行く夏や明日も仕事はナイアガラ

2005-08-21 dimanche

長く生きているといろいろなことがある。
まさか大瀧詠一師匠にお会いできる機会が訪れようとは。
お茶の水山の上ホテルの玄関で、キャデラックで福生にお帰りになる大瀧さんを石川くんとお見送りして、ただいまホテルの部屋に戻ってきたところである。
午後3時から始まった対談は二次会のホテルのレストランから「営業時間終わりです」と言われて追い出されるまでなんと8時間半続いた。
いやー、話した話した。
30年間のナイアガラーとして大瀧さんに訊きたかったあのことこのこと、もう訊ける限り訊いた。
8時間半の話はとても文藝別冊『大瀧詠一/大滝詠一』特集号には収録しきれないだろうから、残念ながらみなさんにお読み頂けるのはそのごくごく一部である。
小学四年生のときの「右投げ左打ち」転向のことから始まって、中学高校時代のレコードライフへの耽溺、布谷文夫さん細野晴臣さんとの出会い、はっぴいえんど時代、『Each Time』からの15年の音楽活動、『幸せな結末』録音秘話、山下達郎、伊藤銀次両君にまつわる逸話の数々、音韻論にもとづく歌唱法、エルヴィスのオリジナリティ、楽曲を提供した数々の歌手の話、遠藤実、船村徹、星野哲郎、小林信彦、ムッシュかまやつ、高田渡、植木等、ハナ肇、上岡竜太郎さんらとのインタビュー・バックステージ話、竹内まりやとの Something stupid 録音の経緯、太陽族映画と現代政治との関連性・・・と話頭は転々奇をきわめて録することがかなわない。
敬して止まない師匠の「分母分子論」以来の系譜学的思考のほとばしるような叡智のおことばを全身に浴びて、私はこの希有の人と同時代を生き、まみえることのできた喜びに手の舞い足の踏むところを知らなかったのである。
昨年の『ユリイカ』の「はっぴいえんど」特集に私は「大瀧詠一の系譜学」と題する短文を寄せた。
大瀧さんはこれをお読みになって私の述べるところを諒とされて、私と石川くんという「ナイアガラー第一世代」との交歓のひとときを快諾せられたのである。
実際にお話しを伺ってみて、私は自分がいかに大瀧さんのものの見方に深い影響を受け、その思想を知らぬまに血肉と化していたことを改めて思い知った。
このような機会を恵んで下さった編集の足立さん、ソニー・ミュージックの城田さんはじめ関係者のみなさんに御礼を申し上げたい。
なにより、『ユリイカ』に「大瀧詠一について書くなら、ウチダさんでしょう」と推輓の労をとってくれた増田聡くんにお礼を申し上げる。彼は私の人生の節目節目に登場して思いがけない出会いへと私を導いてくれる守護天使のような人であることがだんだんわかってきたよ。
そして、私のナイアガラー・ライフを30年にわたって支えてくれた石川茂樹くんの友情ある忍耐に感謝。

土曜日は朝一で山の上ホテルを飛び出して新幹線に飛び乗る。
新幹線では有名人遭遇率が高いが、今日の「私の前のシート」は石田純一。ヘッドレストから髪の毛だけが飛び出して見えるので、合気道部員へのおみやげに「石田純一のねぐせ毛」を携帯カメラで撮ろうかしらと一瞬(だけ)思う。
爆睡しているうちに新大阪。
走って芦屋に戻ってただちに走って合気道のお稽古へ。
さすがに「暑さの絶頂」は超えたらしく、青空にはうっすら鱗雲が浮いていて、道場の非人間的な湿度もかなり許容範囲におさまってきた。
家に帰ってばたりと昼寝。
1時間寝てがばっと起きあがり、梅田Bigman前へ。
今日は去年のゼミ卒業生たちの宴会である。
卒業生は同期15人ほどいたはずだが、集まったのはうち6人。
「だからどうだっていうのよ日記」連載中のタダさんと日記の常連登場人物である「おばけちゃん」、「えりりん」。あと三人は通称がネット上では知らされていないので個人情報保護の立場から「サラエボ女」「みはられ女」「ショコラティエールになるはずだった女」と記すにとどめたい。
他に同期には「ぷーのさっちゃん」や「女優イクシマ」らもいるのだが、ゼミ生全員に網羅的に声をかけての同窓会というわけではなく、定期的にご会食されている同期生たちの集まりに老師がお招き頂いたということのようである。
ハービスエントの「あげさんすい」にて天ぷらを食す。
まず「お店からのシャンペンでございます」というところからサービスが始まる。
伝説のソムリエ、タチバナさんと親しげに言葉を交わして慎重にワインを選ぶ(「タチバナさん、白の、美味しいの」というだけのことであるが)私をみつめるまなざしに学生時代には見ることのまれであった「敬意」の情が浮かぶ。
歓談すること5時間(毎日よくしゃべるよな)。
話題の中心は「おばけちゃん」の悲恋(というのだろうか)の物語。
全員で容赦ないツッコミを入れながらラブライフの詳細について伺う。
まことに年齢を問わず女性の恋愛についての洞察は深く鋭い。
とりわけ花の都は大東京で(「めざましい」というよりは)めまぐるしいキャリアパス形成途上にある「サラエボ女」のピンポイント絨毯爆撃(矛盾するようだが、そういうことができる希有の精神も存在するのである)に一同言葉をはさむ余地も見いだせず、ただ涙を浮かべて爆笑するのみ。
次回は秋も深まったころに、わが家で鍋でもつつきながら、「その後の仁義なき恋愛抗争」の報告会を開催することを約して散会。
みんな元気で老師はうれしいよ。

業務連絡もう一度
山、買いませんか?という告知をしたらさっそく女学院OGのN山くんが「京都の裏山に家を建てたかった」ということで手を挙げてくれました。
山を見におでかけになったようですが、その後の商談はどうなったのでしょう。
引き続き、山見学をしたい方を募集しております。
晩夏の美山町、緑がきれいですからどうぞ一度遊びに行って下さい。

おともだちの山林王から山の売り物が出ていますのでご紹介します。
物件:山ひとつ(里山・広葉樹林)
面積:6万坪
付帯するもの:小川ひとつ、林道一本
場所:京都府美山町(京都市内より70キロ)
価格:3000万円

こういうものはあまり新聞の不動産広告とかに出るものではなく、かといって業界的流通に委ねると一般市民の方にはアクセスする機会がないので、この場借りてひろく市民のみなさまに広告させていただきます。
山買って草庵結ぶなり、炭焼き小屋を建てるなり、山城を築くなり、石に枕し流れに漱ぐなり、好きにして頂いて結構です。
市街化調整区域とかじゃないですから、何を建てても大丈夫。
もちろん電気、ガス、上下水道なんかないですけど。
自然な広葉樹林を守るために植林しないでおいた最近ではめずらしい雑木林の山です。
6万坪まとめ買いしても結構ですが、数名でのグループ買い、あるいは「1万坪だけ」「5000坪だけ」というイレギュラーなオッファーにも応じてくれるそうです。
委細面談ということで、興味がある方はウチダあてにメールください。ランドオーナーに転送いたします。
uchida@tatsuru.com
山の風景はこんな感じです↓(フジイ君、写真貼っといてね!)
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