コンニャロ光線とのたたかい

2005-05-30 lundi

朝、学校に行こうと思って道を歩いていると、いきなりガンを飛ばされる。
見知らぬ若い男が私の顔を穴が開くほどじっとみつめている。
なんだよと、こちらも軽くコンニャロ光線(@椎名誠)を送り返す。
部長会に出たら、何人かに「見ましたよ」といわれる。
何かと思ったら今日が朝日新聞の大学欄の掲載日だったのである。
私は爆睡のせいで頭が弱っていたので、新聞を半分まで読んだだけでそのさきを読む気力がでず、出勤してしまった。
おかげで、寝起きに新聞を開いたら自分の顔写真に遭遇して、口からコーヒーを噴き出すというような目に遭わずにすんだ。
私にガン付けした若者はおそらく「あれ、どこかで見た顔…」と思われたのであろうが、それがさっき読んだ新聞の写真の人物とは同定することができなかったので、いつまでもじろじろ眺め続けていたのであろう。
写真を撮られるときには黒縁眼鏡をかけて変装して撮影したので、素顔は容易にアイデンティファイされるはずがないのである(この黒縁眼鏡は厳母に「タツルはそれかけている方が賢そうに見えるから、いつもそれかけてなさい」と命じられた品である。あのー、おかーさん、それって「素顔のタツルはバカっぽい」ということだと思うんですけど・・・)
こういう余計な苦労をさせられるからメディアに写真を出すのはイヤだって言ってるのに。

メールボックスを見ると、いろいろなところから仕事の依頼が来ている。
システマティックにお断りするはずなのであるが、文面を読むとたいてい「先生の本の愛読者です」と書いてある。
私は「批判者」に強く、「愛読者」に弱い。
「読者からの罵倒や中傷」には完璧なガードを誇っているが、「読者からのはげましのおたより」には無防備なところがある。
「忙しいので原稿は書きません」というお断りの手紙を「自称・愛読者」であるところの編集者のみなさんが読まれた場合に、はたしてどういう反応を示されるであろうか。
「けっ、こっちが下手に出て原稿頼んでるのに、『忙しいから書けません』なんて、木で鼻を括ったような返事をよこしくさって…もうウチダの本なんか全部棄てちゃお」というほどに狭量な方はまさかウチダ本の読者の中にはおられないとは思うが、それでもちょっとは心配である。
だから、断りの手紙にはどうしても貴意に添えない切ない事情をていねいに書き記す。それはそれでけっこうな字数を費やしているのである。
というので、今日は600字ほどの原稿依頼だったので、寄稿の可否の問い合わせに原稿をもってご返事する。
これはウチダの得意技の一つである。
ひとつには「はい、書きます」とご返事して、そのまま忘れてしまって締め切り間際になって慌てるというリスクを回避するためであり、ひとつには「いいえ、書けません」という理由を縷々書き記している暇があったら、原稿を書く方が早いからである(原稿料ももらえるし)。

赤澤清和くんの手吹きガラス展が明日から始まる。
5月31日(火)から6月5日(日)まで。午前10時から午後5時まで。
場所は倉敷市中央1-6-8 クラフト&ギャラリー幹(086-422-7406)
事故の前に企画された展覧会なので、案内には「会期中作家在廊」とある。
「存在するとは別の仕方で」という副詞はここに書き加えられるにもっともふさわしい言葉だろう。
赤澤くんの簡単な経歴が記してあったのでご紹介しておきたい。

1973年 岡山市に生まれる
1991年 つくし工芸九州民芸村(福岡)に入社
1993年 石井康治先生に師事
1997年 岡山市高野尻に築炉し、作品制作を始める
1999年 岡山県美術展「奨励賞」受賞
      岡山市オリエント美術館「ガラス工芸-歴史と現在-」に参加「把手付き三連瓶を復元する
      NHK総合テレビ「ガラスの美―古代技法に挑む―」放映
2000年 岡山県美術展「奨励賞」受賞
2001年 岡山県美術展「県展賞」受賞
2004年4月より倉敷芸術科学大学専門学校非常勤講師

牧子さんが在廊しているそうなので、赤澤くんの仕事に関心を抱かれた方はぜひ倉敷まで足を運んでください。
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