忙しい週末

2007-12-04 mardi

土曜日は森永一衣さんのリサイタルで大阪倶楽部へ。
ここは二回目。
去年は山本画伯が退院直後で、それこそ「骨と皮」のように痩せこけていて、ほんとうにびっくりしたのであるが、あれから1年、ずいぶん肉もついて、容貌はもう以前と変わらない。
画伯は先年医者にお酒を止められたときに、「もう人が一生飲む分の三倍くらい飲んだから・・・」と自分に言い聞かせた「三生男」であるが、いずれ遠からず「四生目」に突入することであろう。
打ち上げは天満の「天平」。
楠山さんご夫妻、尾中さんご夫妻、岡崎さんという「いつもの打ち上げメンツ」に、今回はドクター佐藤、飯田先生ご夫妻に、ゼミのタムラくんなど総勢20名が森永さん、ピアノ篠崎愛恵(「いとえ」とよむのだよ)を囲んで集まった。
楠山さんの名刺を探してロロデックス(くるくる回る名刺整理用の文房具あるでしょ)をくるくる回したら「K」の項目のメンバーの濃さにちょっとくらくらした。
だって、私の名刺入れの「K」のところにいる人というのは
甲野善紀、康芳夫、加藤晴之、桑村肇、菊池史彦、小林昌廣、窪田育弘、小堀秋、江弘毅、工藤俊亮、春日武彦、川上盾、國分徳彦というような名前の方々なのである。
このネームリストを示して「さて、名刺入れのKの項目にこのような名前を並べている人といったら、それはいったい誰でしょう?」というクイズをしたら、たぶん一発正解できる人が日本に35人くらいはいるはずである。
それにしても甲野、康、加藤、桑村という最初の四人がめっちゃ濃いですね〜(おおかたの読者はそれがどれくらい「濃い」かご想像もつかぬであろうが、あなたの想像する「濃さ」を6倍したくらいのものを想像していただければよろしい)。
甲野、康、桑村三氏の鼎談を『週刊現代』でやったらどのようなワイルドな世界が展開することであろうか。
ああ読んでみたい。

日曜はひさしぶりのオフ。
日曜がオフなのは10月28日以来のことである(その前にオフだったのは9月2日)。
3ヶ月に2日しか休みの日曜がない。
オフなのでもちろん朝から仕事をする(どこがオフなんだ〜)。
文春のヤマちゃん本(『ひとりでは生きられないのも芸のうち』)の初校ゲラにさくさくと赤ペンを入れる。
月末締め切りだったのだが、それを月曜締め切りに延ばしてもらって、日曜にやっているのである(間に合わないじゃん)。
たいへんに面白い。
「肉」に関する考察があり、これが「地雷」を踏む可能性があるというので、ヤマちゃんがだいぶナーバスになっている。
わが国には二種類の「地雷」があり、クレバーな書き手はこれについてはできるだけ言及しない。
「地雷」が現に活発に機能しており、うかつに踏むと出版業務に支障を来たし、担当編集者の胃に穴があくというのは厳然たる事実であるから、そういう事態を避けるべく警戒心をもつのは常識ある社会人として当然のことである。
しかし、その場合でも「地雷原」のマップについては冷静な観察が必要であろう。
「どれほど近くに踏み込めるのか」という構えでこの問題に接近するのと、「どこまで遠くにいれば安全か」という構えでこの問題に接近する(というか接近しない)のとでは、警戒心のありようが違う。
扱いづらい問題があるのは事実であるけれど、それでも「どこまで近づけるか」を検証することのほうが、「どこまで遠くにいれば安全か」に心を砕くよりも問題の解明にとっては生産的だろう。
私が書いたのは、どうして人は屠畜・食肉処理というプロセスから「目を逸らせようとするか」という問いをめぐってである。
牧畜・屠畜・食肉加工にかかわる社会集団がつよく宗教的・政治的に有徴化して、魅惑と忌避のアンビバレントを呈する事例は世界の各地で見ることができる。
中世の牛飼いがそうだし、アメリカのカウボーイがそうだし、ラ・ヴィレットの屠畜業者たちがそうだ。
モレス侯爵が19世紀の終わりにラ・ヴィレットの屠畜業者たちにカウボーイの制服を供与して世界最初のファシスト組織「モレス盟友団」を組織したのは決して偶然ではないと私は思っている。
彼は何をしようとしたのか?
私の答えは「彼は人間たちに罰を与えようとした」というものである。
なぜ人間は罰されねばならないのか。
その答えを知りたければ本を買って読みたまえ。
読んで、びっくり(書いた私だってびっくりしたくらいである)。

午後はかなぴょんの合気道芦屋道場の演武会(もう4回目)。
毎年お呼び頂いて「説明演武」というのをしている。
どうしてみなさまのお子たちは合気道を稽古せねばならないのか、その理路を保護者のみなさまに説く。
新興宗教の教祖講話か予備校の進路指導担当者講話ようなものとご理解いただければよろしい。
演武快を無事終えて、「ふるふる」で打ち上げ。
のぶちゃんとタカオとおしゃべり。
お二人とも気錬会仕込みのクリスプでブラックなユーモアの持ち主なので、私の態度の悪さと波長がよく合う。
かなぴょん、ウッキー、クーさん、おいちゃんをオーディエンスに1時間半笑い続け。
今年は多田塾合宿に行けなかったので、「気錬会の諸君を相手に神をも恐れぬ毒舌をふるう」という楽しみを逸したが、その分を取り返した。ああ面白かった。
家に戻ってまたゲラ直し。
こりこり。
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