みが入ってきまして、わずか1日で304名も申し込みが あった。そういう方々から、是非この記者会見の際に、自分達の賛同の声も伝えて欲しいと申されたものです。これこそまさに想定外で、本日はともかくこの 31名だけで記者会見と思っていた所、それだけ大きな反響があります。実は、私のもとにも今朝からずっとメールが届いている状況で、このような動きがある ことを含めて今日ご報告したいと考えているしだいです。本日午前10時の賛同者数は304名、名前は記載の通りです。
 法案は26日に衆議院で強行採決が行われた訳ですが、参議院で慎重審議ならびに良識ある国会運営を求めて緊急に声明を発表をさせて頂きたいと思います。
 本日の進め方ですけれども、私の方から声明文と連名の方々を発表し、今後の予定の概要をご説明したあと、ここに列席しています5名の方々に一言ずつ、 この声明に加わったお気持ち並びにご意見などを伺ったあとで、質疑応答に答えていきたいというふうに考えています。それで、よろしいでしょうか。はい。それでは、お手元の声明文を読み上げます。
(声明文読み上げ *声明文は下記リンク参照)
http://blog.tatsuru.com/2013/11/27_1135.php
  名前については読み上げることを省略させて頂きたいと思います。以上31名の連名でございます。なお、今日記者会見を終えたあと ですけれども、先ほど申し上げましたように、たった1日で、しかもお一人の連名の方ブログで見ただけということで、304名の声が寄せられるという状況がございます。これから12月3日にかけて、お配りしたこちらのブログの方で受け付けを開始し、その声をもう一度集約した上で、第二次発表の記者会見を行う ことを予定しております。なお、今日の声明文に関してはすべての参議院議員と関係の方々に配布する予定です。だいたい私の方の説明は以上ですけれども、よろしいでしょうか。それでは、まず、栗林先生。こちらからお願いします。一言ずつ賛同に至ったご意見をお伺いしたいと思います。
栗林彬:政治学の視点で、この問題を考えてみたんですけど、それはね。新しい3本の矢ですね。つまり1つは、経済統制。例えば原発の推進と 電力の独占とか、それから大企業優先だとか、それから経済成長、大企業優先。そういう風なことですね。それで弱者の切り捨てっていうのが、それはもう経済のレベルで進んでいる。
それから軍事統制の側面があります。それから自衛隊の軍隊かとか集団的自衛権とか、武器輸出三原則の緩和とか、一連の軍事統制です よね。それから最後に情報統制です。これは教科書の検閲、じゃなかった、検定の基準の変更ですよね。政府見解を教科書がとり入れないと、それを教科書とし て公的に認めないというね。そんな所から、教育委員会を行政のもとに置く所とか、それから、かなり露骨な、NHKの民意の人事への介入とかですね。こういうのも広い意味での情報統制ですけれども。こうした新しい三本の矢の要になるのがこの特定機密保護法案何ですね。
これは、この三本の矢を束ねるもの凄く重要な法案だと思っています。それでナチスドイツが政権を取った1933年に、ヒトラーが首相になる訳ですけど、その時に全権委任法という、1933年の3 月23日にですね、全権委任法を通すんですよね。それで、全ての情報と経済とそれから政治をクークで統制して、そこで、例えば教科書の検定なんかにあたる ような焚書事件が実際にあった訳ですし、それから新しい政党禁止、労働組合も禁止、そういうふうなことも出ていく訳ですよね。その時の、要だったのかな、 全権委任法は。この全権委任法はやっぱりまさに、機密保護法なんですよね。つまりこれはなんでもできる訳です。だからね、僕はこれは反対せざるを得ないん です。修正なんてもんじゃないんです。やっぱり廃案にする以外にないというふうに思います。これは、こういう問題が強行採決されたのは、安保の事例で 1960年ですけれども、それに次ぐ大きな出来事だと思いますね。ただ、60年と違うのは、野党が翼賛化しているという事ですね。非常に大きな違いです。 ですから市民サイドとしては、市民サイドが頑張ってやるしかないと思います。メディアも協力して欲しいし、本当に市民サイドに立った闘いというのが行われるべきだと思う。
しかも衆院を法案が通っちゃったわけですけれども、だけど、これでお終いじゃないと思うんですね。この闘いというのが、事前闘争から始 まっているんだけれども、この事前の闘争がちょっと市民サイドが立ち遅れているんだという認識ありますね。それからまさに今やっているのが、渦中闘争です けれども、これが仮に法案が全部通っちゃっても、事後闘争という形になります。つまり、事前闘争、渦中闘争、事後闘争、全てを戦い抜く形で、そういう形で、市民サイドは頑張らないといけないなと思います。これは反原発の運動と問題は重なっているということが言えると思います。
廣渡清吾: 私は法律学の分野なので、多少法案について話したいと思うんですけれども、これは全体として、日本国憲法のもとでの統治機構としての バランスを全く変えてしまうという決定的な法案じゃないかなと思いますね。
