リフター、クレイマー&ランカー

2005-08-22 lundi

この間のゼミ生宴会で聴いた話で面白かったのはH急百貨店の某ブランドショップで働いている「えりりん」から聴いた「リフター&クレイマー」との戦い。
万引きによる被害というのはすさまじいものらしい。
店員が5人の店に6人で来店し、店員が全員かかりきりになっている隙に、フリーになった一人ががばがばと盗んでゆく。
全員が去ったあとに、振り返ると棚が「がらん」としているのを見て愕然とする。
ムートンのコートのようなかさのはるものをどうやって隠して持ち出せるのか不思議がっていた。
デパートの場合、ショップから持ち出しても、それだけでは万引き現行犯とはならない。「スーパーみたいにレジで精算するつもりだった」と言い逃れるからである。
だから私服のガードマンが百貨店の出口まで尾行する。
ドアを出たらそこで捕捉できる。
しかし、敵も然る者で、背後にガードマンの気配を察知するや、入り口のインフォーメーションカウンターに「これ買おうと思ったけど、気が変わったから返しておいて」と荷物を放り出してさっさと立ち去ってしまうとか。
防犯用のタグがつけてある店もある。
商品にタグがついたまま店外に持ち出そうとするとブザーが鳴る。
これもちゃんとだます手があって、店の出口ぎりぎりのところで「おとり」が商品をあれこれ取りだして歩き回る。すると防犯ブザーが反応して「がりがり」鳴り出す。
「すわこそ」と思うと、商品を手にした「おとり」が店内に戻ってくる。
これを数回繰り返すと店員がブザーの音に反応しなくなる。
その隙を縫って、「本体」が商品を持ち出すのである。
『おしゃれ泥棒』でピーター・オトゥールがやった手口である。
たとえ万引犯が家に持ち帰っても、むりやりタグを剥がすとインクが飛び散って服が着られなくなる・・・という自滅的な防犯タグも存在する。
店にとっては一文にもならないけれど、万引き犯に対するせめてもの嫌がらせである。
ところが期末に店内をチェックすると、この「防犯タグ外し機械」がちゃんと万引きされているのである。
クレーマーもすごい。
毎シーズンやってきて、何着か服を買って、さんざん着倒してから「これ、気に入らなかった」と引き取らせるのである。
この方法で必要なときだけブランドものの洋服を無料使用している女性は膨大な数にのぼる。
卒業式入学式の前後は礼服がごっそりとこの手の方々によって持ち去られてしまうのだそうである。
キャンペーンでキャンギャルに着せるそろいのコートを二十着もっていって、キャンペーン期間が終わると、たっぷり汚れたコートを「やっぱり気に入らないから」と持ってきて返金を求める業者とか、そういう方々が、私たちの想像を超えてあまたおられるのである。
返品されたものはのちに「理由ありセール」でたたき売られることになる。でも、中にはセールにさえ出せないほど汚れたものもあるらしい。
そのようにして、彼らが持ち去ったり、使用不能にしてしまった商品の損失分は別に店がかぶるわけではなく、結果的には一般消費者への売価に「上乗せ」される。
つまり、われわれ一般消費者が「万引き」と「クレイマー」の分の商品代金を支払っているということなのである。
だから、もしあなたの身の回りにそういうことをして「得をした」と喜んでいる人間がいたら、とりあえずはり倒してやってください。

いささか旧聞に属するが、Yomiuri Weekly の8月21日号に「女子大生77校就職力」の特集があった。
これは毎年なされている特集で、全国の大学就職課職員ははらはらしながら発売日を待っているのであるが、今年も結果が出た。
「就職力」というのはこの週刊誌固有の算定方法であって、「人気企業に何人卒業生が入ったか」ということを実数で比べるのではなく、「就職希望者」を分母にして除した分数比で示して比較するのである。
この算定方式だと卒業生1万人の大学と200人の大学の間でも、「人気企業への就職確率」を比較することが可能となる。
この就職力ランキングで本学は毎年好位置をキープしているのであるが、今年は全国19位であった。
「女子大生」ランキングであって、「女子大」ランキングではないので、ご注意されたい。

1位東大・2位慶応・3位一橋・4位学習院・5位学習院女子・6位上智・7位東工大・8位同志社・9位立教・10位聖心女子・11位ICU・12位成蹊・13位東女・14位白百合女子・15位関西学院・16位東京外語・17位早稲田・18位青山学院・19位神戸女学院・20位東洋英和(以下略ごめんね)

ごらんのように本学は女子大で全国5位。
関西ローカル・ランキングは以下の通りである。

1位・同志社(8位)
2位・関西学院(15位)
3位・神戸女学院(19位)
4位・甲南(28位)
5位・阪大(31位)
6位・神戸松蔭女子(33位)
7位・大阪市立(34位)
8位・神戸大(38位)
9位・立命館(39位)
10位・関西(41位)

関西の女子大ではダントツの1位である。
阪大、神大よりも上なのである。
入学時偏差値ランキングではたしかにこれほどブリリアントなスコアを残すことはできないのであるが、卒業時の評価はたいへんに高い。
ということは、本学のブランドイメージが依然として企業にとって好感されているということであるが、それは要するに卒業生たちがそれぞれの企業でたいへんがんばって働いてくれたおかげで、「神戸女学院の子はいいよねー」という評価を頂いているということである。
おとといの卒業生たちをみても、たしかにくるくるとよく働きそうである。
そして「神戸女学院生は英語ができる」というような(実情とはやや遠い)世評が定着しているために、英語での接客なども「あ、君行って」というふうに強要されるために、結果的にはそれなりに「出来る人」というふうに評価が底上げされていったりもする(らしい。「えりりん」情報)。
この「評価の底上げ」は教育効果の高いものであることが知られている。
人間はすこし高めに評価されると、無数のポジティヴ・フィードバック・ファクターが働いて、その評価と実質がいつのまに相応するようになるのである。
今年の四年生諸君も、これまでの卒業生たちからの贈り物であるこの「ハイ・ランキング」を次世代に継承できるように健闘頂きたいものである。
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