水の中の池上少年

2005-01-10 lundi

急ぎの原稿が二つある。
橋本治さんの『蝶のゆくえ』の書評。図書新聞に1600-2000字。
甲野善紀先生+田中聡さんの『身体から革命を起こす』の書評が1800字。
とりあえず一日締め切りが早い橋本先生の書評からさらさらと書き出す。
高橋源一郎さんの「明治の速度」という考え方にインスパイアされたので、「橋本治の速度」というテーマでさくさく書いてゆく。
調子に乗りすぎたらしく、字数を数えたら3600字もあった。
どうしよう。
削れといわれても…
えいとそのままメールで送稿して、「長くなりすぎたので、活字を小さくして、隅っこに載せてください」とお願いする。
HP日記に字数制限なしで好き放題なことを書いているうちに、書くものが節度なく長くなるようになってきた。
だから、『文學界』の連載も『ミーツ』の連載も、引き受けるときの条件は「字数制限なし」である。
態度悪いとは思うけれど、書き出すとどうにも止まらないのである。

夕方になったので、芦屋川畔のベリーニにでかける。
芦屋で池上六朗先生の三軸講習会があって、三宅先生にその打ち上げにお招き頂いたのである。
講習会に出ないで、ご飯だけ食べに行くというのもどうかと思うが、池上先生と会えると思うとついわくわくしてでかけてしまう。
池上先生ご夫妻、三宅先生ご一家に赤羽さん、花谷さん(前回の温泉旅行で「ハナちゃんと呼ばれる若者」とご紹介したの方)、そして福原さん。
会うといきなりプレゼントをくださる。
細長い紙箱である。
なんだろう…と思ってあけたら「尺八リコーダー」であった。
先生の猛追を逃れることは誰にも許されないのである。
ベリーニの久保さんはご病気で入院中とのこと。あの賑やかなおしゃべりが聴けないとちょっと寂しい。
でも、ベリーニのイタリアンは相変わらず美味しい。ぱくぱく食べて、ワインを注がれるままにくいくい飲み、談論風発。
池上先生に先日橋本治さんとした、子供時代の「快感記憶」が以後のすべてのレフェランスになるという話をして、「池上先生にとっての快感記憶の原点は少年時代のどこかで『水の中にいたとき』ではないですか?」という質問を向けてみると、これがみごとにビンゴ。
三軸修正法がどうして「水」のメタファーで満たされているのか、どうして正月に必ず小笠原へ治療者たちを連れて行って「水の中」に潜らせるのか、その理由が腑に落ちた。
三軸の「理想的身体」は、暖かい水の中に浸かって、信州の真夏の青空を見上げている池上少年の「あー、気持ちがいいなあ」経験が原点だったのである。
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