月窓寺道場30周年

2006-06-05 lundi

日曜は月窓寺道場の創立30周年記念演武会・祝賀会。二週間連続で東京に行って合気道の演武をすることになる。
かなぴょんとウッキーに「前座」をしてもらってから、私は先週に続いてノブちゃんに受けを取っていただく。
ささっと演武をして、ぱぱっと引っ込む。
演武は「え、もう終わりなの?」と思われるくらい短い方がいいよ、というのは敬愛する亀井先輩のご教示である。
「なんだよ、まだやってんのかよ」と思われるのはあまりよろしくないのであるが、プレゼンの場合と同じで、「決めのフレーズ」が出ないとなかなか引くに引けないものなのである。
月窓寺が出来たのは 1976 年6月1日。私が自由が丘道場に入門したのは 75 年の12月であるから、この 30 年は私の合気道人生と重なっている。
月窓寺道場は吉祥寺の駅から徒歩5分ほどの曹洞宗のお寺の境内にある。これほど環境に恵まれた道場はなかなかない。
記念演武会とて、多田塾の各道場が一堂に会する。
亀井師範の明心会、山田師範の北総合気会、窪田師範の奈良県支部、故・樋浦師範の志木合気会など自由が丘道場の先輩たちが開いた道場をはじめ、笹本先輩と小堀さんのよみうり文化センター、今崎先輩の桜台合気道クラブなど同門の先輩後輩たちの道場が勢ぞろいする。
どういうわけか自由が丘道場はスピンオフが多い(甲南合気会もその一つである)。
これは別に自由が丘道場の門人は特別に独立心が強いということではなく、自由が丘道場があった竹内道場が駅前再開発でなくなってしまったあと、長い「ディアスポラ」の時代に門人たちが稽古場確保に奔走したことがやがて習い性となってしまったためである。
祝賀会のあと小堀さんに連れられて亀井師範、八起会の山田師範、自由が丘の笹本さん、大田さん、西田さんたちと下北沢へ。
小堀さんが「壁画」を描いたというたいへんおしゃれな居酒屋へご案内いただく。
亀井先輩のおとなりに座って、謹んでお説教を拝聴する。
亀井先輩のお小言をうかがうのは私の年来の愉しみの一つである。
「ウチダくんはどうしてこういう時にネクタイをしてこないのだ。急に人前で挨拶をせよというようなことになったときにどうするのかね」「す、すみません(汗)」から始まって、1時間半ほど術理について、稽古の心構えについて濃いーいお話を伺う。
この年になっても会えば必ずお小言を言ってくださるのは、もうこの亀井先輩ただ一人となった。
16 年前、関西に移るときに、先輩の道場で差し向かいで稽古をつけていただいたことがある。遠い土地で、他道場の人々にたちまじって「多田門下」の看板を背負ってゆかなければならない出来の悪い弟弟子のために、「馬のはなむけ」として、教えられる限りのことを教えておこうとご指導くださったのである。
自由が丘道場を去るときには多くの道友から心温まる贈り物をいろいろ頂いたが、亀井先輩のこの気遣いはとりわけ身にしみた。
ひさしぶりに小堀さんの笑い声をBGMにして、先輩のお小言に「熱い風呂」に浸かるように身をひたしていると、なんだか20年前にタイムスリップしたような気分になる。
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