今から議論をするうちにわかるんですけれども、行政機関の長が、一応時効は掲げられていますけれども、不特定な対象の事項について機密と特定する。そうするとその秘密を漏らしたり、その秘密を得ようとしたりすることが罰せられる。いいですか。どれが特定秘密かわからない訳です。どれが特定秘密かわからない。それをチェックするシステムは全くないですよね、そして行政機関の長です。省の大臣が自分でできる。内閣総理大臣がチェック役を果たすなんて言ってますけども、もともとおかしいですよね。内閣総理大臣が任命した大臣について、わざわざここでチェック役を果たす。もともとチェック役を果たすのが、ですね。そういうのが全然見えないなって。
それで、修正案も含めて個別に言いますと、皆 さんこれでいおかしいなっていう所があるんですけど、いいですか。有効期間を5年と定めるとなっていますよね。更新ができて、最初は議案は30年、30年 を超える時には内閣の決定がいるというふうにしました。修正で60年までとして、ただし、60年を超えても7つの事項については、例外的に60年を超えて も特定機密として存続させることができる、としましたね。だけど皆さん、よくご覧になると、1,2,3,4,5,6,7番目は、1~6までは一応時効は書 かれているんですけど、7番目はそういう時効に関する情報に準ずるもので、政令で定める重要な情報としている。これは特定機密を60年を超えても政令で定めることが定めることができる、ということは、政令で犯罪を造る事ができるということですよね。これは憲法31条に明確に違反していると言えるんですけれども、これが修正で入った。そしてこの修正で行った。これはどういうふうに考えていいかわからないんですけど、誰も言っていませんが。有効期間5年で定められた特定機密、特定された秘密を漏らした場合に、10年以下の懲役ですよ。どういう事が起こるかっていうと、秘密によっては5年で、これは秘密でも何でもなくなるっていう事は起こりうるでしょう。そういう秘密を漏らしたということで10年の懲役ですよ。おかしいと思いませんか。その秘密が可にされても、 この人はどうなるんですか。そういう事はどうなるんだっていう疑問を起こさせるような法律ですよね。
それからもっというと、2001年に自衛隊法が改正されて、防衛機密という規定を置きました。一般に、自衛隊法は公務員と同じように、守秘義務は1年以下の懲役となっていますけれども、それに加えた。これは 5年以下の懲役です。今回は、その防衛機密として自衛隊法が変えた時効を、それをそのまま、この特定機密法案に載せています。そして10年です。2001年から現在までの間に、いわゆる防衛秘密といわれるものを保護する、その必要性が、懲役5年からどうして10年で、10年に上がるんですか。その間、どう いう変化があったんですか。こういうことを何も説明されていませんよね。もし5年から10年に上げるとすると、5年だと、どんどんどんどん秘密が漏れた。 防衛秘密が漏れた。だから防衛秘密が維持できない。これだったらわかりますよ。だけどそんなことは何もないんです。
だからこれは明らかに、実際に必要のあることに対応しようとするのではなくて、政府が何か新しい国家を創ろうとしているふうにしか考えられない。それが声明がいっている秘密国家であり、軍事国家だというふうに思いますね。というふうにいっぱい提案の負の方の問題があって、国民の観点からいくともちろん、知る権利を守るためにもこの法案をつぶすのです。普通に考えると非常にバランスの悪い、日本国憲法の法体系の中では非常にバランスの悪い訳ですけれども。自衛隊法で敵前逃走でも7年の刑です。今回、防衛秘密を5年から10年にして、その保護の範囲を外交秘密、テロ方針、それから、もう一つ、テロリズム。ここまで広げた。これは、法律学者のいうところの立法事項を変えている。なぜこういう法律を作ることが、国民の権利を守ることに繋がるんだ。全然ダメです、と。安倍さんが、この提案は、国民の安全を守るためだと言いましたけれども、国民は自分たちの安全が何であるかを自分たちの目で見て、自分たちの頭で考える。それが知る権利です。知る権利を蔑ろにして国民の安全を守る事なんて絶対にできません。安倍さんは詭弁(きべん)です。
杉田敦: 政治学の杉田でございます。この秘密の問題というものは非常に難しい問題で、この私たちのアピールでもですね。外交・安全保障等をつくるに関して、短期的・限定的に一定の秘密が存在することを私たちは必ずしも否定しません、と綴られている訳です。ある意味この手の反対運動とかに対して、外交秘密を認めないのか、というふうな批判があって、そういう事ではないですね。それは全部、即時にあらゆる外交等をガラス張りにするっていうことは 当然私たちも認識しているんですが、これは先進諸国の前例がすべて十分とは言えないものですので、基本的に一定の年月がたてば公開して、その時点で当時の 正当時点が決定した当時の政府の判断がどうだったかを少なくとも事務的に民主的に判断する余地を残す。それによってあとで検証されるから、無責任な秘密指定とか隠蔽とかはできないようにするというのが普通のやり方ですよね。これは、この点について、この法案が最初に提出された時点では全くその、無限定に近 い形で出されてきたわけです。
