コンサルからの忠告

2026-07-05 dimanche

 地方の小規模女子大はどこも志願者確保に苦労している。私のいる大学も定員割れの学科を抱えている。いろいろな方が再建の提案を持ち込んでくる。
 先日はさる女子大の再建に成功した「伝説のコンサル」が来訪した。秘策を伝授するが、一つだけ交換条件があると言う。伺ったら、「理事長は政治的発言を止めて欲しい」というのである。言いたいことがあれば、以後は偽名で発表しろ、と。私の不用意な発言のせいで本学は志願者を失っていると言うのである。これには驚いた。
 確かに、私は偏頗な政治的意見も持ち主である。だから、これまでいつも少数派だったし、今もそうである。でも、ありがたいことに、「そういうことを言う人間」にもこの社会には居場所があって、「そういうことを書いた本」出版社は刊行してくれたし、「そういう論文」を読んで大学は私を教員に採用してくれた。先般私を理事長に選んだ方たちも私がどんなものを書いてきたのかは重々ご存じのはずである。
 「あんなやつがいる学校にはうちの子は行かせない」と意を決している親御さんもむろんおられるだろう。いて当然である。でも、世の中そんなものだと思う。村上春樹さんはジャズバーを経営していた時代を回顧して「すべての客に好かれようとは思わなかった」と書いている。10人来たうちの一人が「この店、いいな」と思ってくれたらそれでいい、と。私もそう思う。何万人も入学して欲しいわけではない。566人で足りるのである。
 むしろ「旗幟」を鮮明にして、「あの学舎でぜひ学びたい」という人たちにきっぱりしたメッセージを送る方がいいと私は思う。
 先日、繁昌亭でお話をした折に司会の方に「神戸女学院の宣伝してもいいですよ」と許されたので、キャンパスのすばらしさについて熱弁をふるってきた。帰り道にお客さんの一人から「孫は先生のいる大学に行かせます」と握手して頂いた。
(信濃毎日新聞6月26日)