米国とイスラエルによるイラン攻撃で、中東は戦争状態になり、ホルムズ海峡が封鎖された。
日本は原油の90%以上を中東から輸入しており、うち75%がホルムズ海峡経由である。封鎖が続けば遠からず石油が入らなくなる。トランプは戦争が数週間で終結すると豪語しているが無理だろう。去年のイスラエルによるイラン攻撃は12日間で終わったけれど、核施設への爆撃だったし、米国が仲介できた。今回は米国が戦争当事者で最高指導者ハメネイ師を殺した。事情がまったく違う。政権中枢を空洞化させた場合、国がどのようにカオス化するか、それはイラク戦争で米国は思い知ったのではなかったか。
長期化した場合、日本経済には致命的な影響が出ると予測される。私たちの世代は1970年代の「オイルショック」を記憶している。ガソリン価格が200円近くなり、物価は高騰し、失業率が上がり、なぜかトイレットペーパーと洗剤が店頭から消えた。高度成長もこの衝撃で止まった。あんなことがまた起きるのかと思うと気鬱であるが、それでも当時は「これがきっかけで日本が戦争当事国になる」というような心配はしなくて済んだ。でも、今はそれが最大の関心事である。
2015年の安保法制の審議過程で、政府は米国が当事国である戦争で、ホルムズ海峡が封鎖された場合を「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」の適例として繰り返し取り上げていた。その場合は集団的自衛権が発動されて、自衛隊が現地に派兵される、と。
まさにその事態が起きた。まだ国民生活が「根底から覆される」ほどの危険の切迫は感じられない。だが「存立危機」か否かを判断するのは政府であって国民ではない。80年の平和主義を捨てて日本が戦争に加わる日が近づいている。
(信濃毎日新聞3月6日)
(2026-03-29 07:38)