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4月10日
海外ではどういうふうに報道されているのか気になったので、インターネットでLiberationを読んでみる。
「日本人」「誘拐」で検索をかけると二つの記事が出てきた。
関連箇所を訳出してみる。
「サダム・フセイン体制の崩壊以後、アメリカ合衆国は日一日と全土に広がる蜂起と、同盟国の居留民の誘拐に直面している。ファルージャのスンニ派拠点での戦闘はますます激化し、昨日海兵隊員二人が狙撃されて殺害され、バグダッドの民衆は包囲された都市での蜂起に対してしだいに連帯を強めつつある。
(・・・)さらなる不安材料として三人の日本人と二人のパレスチナ系イスラエル人が昨日誘拐された。英国人一人もナシリア近郊で月曜から消息を絶っている。一方、バグダッド−アンマン道路で誘拐された七人の韓国人は即時解放された。
三人の日本人を誘拐したムジャヒディン軍団を名乗る未知のグループはアルジャジーラをつうじて放映されたビデオで『日本が三日以内にイラクから軍を撤退させないと三人の人質は生きながら焼かれるであろう』と告知している。
東京では三人の人質の映像を繰り返し放映している。このうち二人はNGOのメンバーであり、ひとりはフォト・レポーター。誘拐犯はこのうちの一人をナイフで切る真似をしている。政府はただちにイラクからの撤兵はないことを確言した。日本列島はテロ攻撃の恐怖で厳戒体制に入った。」
「イラクのスンニ派の叛徒は金曜バグダッド近郊で四人のイタリア人と二人のアメリカ人を捕捉した。イタリア人と言われる二人の新しい人質が目撃されている。一人は肩を撃たれ、二人とも泣いていたという。これでスンニ派地帯において最近誘拐された非イラク人人質六人(イスラエル国籍のパレスチナ人、カナダ国籍のパレスチナ人、英国の民間人コンサルタント、三人の日本人)に新たに四人が加わったことになる。日本政府はこれによってイラクから撤退することはないとを言明しており、同盟国は誘拐犯とは交渉しないことを明らかにしている。人質を捕捉しているジハード軍団という未知のグループはレバノンのテレビ局あての声明文の中でファルージャにおける同盟国軍隊の撤退を昨日要求した。」
興味深い報道である。
フランスの新聞に日本関係の記事が載ることは多くないが、これを読むと、フランスのインテリ読者が日本のイラク「支援」をどういう文脈でとらえているかある程度想像ができる。
記事を読む限り、自衛隊は「非戦闘地域」で「人道復興支援」に当たっている善意の人々であるというようなゆきとどいた理解は『リベラシオン』の特派員にはないようである。
それは「イラクからの撤兵はない」というときに自衛隊について「その国の軍隊」(ses troupes)という一般的な軍事用語を使っていることからもうかがえる。
関連記事も徴したが、自衛隊派兵の趣旨を「人道復興支援」に限定することで他の占領軍と識別するように読者に注意を促す言葉は今年の『リベラシオン』の記事には発見できなかった。
最初の記事の末尾の「日本列島はテロ攻撃の恐怖で厳戒体制に入った」というのも、本来この記事に使うべき情報ではない。
地下鉄やJRで警官の巡回が強化されたのは対日テロ攻撃の宣言がなされてからであって、この誘拐事件の直接の結果ではない。
しかし、この記者にはこの間の事件の連鎖は「誘拐」「撤兵拒否」「テロへの厳戒」というふうに「読めた」。
つまり、自国民が誘拐された。テロに屈しないという宣言を「ただちに」政府は行った。そして、これに対して報復的なテロがおそらくあるだろうという予測が日本国民に浸透し、「厳戒体制」(etat dユalerte)でテロと対決する姿勢を示している・・・というふうな流れがフランス人記者にはおそらく「見えた」のである。
これは現実と違う。
しかし、「首尾一貫した誤解」ではある。
もう一つの記事でも
「日本政府はこれによってイラクからの撤退はないことを宣言しており、同盟国は誘拐犯とは交渉しないことを明らかにしている。」
という箇所がある。これは普通に読むと、日本政府は撤兵を拒否し、交渉を拒否した(つまり誘拐された日本人を見殺しにする決断をした)としか読めない。
この文章では「日本政府」(Tokyo)と「同盟軍」(la coalition)はあきらかに同体のものとして扱われている。
これも事実と違う。
