鼓楽の会

2009-12-21 lundi

大倉流小鼓方久田舜一郎先生の舞台生活50周年記念の「鼓楽の会」が大阪能楽会館で行われた。
最初に河内厚郎さんと玉岡かおるさんの対談があり、それから能『安宅』(シテ 観世銕之丞、小鼓久田舜一郎)、一調一声『三井寺』(大槻文蔵 小鼓久田陽春子)、能『石橋』(シテ 久田勘鷗 小鼓高橋奈王子)。大倉源次郎家元の一調『弱法師』、寺澤幸祐さんの舞囃子『松風』、善竹隆司、隆平ご兄弟の狂言『神鳴』などなど、もりだくさんの番組。
『石橋』(「いしばし」じゃなくて、「しゃっきょう」と読んでね)はうちの奥さんの独立披露の曲である。
白赤二頭の獅子がくるくる舞い遊ぶ、たいへん愉しい能であるが、こちらは身内の舞台なので、けっこうどきどきする。
舞台に出てきた奥さんも顔を見ると完全にテンパっている(前髪のワックスの硬度でわかる)。
でも「緊張してがちがちになっている方が出来が良い(こともある)」という不思議な体質の人間なのであまり心配しないことにした。
大鼓の山本孝先生と小鼓が一発目でぴたりと合ったので、ほっとする。
山本画伯ご夫妻はじめ寒い中おいでくださったみなさまにお礼申し上げます。

会のあと、中津のホテルで慰労会。
河内さん、玉岡さんと同じテーブルだったので、いろいろとおしゃべりする。
玉岡さんはウィリアム・メレル・ヴォーリズと一柳満喜子(神戸女学院の卒業生)夫妻を主人公にした小説を執筆中である。
神戸女学院の広報上たいへん結構な題材であるので、完成時には「まとめ買い」しますと入試部長としてお約束する。
河内さんは西宮の芸文センターの古典芸能の制作もされているが、能のイベントを企画中とのことで、そのときは手伝ってねというので、こちらもはいはい何でもお言いつけくださいとご返事をする。
大倉源次郎先生がうちのテーブルに遊びにいらしたので、おしゃべりする。能楽師たちは血のつながりが濃く、「能楽師の楽屋は従兄弟会みたいなんです」と家元が言われる。
ほとんど「法事状態」ですね。
と言ってから、このパーティがそういえば「新郎新婦のいない結婚式」というものにきわめて近いものであることに気がついた。
なるほど。
能楽師コーザノストラ。
古典芸能はそのような濃密な集団性において保持されているのである。
たしかにそうでなければ、古典芸能がこの苛烈でワイルドな資本主義を生き延びることは難しいであろう。
私も気がついたら「一家」の末席に連なっていたのである。
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