官僚的作文の朝

2005-06-08 mercredi

起きて原稿をいくつか書く。
何の原稿をどの媒体のために書いているのか自分でもよくわからない。
言われるままに「はいはい」と書いている。
しばらくすると「振り込み先の銀行口座名を教えて下さい」というメールが来る。
雑誌の名前に記憶もないし、何の原稿を書いたのかも思い出せない。
たしか「もう新規の仕事はしない」と宣言していたはずだが、どうして「当然のような顔をして」次々と仕事を言いつけられるのだろう。
よくわからない。
ゆうべから詰めて書いているのは「2004年度自己評価委員会報告書・教員組織」の項目である。
私が担当する項目ではないが、最終報告をとりまとめたら、この項目だけ記述がなかった。
今日が締め切りであるから、委員長の私が書くしかない。
「学部・学科の理念・目的ならびに教育課程の種類・性格、学生数との関係における当該学部の教員組織の適切性」
について今書いている。
これを書いたら次は
「実験・実習を伴う教育、外国語教育、情報処理関連教育を実施するための人的補助体制の整備状況と人事配置の適切性」と「教員の募集・任免・昇格に関する基準・手続きの内容とその運用の適切性」について報告を書く。
午後から大学の講義があるので、それまでに書き上げないといけない。

ゆうべスパゲッティを茹でていたら文春のヤマちゃんから電話があった。
『文學界』の「私家版・ユダヤ文化論」がとっても面白いですというご感想の電話であった。
ついでに「単行本」のゲラがそろそろ出るんですけど…と告げられる。
七月はじめくらいにゲラ送っていいですか。
送ってもいいけど、できないよと答える。
机の上にはこれから校正しなければならないゲラの束が三つ積み重なっているからである。
ひとつは明日が「締め切り」らしい。
ひとつは郵送の封を切ってない。
ひとつはずいぶん前に来たものらしく埃をかぶっている。
どの編集者も困惑されているであろう。
胃痛に悩んでいる方や上司にねちねちイヤミを言われている方も(「七月刊行って、君そう言ってたじゃないか! 初校も出ないで、どうやって本だすんだよ、おい!」)おられるやもしれぬ。
気の毒である。
なんとかしてさしあげたいものである。
だが、今の私にはなすすべもない。
そもそも私に仕事を頼んだのがあなたの「長い不運」の始まりだったのである(各社の編集者はこの教訓を拳々服膺されるように)。
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