小泉首相が撤兵はないと宣言したときメディアに告げた主な理由はそれが「軍事行動ではなく、人道復興支援」だからというものであった。
政府は犯人グループとの交渉の可能性も含めて、人質救出に全力を尽くしているはずだが、それを伝える文言はどこにも見られない。
私が「興味深い」と書いたのはその点である。
フランス人の二人の記者は同じ「誤解」を共有している。
そして、おそらくそれは欧米の多くのメディアが(そしてイラクとその周辺国のメディアもまた)共有しているものだろう。
それは「日本政府は戦闘行為をする気がなく、ただアメリカに対するモラルサポートのつもりで、国内の反対を押し切って、象徴的に自衛隊を非戦闘地域での復興活動に送り出した」というややこしい家庭の事情をまるまる「無視している」ということである。
当然だと思う。
国際社会の常識として、そんなことは「ありえない」からである。
そのようなニュアンスに富んだ主観的意図を他人がこまやかに配慮してくれるいはずだと期待する方が無理である。
国際社会に対するふるまいにおいてたいせつなことは「先方に客観的にはどう理解(あるいは誤解)されるか」を一次的に配慮することであり、「こちらが主観的にどういう意図であるか」ということを言い立ててもあまり意味がない。
小泉首相は人道復興支援「だから」撤兵しないと言い、「戦没者の死を悼むことは人間として当然のことだ」と言って靖国神社に参拝している。
彼にとって最優先的に配慮されるべきなのは「自分の気持ち」なのであり、それが国際社会で「どう解釈されるか」ということには副次的な関心しかない。
この「自分の気持ち」を「他人からの解釈」よりも優先させる態度はわが国の首相に限らず、メディアで発言する人々にも、たいへん気の毒ではあるが、いま人質になっている三人の日本人にも共有されている。
そのことのもたらす災厄について、そろそろ真剣に考え始めたほうがいいのではないかということを『リベラシオン』を見ながら考えた。
投稿者 uchida : 2004年04月11日 10:58
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このリストは、次のエントリーを参照しています: Liberation を読んでみる:
» 「フランス語」の方を、ストーキング。 from ストーカー餡
いきなりだが、今日の日記にある「リベラシオン」とは何だろう。「フランスの新聞」ということはなんとなく分かるが、フランス国内での「リベラシオン」… [続きを読む]
トラックバック時刻: 2004年04月11日 19:47
(「イラク」に引き続き、失礼いたします。)
『「自分の気持ち」を「他人からの解釈」よりも優先させる態度』
私は、日本の中だけで、小さく暮らしているつもりなのですが、それでも、「『そのことのもたらす災厄』のようなもの」を、日々感じています。国際社会の問題とは無関係に、まさに自分自身の個人的な問題として非常にタイムリーといえる程に。
日本人3人の方々が解放されるとのことは、とりあえず良かったと思います。しかし、祈りや願いが通じたとは思えず、なんか釈然としないものが残ります。大騒ぎする必要なかったのかしら? やっぱり私なんかが無理して「何か行動を起こそう!」なんて考える必要なかったのかしら? と。
そんな中、「テスト氏」を読んでみているのですが、、、、私、大丈夫でしょうか??? ちゃんと勉強したいと思ってみているのですが、どうも焦ってしまって、不安です。
投稿者 i : 2004年04月11日 12:35
どれどれと思い、中国(唯一読める外国語)での報道を見てみようと、Yahoo(雅虎)中国で「日本人」、「人質」で検索して引っかかった記事(15個)を読んでみました。
基本的には、日本人が武装勢力に拘束されたが、小泉首相は「卑劣なテロには屈しない」と突っぱねた、という報道のされ方のようですね。同盟軍(占領軍)との関係に触れているものはいくつかありましたが、報復テロへの警戒、という文脈とつなげて報道している例はなかったようです。
約550名の「陸軍士兵」が「非戦闘任務」でイラク戦後復興にあたっていたこと、福田官房長官が「自衛隊はイラクで人道復興支援を行っているのであって撤退する理由はない」と述べたことを報道しているのはそれぞれ一つづつでした。(「撤退する理由はない」というところだけ引用している記事もありました)
