先日社労士の集まりに呼ばれた。どういう仕事かよく知らないまま引き受けて、何を話すか決めないまま現場に行って、結局AIの話をすることになった。どんな業界にとっても切実なトピックだからだ。
AIの最初のインパクトは学校教育の場で起きた。レポートや論文を採点するとことが事実上不可能になったのである(なんでもAIが代わりに書いてくれる)。学生たちが本を読まなくなった(費用対効果が悪すぎるからだ)。たぶんこれから彼らの学力は劇的に低下してゆくだろう。でも、打つ手がない。
もうすぐ来る次の衝撃はAI導入による「大量失業」である。どの業界で、いつ、どれくらいの規模の「雇用消失」が起きるか、誰も予測できない。でも、来ることだけはわかっている。医療か、製造業か、流通か。自動運転が実現したら、ドライバーという仕事がなくなることはわかっている。でも、全米だけでトラックドライバーは300万人いると言われている。彼らが失業した場合、それを「自己責任」と放置することはできない。大量の失業者が一気に街にあふれたら、統治システムが持たない。彼らの生活を支え、再雇用させるための職業訓練コストは政府が公費で負担しなければならない。自動運転で収益が激増するのは私企業だが、失業者の面倒を見る原資は税金である。それなら税金を私企業に流し込んでいるのと変わらない。それでいいのかという記事を少し前に米国の雑誌で読んだ。ほんとうに、それでいいのか。
学生たちの関心は「どんな職業に就けば、AIによる失業インパクトを回避できるか」という切実な問いに向けられている。米国の研究では「看護」と「介護」のような医療的ケアの仕事は生き残れることになっている。武道師範もたぶん生き残れるだろう。身体の内部で起きている数値化できない変化を現場にしている仕事はたぶん生き残れる。今のところはそれくらいしかわからない。
(信濃毎日新聞 9月4日)
(2026-09-16 07:41)