違いのわかる男です

2005-02-04 vendredi

だいぶ前だがこの日記に「四月からお気楽サラリーマン稼業になるので、オフィスに欲しいものがある」と書いたことがある。
そのとき、「昼寝用ソファー、観葉植物、オーディオ、液晶テレビ、美人秘書、運転手」などとともに「コーヒーメイカー」というものを挙げたのをご記憶の方があるかと思う。
こういうものはなんでも書いておくもので、さっそくネスカフェに勤務されている方から「ネスプレッソ・マシン」という商品名のコーヒーメイカーのご寄贈を賜った。
これはコーヒー粉がカプセルに封入されていて、お水を注いでカプセルを「ガッシン」(@石川先生)すると「たらりたらり」とエスプレッソが漏れ出てくるというすぐれものである。
事務室のヒラヤマくんによるとたいへん高額のものであるらしい。その情報供与の代償として「前から欲しかったので私にください」というお申し出を受けた。私もたいがい世間をなめた生き方をしているが上には上がいるものである。このコーヒーメイカーは新装してくれるオフィスに持ち込む予定なので、それまでは使わないのである。
ヨシイさん、どうもありがとうございました。ネスカフェって、ほんとうにいい会社ですね。インスタントコーヒー毎日飲んでます。お礼が遅れて申し訳ありませんでした。
しかし、何でもHP日記には書いてみるものである。
だいぶ前になるが、紀要用に書いた原稿が長くなりすぎて、紀要編集者から「分載にしてください」と言われて困じ果て、ふと思いついてこのHP日記で「原稿の引き取り手」を探したら、奇特なる出版社が引き取ってくださり、単行本にしてもらったことがあった。
だが、これらはやはり例外的な事例であろう。
BMWやジャガーについては執拗に「欲しい欲しい」と書いておいたのだが、両社からの試供品供与の打診はなかった(『NAVI』からは「BMW買ったらインプレッション書いてください」という申し出があったけど、それってただの「仕事」である)。
そうそう。「テレビは嫌いだがラジオは好きだ」と書いたら、いまたいへん世間からバッシングされている某放送局(私はちゃんと受信料を払っているが)のラジオ局から出演依頼が来た。
ラジオで『先生はえらい』について話してほしいということであったので、ちくまのヨシザキさんの販促活動のお手伝いになればとお受けしたのである。
企画書を見たら、インタビュアーは「遙洋子さん」という方となっている。
「上野千鶴子に喧嘩の仕方を習ってきた」フェミニストのタレントさんである。
いかなる天の配剤であろうか。
公共放送の電波上で私の頭上にフェミニズムからの歴史的鉄槌が下り、その学者生命が完膚無きまでに粉砕されるさまがリアルタイムで放送されることになるのであろうか。
4月9日生放送だそうであるから、みなさまお楽しみに。
三宅先生からメールが来て、今朝のTV朝日の「今週のベストセラー」に『先生はえらい』が七位でランクインしていましたよという情報提供を受ける。
ほんとかしらとbk1のランキングをチェック。
おおお、これはびつくり。
新書部門で『先生はえらい』がなんと堂々の第一位ではないか。
総合部門ではと見ると、これがチャート初登場8位。
8位ということは『魔法使いハウルと火の悪魔』より『ダヴィンチ・コード』より『電車男』より『ジャニーズJr 2005/2006スクールカレンダー』よりもさらに上位ということである。
そのようなことがあってよろしいのであろうか。
『先生はえらい』は中学生高校生にむかってラカンの転移論を「噛み砕いて」説くという趣旨のものである。
そのような書き物の出現を待望していた中高生などというものが存在するはずがない。
となると、「7モーラのタイトル」と「いかなる制度文物をも批判しない教育論」という点だけがセールスポイントである。
そんな本がどのようにしてニーズの掘り起こしを果たし得たのか。
ジュンク堂紀伊国屋他の書店員のみなさんが「ウチダ本」に熱い応援を送って下さったことが大きく貢献していることはまぎれもない事実であるが、それにしても新書部門チャート初登場第一位というのはそれだけでは説明がつかない。
これはやはり先般申し上げたように、「学校は愉しい」「がんばれ! 文部科学省」「ぼくらの日教組」といった、教育現場にたいする「暖かいまなざし」路線へのゆるやかなシフトによって、ゆきすぎた教育批判を補正することの必要性に日本のみなさんが気づき始めたことの徴候として見るのがよろしいのではないかと私は思う。
日本全国の「先生」たち、どうか私とともにチャート入りを喜んでいただきたい。
文部科学省と日教組が同時に本書を「指定推薦図書」にご指名くださってもウチダ的にはぜんぜんオッケーであるということをあらためて確認してお礼のご挨拶に代えさせて頂くのである。
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