それからもう一つは、時間的にあとに検証できる担保。もう一つは、先ほどの、今も2人の方がお話になったようなことでして、 行政府の権利とは、これは歴史的に見ると肥大してきたわけです。行政権の優位というのは歴史的にどうしても続いてきた。つまり憲法が立法権を国政最高機関としつつも、現実には行政というのは、国を守っていますから、ここで権力が大きくなる傾向があるわけです。ですからその行政権の権力に対してはさまざまな チェックをするというのは、少なくとも統治のシステムとして当然のことである訳ですね。ところが今回この法案においては、先ほどからお話があるように、行政府が法律を設定するに際して、ノーチェックの形で出されてきた。そして現在でも行政府の長である首相がチェックするなどといった、そのチェックという概念を理解していないというような対応が働いているわけです。これについて、チェック機関としては普通考えれば、ひとつは立法府の中に、立法権力の中に何らかのチェック機関を設ける。それから司法の部分、裁判所の中に何らかのチェック機関を設ける。あるいは、例えばアメリカ国立公文書館とかですね。これはアメリカでやっているんですけれども、第三者機関のようなものにつなげるか、少なくともそういうふうなシステムを用意するのが世界的に見て当たり前だと思うんですよね。もちろんそういうものを設けたからといって、実際には骨抜きになるっていうのはもちろん、世の中の常とは思いますけれども、そうは言いながらもやはり、全然ないというのとは違うので。ところがそういう配慮が、配慮というか当然のシステムをつくらないままこれを出してきたということが、非常になんて言いますかね。現在の政府・与党の、あるいは官僚の側かもしれませんが、思い上が利なのか、単に能力がないのかはわかりませんけれども、こういう問題 について、現在のような、私たちのような成熟した社会で、そういう、なんて言いますか、粗雑な形で出せば大きな反対しか寄せられないということが理解でき ない。そういう極めて荒っぽい、ですね、やり方であるということを非常に危惧を持つわけですね。
一応、逆に言えば、もう少し、第三者機関とか、時間ととも に開示されるとか、そういうふうな条項を入れた形で、上手に出されたら、逆に私どもも反対しづらい面があるんですけれども、そういう配慮もせずにこれを出してきた。今現在、一部修正してますけれども、そういう形でやることによって、いったい最初にどういう意図があったのかということを非常に疑わせる。つまり、いろいろなことを言いながらも、極力ですね、この際、さらに行政府に権力を集中させて、いわば、ほかの部分に、発言権を奪うような体制を一挙につくろ うとしたのではないか。首相等が国会で説明しているような外国との関係上、外国からその秘密をもらう関係で公務員に規制するだけではなくて、ほかの意図は 全くありませんという説明を。それに対して、そもそも根本的な疑問を持つように、現在の立法を(…)ということで、これはやはり根本から考え直して、拙速な成立というのは必要ないと思うので、もう位置から、そもそも、なんのために必要であり、どういうことが最低限、こういう秘密、国家 秘密を扱うについてはどういうが必要なのかということを根本から議論し直していくしかないのではないかと思います。以上です。
久保亨: 歴史学の方をやっている久保といいます。今、ちょっと文章を、今まで歴史学者がどういうことを声明してきたのかという事で、文章をまとめて参りましたので、こちらでお回ししますから、もし足りなければ、あとでメールアドレスなどをいただけばお送りしますので、ちょっと部数が足りなくなるかもしれません。歴史学の立場から3点を申し上げたいと思います。
まず、経緯を申し上げますと、ここに、ご覧になっていただければすぐご理解いただけ ると思いますけれども。10月30日に歴史学関係者で緊急声明を出しました。これは非常に重要な問題だということで、学者・研究者の中で早いほうの反応 だったと思います。11月22日に緊急声明、第二次のも出しました。これは、歴史学の学会の中で比較的、機動的に動ける学会が動いたんですけど、日本の主だった学会が全部参加している日本歴史学協会という団体が11月19日に緊急声明を出しております。これは2枚目の所の上にあるものです。それから、その 4日前に日本アーカイブズ学会というこの、公文書の専門化、文書館などの管理をやっている専門家が集まっている、やはり数百人の大きな学会があります。日 本を代表する学会です。ここも意見表明という形で、より慎重論を出しております。こういうふうな形で、歴史学、こうした文書を扱う関係者の間では非常に反対が広がってきているということが経緯であります。  
お話ししたい3点というのはですね、第一に、今までにも文書は決して公開されていないということなんです。今公開されているものを特定秘密で保護しようというんじゃないんです。今現に公開が全然できていないという状態なんです世ね。その問題をまず言わなければいけないと思っています。
古く言えば満州事変の時に、例えば関東軍の謀略で起きたということを外務省は2,3日後には公電でつかんでいるんですね。当時いた吉田茂たち、外交官の報告によって。しかしそれがまさに特定秘密でそういう名前を使いませんけれども、国家機密だからということで明らかにされな かったために長い戦争をやってしまったわけですね、日本は。そして戦後に関しても、例えばアメリカと日本との1950年代、60年代、70年代の向上も、 すべてアメリカの文書を手掛かりにして研究が進む、情報が暴露されるということはご承知の通りです。実は台湾と日本との関係もそうです。私は中国の(…)台湾との関係については注意していますけれども、自分自身でも外交史料館に行って、1950年代、60年代の文書を調べていますけれども、 本当に歯がゆい状態なんですよね。非常に公開が遅れています。これがまず、日本の現状だということを考えていただきたい。これが第一の点です。その公開が遅れているということが国民の生命、国の将来を危なくするんですね。国益という言葉を使いたければ国益と言ってもいい。まさに国民と国 の利益を損なうのが、秘密を守ってしまう、秘密を隠してしまうことだと思っています。それが第一の問題です。
