毎日が冬休み

2006-12-26 mardi

冬休み三日目。
煤払いも三日目。
本日の標的はキッチンと台所と廊下の戸棚。
毎年一度だけだけれど、そのときは本格的に掃除をするので、掃除グッズについては商品調査を怠らない。
今年は「洗剤なしでステンレス・ガラス・陶器などの汚れが驚くほどキレイに!」という惹句に惹かれて「ドイツ生まれの新素材」「みがき君」を導入することにした。
おお、こ、これはすごい。
二十年ほど前に「換気扇クリーナー」を初導入したときの感激を思い出す。
吹き付けただけで脂汚れが「どろーり」と溶け出すのであるから、あのクリーナーに含まれていた溶剤は人体にとってもおそらく無害ではなかったのであろうが、健康への配慮は換気扇にこびりついた脂汚れが「どろーり」と溶け出すのを見る快感に及ぶものではなく、私はあらゆる室内の汚れに「換気扇クリーナー」のスプレーをじゃんじゃん吹き付けたのであった。
それから幾星霜。
「みがき君」の登場である。
これは洗剤が要らない。
サイコロ状のスポンジを水に濡らして脂汚れを一拭きすると、摩訶不思議なことにレンジにこびりついた脂がするりとれてしまうのである。
オーマイガ。
これは何か裏があるな。
注意書きを読む。
「人体や食品には使用しないでください」
なるほど、これで「垢すり」などをしてはいけないということだな。
「敏感肌の方や長時間使用する場合は炊事用手袋をご使用ください」
使っているうちに手まで削れてしまうとは。なんと過激な新素材であろう。
さくさくと掃除をして、コーヒーブレークにメールを開くと、日経の原稿締め切りが1月4日ですよというお知らせが来る。
一昨日は朝日新聞の藤沢周平本に『蝉しぐれ』のことを書いて送稿。昨日は下川先生のお稽古から帰って、『野性時代』に食べ物エッセイを書いて送稿。
掃除と稽古のあいまに原稿まで書いている。
ほんとうに働き者である。
締め切りが年明けでも、三が日に原稿なんか書いている暇はないから、今のうちに書いてしまおう。
「意地悪化」という言葉を今朝トイレで思いついたので、「意地悪化する日本」という原稿を書く。ただちに送稿。
ふたたびバッハをBGMにキッチンの汚れと戦う。
電話が鳴る。
うっせーなと思って出ると、教務課長から「ヨミウリ新聞の方が来て先ほどから待ってますけど・・・」という怪訝なご連絡。
げ。
スケジュールを見ると、今日の午後1時半にインタビューが入っている。
車を飛ばして大学へ。
平身低頭してからインタビューを受ける。
お題は「2007 年の男ごころ」。
シリーズ記事の最終回に私が「2007 年の男ごころ」について総括するのである。
そうですか。
そんなことを急に訊かれてもねえ(ほんとは「急」ではなくて、ちゃんと「取材のお願い」には企画趣旨も書いてあったのだが、例によって読まずに来たのである)。
しかたがないので、思いつくまま、「男はプリンシプルを持ってはならない」「男はこだわりを持ってはならない」「男はプライドを持ってはならない」「男は被害者意識を持ってはならない」など、持説をべらべらしゃべる。
だいたい最近の男たちはみんな性格が攻撃的すぎますよ。
なんでも絨毯爆撃的に悪口雑言を吐いてですね。
寸鉄人を刺すごときレイザーシャープな批評の切れ味を競うようなことばかりしている。
何かというと「だいたい最近の・・・」はというような包括的な言い方をするしね。
ん?
2時間ほど思いつくままにしゃべる。
あのような支離滅裂な話をまとめるのはさぞやご苦労と思うが、「人間すべからく支離滅裂であらねばならぬ」というのが私の主張なのであるから、仕方がない。
家に戻って、また掃除。
今日の標的を攻略し終える。
明日は風呂場と洗面所と和室。
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