さよならレクサス

2006-03-14 mardi

早起きして確定申告書を作成する。
支払調書の金額をエクセルで打ち込んで行く。
どうも思ったよりもだいぶ仕事をしていたようである。
たくさん稼いでらして結構じゃないですか(ふん)と言われるかもしれないけれど、稼いだお金はもう存在しないのである。
どこに消えたのか想像もつかないが、とにかく私の手元にはないのである。
稼いだお金はもうないのに、稼いだ金に課された税金は払わねばならない。
不条理である。
雑所得の計算はすぐ終わる。
必要経費の帳面もちゃんとつけてあるので、これもすぐ終わる。
エクセルのおかげで私の「足し算フォビア」もいくぶんか寛解したようである。
そのままバイクに乗って芦屋税務署へ。
期限前日なので、税務署は私と同じように申告を一日延ばしにしていた横着者が長蛇の列をなしている。
列を作って待っていると、見た顔がいる。
申告書作成の手伝いバイトに女学院の学生(おまけに合気道部の一年生)がいるのである。
げげ。
彼女が横についてタッチパネルを操作した場合、私の財政状態にかかわる個人情報はあまさず彼女の知るところとなる。
私が彼女の立場であったら、私の姿が扉の向こうに消えるや否や、携帯メールで合気道部員全員に「王様の耳はロバの耳!」と打電するであろう。
そういう事態はぜひ避けたい。
さいわい私の担当になったのは別の男性であったので、こそこそと隅のタッチパネルの前に座って、指示されるがままに必要事項を打ち込んで行く。
収入金額、源泉徴収額、社会保険料控除、生命保険料控除、扶養控除にちゃかちゃか数字を打ち込むと「ぽん」と申告納税額が弾き出される。
所要時間3分。
税額は・・・
げ。
頭が一瞬白濁する。
レクサスの新車が買えるじゃないか。
ただ、落涙。
涙を北風に飛ばしながら上の空で三宅先生のところへ。
泣きながら治療を受けて、そのまま銀行へ。
普通口座の預金を全部下ろしても足りないので銀行から金を借りて税金を払う。
いつもなら資産運用について(無駄と知りつつ)ご懇篤なアドバイスをしてくださる支店長と三菱銀行女性行員たちも納税後の虚脱状態の私のあまりのはかなげな様子を哀れんだか、応接室に招じてお茶をごちそうしてくれた。
ごちそうさまでした。
虚脱したまま家に戻り、NHKラジオの取材を受ける。
四月入学の大学生に「大学で学ぶとはどういうことか」につい説教するという企画である。
取材に来たのは本学の企画広報のH谷川くんのNHK時代の先輩のS田ディレクター。
話の噛み合いのよい取材だったので、好き放題なことをしゃべらせて頂くが、さすがに納税のボディブローが効いたのか、声にいまひとつ張りがなかったのが惜しまれるのである。
さ、涙を拭いて。
税金のことは忘れよう。
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