それから第二の点はですね、今申し上げた事ですが、国際的に非常に立ち遅れているということなんです、日本の公文書管理が。アメリカのナショナルアーカイブズという公文書館は1000人以上の職員を抱えています。イギリスのナショナルアーカイブズもやはり700人くらいの職員を抱えています。それから、中国など、ほかの所でも数百人の職員を抱えてい るのは、いくらでもある。日本の国立公文書館という、すぐそこにあるところですね。竹橋にある、あそこの公文書館の職員は50人いかないはずです。桁違いなんですね。こんなに公文書の管理が遅れている国を全くいったい何をやろうとしてるんだということでですね。歴史学者や公文書関係の人たちのたいへんな危機感も背景になっています。これが第二の点です。
それから、第三の点ですね。この状況を変える非常に重要な手がかりがこの21世紀になって進み出した。それが情報公開法と、それから公文書管理法。二つの法律です。二つとも非常にまだ不十分な点があるということを我々は指摘しています。不十分だけれども、ようやく、そうした国民の権利を大事にする方向に手がかりの法律ができてきた訳です。その状況に慌てふためいて、逆行する動きが出てきたというのが今度の問題 だというように私たちは考えています。ですから、日本アーカイブズ学会が言っているように、それは私たちの第二の緊急声明でも書いたんですが、公文書管理法という2011年の法律ですね。これに基づいて、きちんとした形で防衛秘密・外交秘密についてもこういう形で扱うという形でルールを決めて公開の体制を作っていくことが王道というか、正式の方向であって、その手がかりができているのになぜ別の法律で、とんでもない体制をつくろうとしているんだ、と。これが一番の批判点になります、以上です。
小森陽一 (東京大学教授): 文学の小森陽一と申します。文学に関わっている多くの書き手が結集している日本ペンクラブは、繰り返し、この特定機密保護法の危険性 を訴え、そして何度も声明を出しています。また文学者が多く呼びかけ人となった、私は九条の会の事務局長をさせていただいていますが、九条の会の呼びかけ人は10月7日に緊急の声明を出して、この特定機密保護法の危険性が解釈懐疑に明確に結びつくものだということを指摘しました。
まずやっぱり憲法の問題から言ってそこの狙いをしっかりと改めて確認する必要があると思います。すでに国家安全保障会議法NSC法は、参議院を通過してしまいました。ここは首相と、内閣官房長官と、外務大臣と防衛大臣。そのわずかな閣僚だけでですね、外交や安全保障を巡る決定をしていくということになるわけですが、当然アメリカ と情報を共有した場合に、それを全部秘密にしなければならないということで、この特定国家秘密保護法という。私はこれは保護というのは、全く欺瞞(ぎま ん)的な言葉だと思います。これは国家秘密隠蔽法以外の何者でもないわけで、そのことをはっきりとメディアは報道していただきたいというふうに思います。 これがつくられると、つまり行政権力で、先ほど行政権力だけが特化されて、強化されていくという話がありましたが、行政権力だけで、つまり憲法に違反する とされてきたさまざまな決定をしてもそれが秘密のまま、いくっていうことですね。
ですから国家安全保障会議ができて、そして秘密保護法が通ってしまえばですね。閣議決定だけで、今まで海外で許されていなかった自衛隊の武力行使も決めて、それが行われて、そのまま、秘密のまますべて事後的にしか国民には知らされない。となると、私たち主権者である国民は、まさに情報が開示されて、いったい政府が行政権力や、司法権力や、立法権力が何をしようとしているのか。それが憲法に違反していないかどうかということを判断して、まさに主権者としての力を行使していくわけですね。それが一切踏みにじられるというのが今 回の国家秘密保護法だと思います。 
ですから、国家秘密隠蔽法は主権者である国民のあり方を、まさに殺傷してしまう。国民の主権と視点を根本から奪う、そういう法律だというふうに私は判断しています。だからこそ、まさにこの、大日本帝国憲法下と治安維持法体制下において、この国の言論界というのは自発的に治安維持法に隷従していく方向で、伏せ字その他をやっていたんですね。そういう国と社会にしていいのだろうか。私は最後まで反対していきたいと思います。以上です。
佐藤学:少し長めに時間をとって説明させていただきました。さまざまな学問分野がありますから、それぞれの立場からどのような関わりで許せない法律であるのかという見解をしていただいたということです。
