城崎から帰ってきたら次はゼミのお泊まりツァー。
四年生のゼミ生たちが六甲セミナーハウスに集まるから教師も荷物運びやワイン供与のために参加するように命じられたのである。
四年生は卒論執筆中で、そのような余裕はないはずなので企図の奈辺にあるか怪しんでいたのであるが、案の定集まったのはゼミ生総勢15名のうち4名。
この子たちを車に乗せて六甲山上まで運び上げ、広い風呂に浸かって、温泉気分になり、家からもってきたホットプレートに肉や野菜を並べて鉄板焼きを食しつつ、ビールを飲む。
セミナーハウスまで私の家から車で25分くらいのものであるから、「ちょっとそこまで晩飯を食べにでかけた」と思えばよい。
食卓の話題はもちろん「恋バナ」。
女子大の教師をしていると、ほとんど職業的義務として女子大生たちのラブライフの詳細について熟知せねばならないことになる。
先日報じたように、このゼミ生たちは神鋼スティーラーズの若手と先般「合コン」というものをしたのであるが、その事後報告。
神鋼の若者たちも、網走合宿など多忙な日々のあいまをぬって、なかなか活発なアフターケアをされているようである。
食後のワインを飲みながらテレビでとんねるずの食わず嫌いを見ていたら学生たちからおよびがかかって、次は「大富豪」。
城崎温泉麻雀の夜のつぎは六甲大富豪の夜である。
このゲームも麻雀と同じく、「勝つ人間は勝ち続け、負ける人間は負け続ける」というフィードバック機能が内蔵されている。そこが実人生に深く通じる点がおそらくはカードゲームとしての人気が翳らない理由なのであろう。
エナミくんの負けっぷりのよさに感嘆してげらげら笑っているうちに気が付けばはや深更午前2時。
翌日は寝不足。
よろよろと日差しの下を芦屋までもどり、学生たちを阪急の駅でおろして家にもどってシャワーを浴びて二度寝。
途中何度も電話で叩き起こされる。あきらめて昼過ぎに起きるが頭がぼおっとしている。
シャワーで眠気を飛ばしてからコーヒー片手に加藤典洋『敗戦後論』の文庫版解説書き。
締め切りまであと3日。6000字という大仕事。
『敗戦後論』については『ため倫』に長文の評論を書いたことがある。
それを繰り返すのも曲がないが、かといって加藤典洋論を全面的に展開するほどの批評的力量は私にはない。
『敗戦後論』の全体に伏流しているのは高橋哲哉との論争であるので、この論争の「ほんとうの賭け金」はなんであったのか、ということについて思うところを書く。
こりこり書いているうちに(例によって)大幅に紙数が超過し、さらに話が収拾のつかない状態になる。
今日のところは諦めて、IMPホールの『チャーリーとチョコレート工場』の試写会にでかける。
『ブラザーズ・グリム』が「スカ」だったので、来月号の『エピス』の記事ネタがない。締め切りまであと6日。
ここは「ティム・バートンにはずれなし。ジョニー・デップにはずれなし」という俚諺を信じて『チャーリー』に賭ける他ない。
試写会会場はたいへんな人出。
谷口さんに「関係者席」に案内してもらう。
読売主催の試写会で、私は読売の「専属」映画批評家という立場なので、いちばんよい席をいただく。
こういう待遇に慣れるとだんだん人間としてダメになりそうな気がするが、老眼が進んだ身としてはスクリーンがよく見えるのはありがたい。
そこにウッキーやクーさんやヤベッチまでが「関係者」顔をして登場。
たしかに彼女らも谷口さんの合気道の「姉弟子」であるから、関係がなくはないのである。
映画はたいへんに面白かった。
ウンパ・ルンパのダンスと、リスのクルミ剥きの場面で全員椅子から転げ落ちるほど笑う。
ティム・バートンの映画としては『マーズ・アタック!』にテイストが近い。
あの映画が生涯のフェバリット・フィルムという人(あまり多くはないと思うが)にとっては至福の二時間となるであろう。
ジョニー・デップも『シザーハンズ』以来の怪演。
『シザーハンズ』のときのジョニー・デップの「白塗り」が好きという人(これもあまり多くはないと思うが)にとってもやはり至福の二時間となるであろう。
映画のあと、読売さまのご招待でワーナーのババさんはじめパブリシティの方々とお食事。
ウッキー以下の「姉弟子」たちも当然のように陪食。
この人たちはいったいどういう関係者でここにいるのか・・・という懐疑の表情が谷口さん以外の方々顔に浮かぶが、そのような視線もものとは、姉弟子たちは食べかつ飲みかつ笑う。
この師にしてこの弟子あり。
姉弟子たちを帰したあと、ワーナーのババさんのご懇望によりもう一軒まわって、バーボン片手に今度はもうすこし専門的に映画についてお話をする。
気づけば深更(毎晩これだな)。
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(2005-09-03 11:39)