あと、小泉政権はじまって以来の政治的危機、あるいは首相の政治生命の危機という報道の仕方はいくつか見られました。
いずれにせよ、解放に向かって事態が推移しているというのは、喜ばしいことでありますね。
投稿者 shuzhai : 2004年04月11日 17:35
こんにちは。昨日につづきまして、書き込みいたします。
たしかに、「自分の気持ち」が「立場」というものを超えていくというような幻想がはた迷惑な災厄をおよぼしていくことについては、まだまだ学習の必要があると思われる今日このごろです。
しかしながら興味深いと思ったのは、イスラムの指導者が、「米国に協力的でない外国人」という形で、一般にいうところの国際社会以上にきめこまかなお国事情を読んだという点です。
欧米より中東が遠い、自分の「国際感覚」のゆがみを感じました。
投稿者 田口亮子 : 2004年04月11日 18:28
私も「他人からの解釈」を甘く見ていつも痛い目に遭います(泣)。うまくいかなかったときに、「他人からの解釈」を甘く見たからだ、と自覚しているだけましかもしれませんが。
★
今回の事件、テロリストたちは「そうすることで、何をしたいのか」。
9・11のときからずっと思っているのですが、ある意味ずば抜けていますよ、やつらの「物語を作り、演出する力」は。大衆心理操作術に長けていると言うか、駆け引きに強いというか。不謹慎かもしれませんが、感心してしまいます。
TVを見ても、ヒステリックにわめきたてる人質の家族の姿が流れ、世論も動きかけている。ここにも、「何か行動を起こそう」と考えたり、自分の「国際感覚」がゆがんでいると感じたりした方がいらっしゃる。
こういう出来事自体がいいか悪いかは別として、彼らが「そうすることで、したかったこと」が、ある程度うまくいっているように私には思えます。
もし、相当に先読みできる人材が向こうにいて、最初から生かして帰すつもりで誘拐したんだとしたら、この先どんなことが起こるんでしょうね。それも彼の思惑通りなんでしょうか。
そんなことを想像すると、少しドキドキしてしまいます。
投稿者 Bon voyage! : 2004年04月11日 20:38
再び失礼いたします。
国際感覚のゆがみという言葉もシンプルマインデッドな人の使う言葉だったと、また反省いたしました。
欧米ってひとくくりにしたり、中東ってひとくくりにしたり、こういうアバウトさが「敵味方」の図式に限りなく近づいていくものであるわけで、改めて反省させられますね。
投稿者 田口亮子 : 2004年04月11日 21:39
今朝、Yahooのニュースサイト見ました。
アル・ジャジーラの英語サイトに日本からのメールが殺到しているそうですね。3人の人質の人道目的を伝え解放を求めるものが多かったとか。
それから、日本人の開放を促したイスラム教スンニ派の指導者は日本政府の依頼による発言ではないと言ったそうです(真偽は確かめられないにしても)。
現在のネット社会では、個人責任で危機に陥った人たちをも、国家によってでなくても大勢の個人のアピールによって救出することができる可能性が高いかもしれないですね。
アル・ジャジーラっていう放送局はやっぱり画期的な存在だと再認識。
川口外相のアピールもよかったと思います。仏教国日本の自衛隊は他国の軍隊とちょっと次元が違うっていうこと、伝えてください。
ところで日本人の仏教色は、真宗というより明恵上人の系統のものらしいと最近知りました。
断片的ですみません。
投稿者 Hinomaru : 2004年04月11日 23:37
フセインと交換しよう
投稿者 井上 : 2004年04月13日 20:57
今回の人質解放で、「自己責任」「自業自得」という言葉が飛び交いました。
最初はインターネットの無記名での発言でしたが、解放されてからは政府内でその言葉が飛び交っています。
私の周りにも今回の件は同情できない、と言いだす人が増えてきました。私はそういう考えが、どこか、恐ろしいような気がして、でも、よくわからなくなっています。
海外でも、たくさんの人が拉致されていますが、そのような意見が出ている国があるのでしょうか。それとも日本特有の現象なのでしょうか。質問になってしまい、申し訳ありません。
投稿者 momozo : 2004年04月16日 22:44
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