私の専門は教育学ですが、戦前の教育がどのように破壊されていったかという経緯を知っているものですから。この特定機密保護法案が実際に施行される状況で、まず想定されるのは集団的自衛権の行使ですよね。そうなったときに、誰もがその戦争突入への決定を行い、どう決定されたのかが秘密に特定されるようなことが許されていいかどうか。これが一番懸念されることでして、今回の衆議院のあの強制の採決 の状況、世論調査等々を見ても、圧倒的に反対者の数が多いにもかかわらず、審議もほとんどなしで強行採決するという経緯そのものが、この法律の本質を表している気がいたします。きちんと国民の知る権利が守られるならば、この法律の制定自体がそのプロセスを踏むべきであって、民主主義を蹂躙(じゅうりん)する形で法律が今 まさに制定されようとしていることに対して憤りと危惧を覚えずにはいられません。ほとんどの人々が「この国はいったいどうなるんだろう」という不安を抱いている。それが率直な市民が抱いている恐怖です。その恐れを誘発している法案であるところにも、この法案の本質があると理解しています。それでは、あと残された時間、24分少々ですが、順次ご質問等々いただければと思います。

■質疑応答■
東京新聞: 東京新聞の***と申しますが、(…)この秘密保護法案の(…)が、経緯があって、呼びかけがあってという。もうちょっと詳しく、いつ頃、どういう集まりがあって、これができたという。
佐藤学: だいたいいつだっけ。4日か5日くらい間です。1週間たってない。急遽この30人。たぶん1週間、ほぼ1週間。
東京新聞:かなり分野も幅広く集まってという形ですが、これはどういう関係で。
佐藤学: 呼びかけ人。私もその一人だったんですけれども、最初4,5人で協議されまして。具体的な名前を申し上げていいと思うんですけれど も、発起人として、総合研究大学院の池内先生。現在事務局をお願いしている千葉大学の小沢先生、それから聖学院大学の姜先生、法政大学の杉田先生、東京大 学の高橋哲哉先生、それから廣渡先生、そして私の6人がそれぞれ呼びかけ人という形で、それぞれどういう方に呼びかけようと相談し合いながら、呼びかけていった次第です。
呼びかけたほとんどの方に積極的に賛同していただいたというのがこのリストでして、ご覧いただけばわかりますように、ノーベル賞の受賞者の益川先生、白川先生をはじめ、自然科学系の方々にも参加していただいています。このようにさまざまな領域の方々に、賛同いただいたと言うことです。先ほ ど申し上げましたように、この段階のこの発表で終えようと思っていたんですけれども、さらに皆さんの要望が強いので第二次発表まで存続をしていきたいと思 います。
***:先ほど、戦前の教育がどう破壊されていったかという視点の対策として、というお話でしたけれども、戦前の教育の破壊のされ方と今回の経緯で重なるところ、あるいは違うところを。
佐藤学:戦前の教育の破壊とは、教育によって破壊されたと言うよりも軍国主義体制がつくられる事によって、多大な破壊を教育が被ったということです。戦争への突き進む過程で情報や言論が統制され、教師の側から見ると、知らない間にどんどん全体主義化が進んでいた。戦争に突入した時も、教師に は訳が分からない状態で突入していったというのが実態だと思うんです。
我々が戦後に教訓として得たことは、いち早く異常な動きに対してきちんと声を上げて いく。あるいは戦争を二度と起こさないという社会や国家の仕組みを作っていく事だったし、それが戦後の民主主義教育の出発点だった。だから現在の憲法改正 の動きに対して私,教育関係者は、ほとんどの人々が、いったいこの国はどうなるのかと危惧している。昨日も横浜で教師達200名との研究会がありましたけ ど、みんな講演後に私のところに押し寄せてきて、講演内容とは関係がないのですが、「この国はどうなるんでしょう」と、その不安を訴えていました。
***:ここに示されている発想ですが、政府が何でもできるんだっていうことですよね。政府が何でもできるんだっていうか、政府がなんでも しなければいけないっていうか。安倍さんが私の政府っていうのか、私の政府。私の政府よりも国民の政府でしょうっていうんだけど。なんて言うかなぁ。こう、とにかく政府が国民のためにやるんですから、政府に全部お任せくださいっていう話になっているんです。ですから教科書も、教育基本法の全編を(…)、チェックしますよ。教育委員会も、教育委員会から政府にしますよというふうに、委譲しますよと、みんな同じ発想だと思うんです。その発想自体が根本的に日本国憲法の民主主義の理念と相反しているということをなぜ、国会議員がわからないのか。これはおかしいですよ。国会は見せてもらうんですよ、特定秘密は。裁判所も、見せてもらうって書いてあるんです。見せてあげるって書いてある。実際に訴訟になったときに、特定秘密漏洩罪で訴訟になったときに、どういう秘密が漏洩されたんですかっていうことを裁判所でちゃんと審議できるかどうかっていう。昨日も元最高裁の人がその辺を危惧していましたけどね。そうなんじゃないかと。根本的にあそこの所は問題です。それはすべての、安倍政権がやろうとしているすべての課題に、関わる。みんな心配しています。
***:それだけ先生方がそれを、しかも呼びかけからわずか一週間で集まって発足に至ったというのは、それだけ意識の表れということだと思 うんですが、安保改定以来という話もありましたけれども、戦後史においての位置づけ、特定機密法案の危険性というか、認識に対する危険性というのは、先生方がそれだけ、インパクトでありここ数十年で見ても、かなり重要、というふうに考えてよろしいですか。
***: 問題の性格から見て、安保以来だと思いますし、それから戦後の憲法体制といいますかね。憲法の民主主義の現状からいっても、特に国民の知る権利ですね。