半睡状態のうちにわが家の電化は進む

2005-12-15 jeudi

さすがに「生命エネルギーの前借り」が不良債権化したようで、立っていられないくらいに疲れてきた。
水曜日はオフなのであるが、会議があるので、よろよろと学校に出かける。
会議を終えてさらによろよろと家に戻ると、IT秘書のイワモトくんが待っている。
プリンタが故障したので、新品に買い換えてもらったのをセッティングに来てくれたのである。
「先生、死にかけてますね」
とクールに診断する秘書に、ひとこと
「やっといて」
と力なく告げて、私はソファーに倒れて寝ることにする。
「先生、終わりました」と静かに告げてくれたので、よろよろ起きあがって一揖。
そういえばテレビが壊れてしまったので、それを買い出しに行かねばならないのでつきあってもらうことにする。
階下のセイデンに行ってテレビを見る。
秘書が「先生、液晶買うならシャープの亀山工場製です」とテクニカルに断言する。
いつもであれば、秘書の専門的助言を聴くだけ聴いてきっぱり無視する性格の悪いウチダであるが、今回はイジワルをする体力気力ともに萎えて、「そ、そうだね、そうしましょ」と力なく頷いて、32インチの AQUOUS を購入する。
32インチでもう5万円高いモデルがある。
「これはどう違うの?」と訊くと、赤の発色がいいのと音がいいのだそうであるが、ものがないので、しばらく待たなければならないと言う。
「じゃ、今ある方でいい」に即決。
取り付けの工事に来てもらおうとしたが、私は昼間はほとんど家にいない人間なので、いつになるかわからない。
私はテレビっ子ではないけれど、テレビが壊れてしまうとDVDが見られない。
映画論を専門としている人間としては映画が見られないのは死活問題である。
そのままテレビを台車に積んで家に戻り、壊れたテレビを引き取ってもらい、設定は今日のうちに秘書にやってもらうことにする。
まことによく働いてくれる秘書である。
テレビの設営をお任せして、半睡状態でいると、秘書が「おおお」とか「あれまあ」とか叫んでいる。
IT秘書はテレビにはぜんぜん興味がない人なので、「地上波デジタル放送」というものがどういう画質でどういう利便性を備えているのかをご存じなかったらしい。
「先生、これすごいですよ」
と感心している。
私だって何も知らないので、拝見してびっくり。
「はあー、すごいねえ・・・、こんなことまで出来るんだねえ」
と口をあんぐり開けてデジタル放送というものを拝見する。
3時過ぎから8時近くまで黙々と働いたあと、私にリモコンの使い方を教えて、ラーメンを食べて秘書は夜の闇に去っていった。
まことによく働く秘書である。
私が「執事メイド論」に強く心惹かれるのは、現にこの「IT書生」に命を預けて生きているからであろう。
そのまま死に寝。
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