雨のなか、とぼとぼと京大時計台の講堂で「大学教育フォーラム」の「大学評価」についての講演を聴きに行く。
行きがけの電車で苅谷剛彦『大衆教育社会のゆくえ 学歴主義と平等神話の戦後史』(中公新書)を読む。
電車で移動すると、ほんとうによく本が読める。
10年前の本なので、今の「ニート」とか「文化資本」とか「二極化」ということはまだ主題的には扱われていないが、ほぼ正確に今日の教育状況を予見している。
苅谷先生もまことに炯眼の人である。
小田嶋隆の『人はなぜ学歴にこだわるのか』(もうすぐ文庫刊行)とこの本をあわせて読むと、学歴をめぐる戦後日本の「神話の構造」がほぼ完全に解明されるだろう。
アマゾンで「この本を買った人は、こんな本も買っています」というかたちで紹介されることはたぶんないであろうから、私が「アマゾン」に代ってお薦めさせていただくのである。
講堂にゆくと、S 井先生がいる。
私は業務命令でぶーたれながら来ているのに、S 井先生は自費を投じて研究のために進んで参加されていたのである。
「本学でいちばんイジワルな」などと心ないことをいってすまないことをしたと内心で手を合わせる。
こんなことならはじめから S 井先生に出張をお願いすればよかったですね、と申し上げたら、「業務じゃ来ません」と爽やかに言われた。
やっぱりけっこうイジワルかも。
隣にすわっていっしょに拝聴。
こういうフォーラムでは、みなさんたいへん早口ですばらしいアーティキュレーションでお話しになる。
そのテンポが、私のような「イラチ」人間にはたいへんに心地よい。
大学評価・学位授与機構の木村孟先生と大学基準協会の前田早苗さんの「個人的な感想を申し上げれば」というマクラを振っての話がたいへん面白かった。
こういう口頭発表の場では、「ま、ここだけの話ですが…」という本音のところがぽろぽろと漏れ聞こえるのがありがたい。
半日つぶして来た甲斐があった。
家にもどってすぐにさくさくと報告書を起草。
明日から「死のロード」が始まる。
25日に生きて芦屋に帰り着けるであろうか。
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(2005-03-23 00:53)