基本的人権の問題。それから平和主義の問題から考えてもこれ以上ないくらいの重要な案件だと思います。
杉田敦:先ほどもですね、こちらの先生から、現在でも秘密が全く公開されていない秘密というか、情報が公開されていないとのお話がありまし たけれども、今回、国会での審議の過程でも、あるいはその場の議論の中でも、西山事件の問題が議論されていまして、西山事件の判決において、正当な行為、 取材行為とか正当行為であれば、処罰されない、と。西山さんの場合には、正当でなかったから処罰されるというのが裁判所の判決理由だった訳ですが、その正当行為であれば処罰されないという部分を、森大臣等執行部で引用して、だから大丈夫なんですというそちらの方向で西山事件を引用されている訳なんですが、 しかし西山事件に関してすでに民主党政権時に、一定の歴史家等による検証がされて、またアメリカ等のまさに公開資料から、日米に密約があったことはほぼ明らかなんですが、にもかかわらず現在の自民党政府、自民党等は依然として認めていないわけです。彼らのかつて政府がかつて密約をやったという事を依然として認めていない。ここまで外国の資料等からも判明している事実であっても認めないような人々がですね。さらを秘密を強化するような、法制度を作っていくこ とに対して人々が危惧を持っているのは当たり前の事ですね。
まずはこれまでの、従来のいわゆる密約であるとかに関して、きちんとした検証を自分たちがやっ てですね。国家機密に関わるような問題にも、一定の時間がたてば当然公開するんだという風なことを担保した上で、こういう問題に手をつけるということでな ければ、当然信頼を得られないことがあると思います。
***: やはり転換点にあるというのは、自民党が改憲をして、皆さんご覧になったと思いますけれども、我々法律家から見るとジョークではありませんけれどね。現日本国憲法と自民党の改憲案を英文に翻訳してアメリカの学生に見せてね、今日本で新しい憲法を作ろうとしているんだけれど、どっちの憲法が新しい憲法っていったら、日本国憲法。これはジョークじゃないんですよね。まさに反動的な憲法案になっていると思いますけれども、今回のやつは3点セットでしょう。NSAつまり、日本版の保障会議をつくった。これで完全に機密のデータは管理しますよ。
そのための管理のシステムをここで作りますよ。その先は集団的自衛権を憲法改正、これを変更して。これが問題なんですよ。憲法改正を変更してって言うことは、これまで日本の政治家は曲がりなりにも日本国憲法の下で、そのコントロールが利いていたんですけれども、そのコントロールをは外すということです。さっきいったように自衛隊法で隊員が職務に違反した。つまり普通の軍隊でいえば、敵前逃走したときでも7年ですよ。それを今度は10年。これはね、軍隊を特別扱いにする。そういう国家にするといいという 考えがにじみ出ている。それが私には転換だと思います。
安倍さんは転換を目指して第一次安倍政権を組織したでしょう。戦後レジデンス、あるいは日本国憲法 のシステムとして明らかにするだからみんな心配している。日本国憲法の下で戦後66年みんなやってきたわけでしょう。どういうふうに問題があるかっていわない。問題があるかっていうんじゃなくて、こういう日本国憲法のあり方ではいけないと思うって。イデオロギーですよ。どこに日本社会が困った問題を抱えて いるんですか。こういう法律ができないことによって、それを説明できない。あとは何が残っているかというと、核武装と序令性だけだと思うんですよね。たぶんこの二つを国家秘密保護法で隠したいんでしょうね。その意思決定をやっていくんでしょうね。そのことがあとで検証できないように。つまり行政府がこういう文章を破棄してしまう。だからこれが何年たっても歴史的な検証になっていかない。だからむしろ文書の公開の方を法制化していくということがさき。そういう中で行政府が文書を破棄するということに対して罰則規定を設けることが先だと思うんですよね。
***: この法案の狙いは国民の言論というか、自らいわなくする。それが目的だからむしろその言わなきゃいけないんだという意見があったので すが、学者の皆さんとしては、阻止するんですが、そういう長い目で見て国民の運動に対してどういうアドバイスというか、どういう力点というか、何かあったら教えていただきたいと思います。
小森陽一: 何としても廃案にするために全力を尽くすつもりですけれども,もし仮にこれが参議院で通ってしまった場合には,その日からその法律を廃棄 するための闘いになると思います。そして,そこで私達が発言していくことが,政府がこの法律によって何を秘密にしていくのかということを暴きだしていくこ とになる。その意味では,10年の懲役を覚悟した命がけの闘いになりますが,それを今の憲法の下でやりぬくのが主権者だろうと私は思います。
