夢の出版記念パーティ

2005-01-29 samedi

27日は平川くんの出版記念パーティ(兼ビジネスカフェ・ジャパンの新年会)が早稲田リーガロイヤルで開催されたので、私もゲストスピーカー兼共著者としてお招きいただいた。
集まったのはビジネスマンばかり80人。
大半が私たちより年長である。
そういう人たちを前にいったい何を話せばいいのか。
時間があれば、お客様のリアクションをみながら話題の調整をして、しだいに「おお、ここがツボだな」というところを発見できるのであるが、今回は司会の菊池さんをはさんで三人で20分ほどという短い持ち時間。
「反復と謎」という大ネタを振られて、私も平川くんも必死の答弁を試みる。
これはたいへん面白い主題なのであるが、「唐茄子屋政談」みたいな大ネタなので、「えー、ちょっと腰を据えて話させていただきます。いまのうちにトイレに行く方は用をすませちゃってください」というふうでないと、なかなか切り出せないのである。
それでも冷や汗をかきながら30分ほどのオツトメを終えて、あとはビールとご飯…と思っていたら、次々と未知のビジネスマンがあらわれて名刺交換をすることになる。
用意していた20枚ほどの名刺がたちまちなくなり、トランプができるほど名刺がたまった。
私のような人の名前も顔もぜんぜん覚えられない人間にとって名刺交換会というのはある種の地獄である。
平川くんもこと記憶力に関しては私とどっこいのはずであるが、それでビジネスのおつきあいができているところがすごい。どのような魔術を用いているのであろうか。
オムロンの副社長の市原達朗さんと、キリン・ビバレッジの元社長の阿部洋己さんと、ソニーの「プロジェクトX」の人だった(という説明でわかるのかな、わかるよね)郡山史郎さんという私たちよりはるか年長の「おじさん」たちのスピーチがたいへんに面白かった。
小津安二郎の映画の中では「おじさん」たちがなかなか味のあるスピーチをする。
私はあの「定型的だが、どこか視線が斜めで、わっと笑わせて、すぱっと落とす」スピーチが好きなのであるが、あの口承の伝統はきちんと世代を超えて受け継がれていたようである。
阿部さんというのは、私の『ため倫』を読んで、「独特だけど、まとも」というたいへんありがたいコメントをくださった方である。お嬢さんが女学院卒ということで、「やややどうもご父兄でしたか」と名刺交換しつつ平身低頭する。
なんだかもののはずみで、トップマネジメント・カフェというところで経営者のみなさんをお相手に一席ぶつような流れになる。
平川くんの頼みではお断りできようはずもないが、私のような人間から、生き馬の目を抜くトップマネジメントの方々が何を聴こうというのであろうか。
パーティには前日に引き続き光文社の古谷さんと『オニババ』本の編集担当だった草薙さん、『TFK』の元担当の五十嵐さん、現担当の淺田さん、『反戦略本』の担当編集者の洋泉社の渡邊さんら出版関係者。そして旧友石川茂樹くんと阿部安治くん、読者代表で角田さんが来てくれた。
石川くんからは「新春放談」のテープをいただく。阿部くんはご令息の友人が私の読者で「サインが欲しい」ということであったので、名刺にさらさらとネコマンガを描いて差し上げる。こんなことで喜んでいただけるなら、お安いご用である。
翌日朝一で神戸にもどって入試の採点なので、早々にホテルの部屋に退出。
考えてみると、ホテルで「出版記念パーティ」をやるのが私の長年の夢であったのだが、ひょんなことで共著本のパーティによんでいただいて夢がかなった。
平川くんならびにセッティングしていただいた有志のみなさま、ビジネスカフェジャパンのみなさまに御礼申し上げます。
--------