新しい愛人が来る

2005-01-24 lundi

京都の小林さんご一家がお見えになる。
インプレッサ引き渡しの儀を執行するためである。
まずご一緒に元町の香港茶楼にて、ゆきちゃんの誕生日祝いをかねて飲茶を喫し、しかるのちわが家に移動して、インプレッサをガレージから出して、キーをお渡しする。
午前中にトランクに積み込んであったがらくたやグローブボックスに押し込んであったカセットテープ類をおろして、洗車と車内清掃して、切れていたブレーキランプを換えておいたので、車はつるつる。
「ちょっと車貸して」というときにキーを貸したことはこれまでも何度かあるが、走り去るのを舗道で立ちつくして見送るのは、これが最初で最後である。
芦屋駅前から加速してJRの下を気分よさそうに曲がって行くのを見送る。
なんだか長く付き合った愛人と別れるような切ない気分になる。
きゅん。
今日もまた卒業生が登場。
学生や卒業生が大学院を受けるとき、専攻ゼミの指導教員は推薦書に「所見」というものを書かなければならない。
これがけっこう「駆け込み」でくる場合が多い。
「来週が締め切りなんです」というのはまだいい方で、いままでで一番ひどかったのは、研究室に走り込んできて「先生、いますぐ推薦状書いてください。今日中に郵送しないと間に合わないんです!」というのがいた。
それも英語で。
私が研究室にいなかったらどうするつもりだったのだろう。
ハシくん、キミのことだよ。
推薦状を三枚書いてぺこぺことはんこをおして、できあがり。
奈良まで帰るそのN川さんと駅前で別れてから、てくてく歩いてハットリモータースにBMWを取りに行く。
ディーラーに用事があってこれまで三度通ったが、いずれも原チャリか徒歩。
原チャリをキキキとショールームの前に停めて、BMW購入の「ご商談」をするお客さんというのはあまりみかけない。
「原チャリでベーエム買いに来るお客さんていないね」と営業のトモノくんに前に言ったら「は、でも、社員の中には自転車で通ってくるものもおりますから」というフォローにならない答えをしていた。
「あ、ウチダさま、歩いていらしたんですか? おっしゃっていただければお迎えにあがりましたのに」
だって、ここうちから歩いて五分じゃんか。迎えなんかいらないよ。
訊くところでは、新車購入をされるクライアントの中には納車どころか、試乗車を家まで持ってこい、というようなことを営業マン相手になさる方もままおられるそうである。
車一台買うくらいのことで何をそんなにもったいぶるのか、私にはよくわからない。
八百屋に向かって「キャベツ買うたるから、家まで三つ四つ見本みつくろってもってこいや」というような無法なことを言う顧客はおらない。
キャベツと車のどこが違うのであろうか。
よいキャベツは目と目があったときに「あ、これ」と買い物かごに入れる。
車もまた同日の談である。
私は実物を見ないで、カタログの小さな写真を見ただけで、「あ、これ頂戴」と決めたので、「写真見合い」の花嫁を迎える心境である。
「こちらでございます」
おおお、銀のシャコタンだ。後光が差している。
トモノくんにいろいろと諸計器の使用法の説明を聞く。
超ハイテク車なので、15年前に乗っていたミニとくらべるとコックピットでの手作業の種類は「馬車」と「ジェット機」くらいの差がある。
「これをこうして、さらに押し続けますとこうなります」
「おおおお」
「ここをぴっと押しますと、こんなものが出て参ります」
「やややや」
「ここをタッチいたしますと、これがぱこんと外れて」
「げ」
というようなやりとりを1時間ほど続けて、最初のうちに聞いたことのほとんどを忘れた状態でキーを受け取る。
カーナビで映画も見られますが、ご説明しましょうか?ということであったが、そんなものを見ていると命がいくつあってもたりないので、もういいですとお断りして、とりあえず車を道路に出す。
シャコタンなので、シートを一番下まで落として、ハンドルを最大まで伸ばして下におろすと、ちょっとしたレーサー状態になる。
オートマなんだけど、チェンジレバーを「ドライブ」のところから「M」にシフトすると、「マニュアル」っぽくにも運転できるらしい。(どういうメカニズムかは私の理解力を超えているが)
さて、アクセルをぎゅんと踏んで・・・ああああ快感。
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