久保亨: 歴史学の久保です。私ども歴史学者の第2次緊急声明の最後に書いておいたのですが,現在必要なことは「公文書管理法の趣旨にのっとって行政文書の適 切な管理のための方策を とること」であり、米国の「国立公文書館記録管理庁」が持っているような文書管理全般に関する指導・監督権限を国立公文書館に付与すること、その権限に見 合った規模に国立公文書館を拡充すること,そしてそれを支える文書管理の専門的人材を計画的に養成・配置することである」この重要性を,日本国民の意識の中で広げていくことが基本的には非常に重要だと思っております。それに支えられた公文書館行政をきちんと作らないとだめです。率直にいって,図書館と博物館は(…)。文書館を見落としてきた。近代,現代には文書館がないのです。それが結局,文書に関する国民全体の意識を低くしてきたと私は感じています。ワシントンでもロンドンでもいってみれば,普通の市民が文書館を使っているのです。日本の文書館は本当に寂しい状態です。普通の市民が自分たちの情報を確認するために文書館を利用するという,市民の意識やモラルが出来ていないのです。だから隠してきたのです。ようやく公開しようという公文書管理法が出来たときに,慌ててそれを逆戻りさせようとしていると,私はそのように考えております。長期的には,公文書管理法に基づき,権限を持ち,事前事後なしに,(…)に立ち入って,きちんと文書を保管する体制を作って,どんどん摘発できるという権限を持っているのがこの官庁なのです。これが日本にないのです。これがあれば,あらゆるところで動けるはずなのです。これがないから問題なのです。このことを,もっとメディアの方達に も考えて頂きたいと思っています。
朝日新聞:杉田先生にお伺いします。先生方の問題の意識をとても共有するのですが,一方でこの前の衆議院の採決を 見ますと,仮に維新が賛成していたら,衆議院の8割の賛成ということになったと思います。この議員は去年の12月に主権者である国民が選んだばかりです。 この状況をどのように考えれば宜しいのでしょうか。
杉田敦: 今回,いわゆる第三局の動き方がよく分かりません。これは,いわゆる政局的というか,政治方法的な感覚からいえば,与党に入りたがっているというか,多数 派に入って何らかの規制作りをしたいというような。逆にいうと第三局が急激に成長することは阻まれたので,くっついていこうという政策に転換したのか分かりませんけれども,そういう政局的なことはとにかくとして,世論が非常に警戒感を持っている,外国のメディアも含めて(…)大変なこと になると思います。一ついいこととしては,自民党の中からも疑問を持つ人が出てきているということです。報道されていますよね。先ほどの質問とも少し絡めて申し上げますと,先ほど申し上げた西山事件に関わって日米に密約が出た時も,民主党政権が公したときにも,国民の反発が非常に小さかったので,危惧したわけなのです。自分たちが自民党政権に騙されたわけですよね。しかし,それに対して怒るということが十分に出てこない。
それからイラク戦争への参戦における,大量破壊兵器に関しても,あれはなかったということで,米国でもかなりかなり問題になりましたし,イギリスではブレア政権が倒れるまでに至った。日本では,小泉政権がそういった判断をしたことについて,批判が非常に小さい。これは国民が,自分たちに対して情報が開示されないということの民主的な問題点です。やはりメディアがそこの所をはっきりしていただいて,まさにそれが民主主義の本質なのだということをより謗法して頂きたいし,今回この余りにも粗雑な立法が出て,国民の危惧はかなり出てきたのではないかと思っていますけれどね。政治家の方々には見誤らないで頂きたいと思います。
佐藤学:そろそろ時間なのですが,よろしいでしょうか。なおですね,今後、こちらの情報については。そこに事務局のアドレス等がございますの で,ご質問頂ければと思います。12月3日夕刻になろうと思いますが,第二次の賛同人の発表と記者会見を行います。また正確な時刻と場所についてはお伝え致します。では,今日はどうもありがとうございました。
(終わり)

2013.11.30

New York Times の特定秘密保護法案衆院通過についての記事

New YorkTimes は11月29日に「秘密保護法案によって日本は戦後の平和主義から離脱するのか」という記事を掲載しました。さきほどツイッターに紹介しましたけれど、アメリカでの論調を知って欲しいので、ここに訳出しておきました。やや荒っぽい翻訳ですけれど、新幹線車内での仕事なので、ご容赦ください。
では。どぞ。

街頭でのデモや主要紙の批判的社説を一蹴して、日本の保守派の首相安倍晋三は秘密保護法を通過させることによって、彼の国の戦後の平和主義を逆転させることをめざす一連の法整備の第一歩を進めた。
安倍首相によれば、国家機密をより厳正に管理することがアメリカとの国家機密にかかわる軍事情報の共有のためには必要であると語っている。火曜日に衆院を通過したこの法案は近日中に参院でも採択される見通しであり、これは安倍氏の、日本を彼の言うところの「ふつうの国」に変えるためのステップの一つである。具体的には自衛力行使のための制約を減らし、地域においてより大きな役割を演じることをめざしている。
アメリカ型の「国家安全会議」(NSC)の創設とあいまって、この法案採決は危機における総理大臣の権限を強化することになる。
安倍氏は国家機密の厳正な管理は日本の情報保護上の穴を塞ぐために要請されたものであり、なによりもアメリカから軍事機密を提供してもらうことをめざしていると述べている。中国の国力の増大と独善的な態度硬化を前にして、安倍氏は日本をアメリカの「羽根の生えそろった」同盟国たらしめたいと願っている。
しかし、秘密保護法案はただちに反対派の集中攻撃を受けることになった。ニュースメディアと大学関係者の多くは、この法案によって強力な官僚機構がこれまで以上に国家機密指定についての広範囲な裁量権を持つようになり、もともと情報開示に消極的なことで知られている日本政府がますます情報公開を回避するようになることを恐れている。
