中国道痙攣笑いドライブ

2006-08-09 mercredi

松本から帰ってきて、翌日から鳥取島根ゼミ旅行。
まことに過酷なスケジュールを組んでくれる学生たちである。
松本から戻ってくるとファックスから「べろん」と紙が垂れていて、日経の連載エッセイの締め切りですが・・・とお知らせが届いている。
朝からゼミ旅行にでかけちゃうので、半日遅れにしてくださいとメールを打っておく。
3週間ほど前から夏休みに入ったはずだが、「ああ、夏休みだなあ」としみじみ手足を伸ばせた日がまだ一日もない。
夏休みになったら納戸とお風呂の掃除をして、夏物冬物整理をして(まだ冬物をしまっていない)、謡と楽の稽古をして、フランス語の予習をして・・・と思っていたのであるが、何一つ実現しないまま、すでに立秋が過ぎようとしている。
しくしく。
朝九時にふたりのゼミ生(殿とチナツ)が迎えに来たので、家を出て、中国道の赤松で大阪組(チヒロとイセカナとヒフミとカオリ)と合流。今回の仕切り役はチヒロ姐さんである。たいへんまめな人で、全行程分刻み、てんこもりスケジュールを組んでくれた。
ぎらぎら照りつける太陽の下、二台の車は佐用で下りて、国道を北上して、鳥取へ。
途中、すれ違ったトラックがはねた小石がBMWのフロントグラスに当たって、「ぴしっ」とヒビが入る。
哀号。
目的地はかの鳥取大砂丘である。
昼頃、砂丘に着き、てこてこ歩いて、海を見て、またてこてこ歩いて戻る。
全員汗まみれ、砂まみれ。
これが砂丘か・・・来ておいてよかった(二度と来ることはないだろう)。
休息後、次の目的地境港の水木しげるロードへ。
境港は街全体を『ゲゲゲの鬼太郎』で覆い尽くすという大胆な都市再開発に挑んだ冒険的な自治体である。
街角にはねずみ男や猫娘のオブジェがたたずみ、街灯のランプは「目玉のオヤジ」。
鬼太郎ハウスで「ねずみ男てぬぐい」と「目玉のおやじバンダナ」を購入。鬼太郎文庫では「目玉フロート、カフェオレ味」を啜る。
境港はなかなか風情のあるよい街であった。
宍道湖の横を走って玉造温泉へ。
一風呂浴びて大広間で宴会。そのまま自室での二次会へ雪崩れ込む。
たいへん愉快な爆笑大宴会であったのだが、全員嫁入り前、就職前の身であるので、内容についてはつまびらかにすることができない。
夜を徹して騒ぐぞと意気ごむ諸君を残して、老師は12時に部屋に戻って爆睡。
翌日はまず「勾玉作り」。
私は締め切りがあるので、勾玉制作のみなさんと別れて、ひとり宍道湖を見下ろすカフェで原稿書き。
1時間半で一本書き上げたところでゼミ生たちも勾玉ネックレスをぶらさげて登場。
次の目的地、出雲大社へ。
出雲そばで腹ごしらえをしてから、緑影の参道を歩いて本殿へ。
さすが日本最古の神社だけあって、背後に山を控えて、まことに悠揚迫らぬたたずまいである。
ゼミ生諸君は「縁結びの神」ということで真剣に参拝したのち、巨大注連縄に向けてお賽銭を激しく投じる。ここにお金が突き刺さると良縁に恵まれるという伝承があるらしく、学生たちはたいへん真剣な顔つきでコインを投げる。数回(あるいは十数回)の試技の末に、全員無事に注連縄へのコイン突き刺しに成功。
午後二時に出雲大社発。
BMWを専用車に選んで後部シートを占領したヒフミとイセカナが「寝不足ハイ」のせいかとめどなくテンションが上がって、エンドレス漫才状態になる。
ヒフミは来年から女子アナになることになっているのだが日本語がやや不自由で、固有名詞を記憶できないというささやかな難点をかかえている。
某テレビ局の面接試験で「朝令暮改」の意味を問われて、しばし熟考したのちに、「朝はきちんと礼をして、夜寝るまえには一日の改めるべきことを反省する・・・」と答えて、面接官たちの腹の皮をよじらせた(残念ながらその局は落ちてしまったそうである。これだけ笑わせてくれる女子アナはレアだから採用してくれてもよかったと思うのだが)
イセカナは耳がよいので物まねがうまい。
とくに超ハイスピードでしゃべりながらくるっと裏声に変わる「チヒロの物まね」が圧巻。
話している最中に、急にチヒロが憑依する芸を何度も繰り返すので、運転しながら痙攣的に笑い続ける。
中国道を走っているうちに日が暮れて、赤松で最後の記念撮影をしてお別れ。
芦屋に戻ったときは8時過ぎだった。
疲れたけれど、たいへんおもしろかった。
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