『冬ソナ』四回目

2006-02-28 mardi

風邪気味だったので葛根湯を飲んで早寝(7時半寝)したのだが、9時半ごろに目が覚めてしまい、しかたなく起き出して『冬ソナ』を見る。
韓国旅行から帰ってから、韓国語のあの鼻濁音の多い音質にどうにもアディクトしてしまったらしく、「ペヨンジュンの声が聴きたい」病に罹患したのである。
ペヨンジュン君はまことによい声である。
韓国語が音韻的に美しい言語であるということを世界に知らしめた功績について韓国政府は彼に勲章をあげてもよいくらいだ。
俳優の魅力は尽きるところ動きの美しさと声の美しさである。
私が知る限りの声のよい俳優というとクラーク・ゲーブルとハンフリー・ボガードとハリソン・フォード。ジョン・ウェインやジャン・ギャバンも声がいい。あと、クリント・イーストウッドもね。モーガン・フリーマンもいいよね。
スコット・グレンもいい声だなあ。
動きがよいのはやっぱりクラーク・ゲーブル(この人は服を脱ぐしぐさがかっこいいんだ)。
それからケイリー・グラント(歩き方がきれい)。
空中姿勢がすばらしいのはスティーヴ・マックイーン(『荒野の七人』でカウンターを飛び越えるシーンと、『大脱走』でアイブスを助けるために看守に向かってジャンプするシーンは何度見ても寒気がするほど美しい)。
それから私の大好きなジェームス・コバーン(『荒野の七人』で見せる「起こりのない動き」は武道的な見地からしても一流。『電撃フリント』というB級映画でもジェームス・コバーンの爬虫類的ななめらかな動きはすばらしい)。
スティーヴ・マックイーンとジェームス・コバーンはハリウッドに来たばかりの動きの美しい無名の武道家に相次いで弟子入りする。
その「無名の武道家」とはやがて世界でいちばん動きの美しい俳優であることをスクリーンで証明したブルース・リー。
わかる人にはわかるんだね。
意外なところではメル・ギブソン(前も書いたけれど、この人も「起こりのない」動きをする。「起こりがない」というのは予備動作がない動きのことで、コマが一つ抜けたような感じがする)。
当たり前だけど、フレッド・アステア(階段を降りる動作なんか、まるで流れるようだ)
馬に乗る降りる動作が滑らかなのはケヴィン・コスナーと、「ハリウッドで一番馬に乗る姿がセクシー」といわれたベン・ジョンソン。
翻ってわが邦で声のよい俳優というと・・・
まず市川雷蔵。
渥美清もよい声だ。
高倉健。
成田三樹夫!
伊藤雄之助!(『生きる』の伊藤雄之助は「インバネスの着方日本一」でもある)
北竜二も入れておきたいなあ。
故人ばかりになってしまう。
美しい声で日本語を語る俳優ってもういなくなってしまったのかもしれない。
動きの美しい俳優というと、高倉健(おおやはり二部門入賞。「着流しの着付け」は断然日本一)
『太陽の季節』の石原裕次郎(そのあとは太っちゃったから・・・)
根津甚八(『影武者』のときのワンシーンだけでも印象に残る)。
勝新太郎(『座頭市』はすごいよね)
三船敏郎(この人の剣の扱い方は天才的だ)。
あら、動きの美しい俳優もやはり現代にはいないのか。
そういうふうに局所的に映画を見る人ってあまりいないので、話が合う人がいないんだけど。
『冬ソナ』もペヨンジュンの声ばかりぼおっと聴いている。
話の筋なんかどうでもよくなるくらい声がいい。
で、「ユジン、帰り道を忘れないでね」でやっぱり号泣。
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