それ以外にも多くの人々がこの法律が政府による権力の濫用をもたらすことに警告を発しており、言論の自由を抑圧することによって結果的に軍部が日本を第二次世界大戦にひきずり込むことを可能にした戦前の強権的な諸法律と比定して論じるものさえいる。
東京の上智大学のメディア法の教授である田島泰彦はこう語る。
「我が国の近代史を見ればわかるとおり、日本には言論の自由の強力な伝統が存在しません。ですから、官僚たちに彼らが望むものを自由に国家機密に指定する権限を与えてしまえば、私たちの国は中国や北朝鮮と変わらないものになるでしょう。」
法案の最大の難点は秘密の定義が曖昧かつ広範なことである。法案によると、政府諸機関の長は、外交、国防、対テロのような国家の安全にかかわる重要な情報については非公開指定をなす権限を持つ。これらの秘密を漏洩したものは10年以下の懲役刑を受ける。この量刑は現行法よりも重い。
秘密保護法は今週可決されたNSCの創設を決めた法律と一体のものとして提案された。
アナリストたちによれば、この「双子の制度」は安倍氏がめざしている一連の法律整備の第一歩である。安倍氏の長期計画の最終目的は日本の反戦的な憲法を改訂し、専守防衛型国家を高度の戦闘力を備えた国家に作り替えることにあるのだが、この点についてはいまだ日本国内では合意形成がなされていない。
「この法律的な枠組みは国家安全戦略の司令部となる新たなNSCが適切に機能するためには必須のものである」と先月の読賣新聞(安倍氏が総裁である自由民主党の代弁者である保守系紙)の社説は述べている。
衆参両院において多数派を形成している安倍氏は、日本の長きにわたる政治的麻痺状態を終らせることを約束し、言葉通り法案をわずか3週間で衆院通過させ、参院に送った。
しかし、このスピードは反対派には圧倒的な力で押しつぶされたという印象を残した。結果的に、この手続きそのものが秘密保護法案が日本のデモクラシーへ脅威になるのではないかという恐れをもたらし、日本でこれまで守られてきた、変革についての合意形成の伝統から逸脱するものだという不満を醸成している。
「衣の下に鎧が見えた」と最大野党である民主党代表の海江田万里は火曜の衆院採決後に語った。
もっとも強い懸念の声は福島第一原発の現場近くの住人たちから上がっている。浪江町の馬場町長は月曜日の公聴会(この法案についてのただ一度だけの公聴会)の席で、2年前の事故当時、放射性物質の流出の方向予測についての政府の情報隠蔽のせいで、彼の町の住民たちが知らぬままに汚染地に逃げ込んでしまったことを指摘した。さらに法律は政府の危機的状況における政府の情報隠蔽体質を強化することになるだろうと警告した。「必要なのはさらなる情報開示であって、隠蔽ではない」と町長は語った。
すでに多くの日本の第一線の作家、ジャーナリスト、学者たちが法案に対して強く反対しており、少なくとも官僚機構が秘密情報指定を恣意的に拡大することについてのより強力なチェック確約を求めている。
だが、法律は情報の秘密指定の適切性を点検する機構の設立を定めていないし、そもそも日本にはアメリカのような他の民主国家にあるような情報に関するしっかりした法律が整備されていない。
さらに、この法律では、情報を漏洩した公務員のみならず、それを受け取ったジャーナリストや研究者も処罰の対象となる。国会議員についても、指定秘密を開示請求できるかどうか明確な規定がない。
先月の社説で、朝日新聞(読賣と並ぶ日本の日刊紙)はこの法律は国家機密の保持という要請には応えるかもしれないが、問題点がありすぎて「穴だらけ」であり、有権者を暗闇に置き去りにするものであると論じた。
「この法律は政府に情報の独占権を賦与するものである」と社説は書いている。「そして、国民の知る権利、調査する権利、さらには報道の自由に甚だしい制限を加えるものである。」
今週、議会において安倍氏は、法案は機密保持を強化するために必要なもので、国防に関する秘密漏洩や管理不全についての度重なるスキャンダルのあとに日本に対してアメリカから要請されたものであるという説明を行った。
専門家の中には法案を批判する人たちは読み違えていると述べるものもいる。現に安倍氏は野党に対して特定秘密をモニターするエージェンシーの創設を求めているではないかというのだが、そのような文言は法案にはない。法案支持者たちはまた法律が適用されるのは軍事機密やテロリストからの携帯メッセージの盗聴内容のような重要なものに限定されるとも言っている。
「この法律によって日本の秘密マネージメントのレベルはアメリカ並みになるものと思う」と東京大学教授で情報法の長谷部恭男は語る。
だが、今の場合はまさにアメリカの模倣をすることこそが重要なのではあるまいか。法案批判者の多くは、アメリカや他の国々がそれぞれの政府の秘密保持を開示する方向に向かっているときに、それに逆行する法律を通すべきではないと述べているからである。
「スノーデンによる機密情報の暴露はアメリカ人に再考を促しました」と田島教授はNSAの契約者であったエドワード・J・スノーデンに言及した。「にもかかわらず、日本はその逆の方向に走ろうとしている。」

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