「AIを使うとバカになる」とこれまで書いてきたが、最新の米国での研究が私の主張を裏付けてくれた。その研究によると、学生たちがAIを使うせいで、作文能力が劇的に低下しているとニューヨークタイムズが伝えている。
自力で作文する作業がAIに代替されるのは「書くのが面倒くさい」からであるが、研究によると、人間はその面倒くさい作業を通じて、短期記憶、計画能力、推敲能力(自分の思考について考え、別の視点から自分の文章を読むメタ認知能力)を養っている。
作文能力を身につけるには、幼児期から何十年もかかるが、それは書くことを通じて人間は思考の仕方そのものを習得しているからである。その作業を機械に代替させたらどうなるのか。実験してみなければわからないけれど、「やっぱり思考の仕方を習得できない人間ができました」では済まない。相手は生身の人間なのである。
これも米国のMITの最新の研究。AIを利用して文章を書いた人は、自力で作文した人に比べて、執筆中の脳活動が低いことがわかった。AIを使った執筆者は、自分が何を書いたのかを正確に思い出せず、自分の書いたものに対する所有感もほとんど感じなかったという。日本でも、今年の卒論の口頭試問では、自分で書いたはずの卒論について、その内容をよく理解していない学生の数がたいへん多かったと先日大学の教員から聴いた。
ニューヨークのマムダニ市長は、ついに就学前の2歳児から中学二年生まで公立学校でのAI使用を期限付きで禁止した。「子どもは教師や仲間とのつながりを築き、難しい問題に自ら取り組む必要がある。早期教育にAIが必須だとは考えていない」と市長は禁止理由を説明している。
一方、AI企業はこれに猛然と反発している。開発中の「ソクラテス式チャットボット」は生徒の代わりに課題に回答することはせず、生徒と共に考えて、生徒を導く役割を担うように設計されているそうである。もう「師」を探す必要もなくなったということである。この「いたちごっこ」はどこで続くのか。
(信濃毎日新聞9月4日)
(2026-09-16 07:44)