ようやく大学の授業が終わり、実質的に冬休みとなる。
もちろん冬休みと言っても、「オフなので、朝からがしがし仕事をする」というだけのことであり、すこしも「休み」ではない。
机の上には山のような仕事が私を待っている。
とりあえずやらなくちゃいけないのは…
まず最優先が、金曜日の朝カル最終回「レヴィナス『時間と他者』を読む」の仕込み(例によってまだ何もやってない)
それから『インターネット持仏堂2』の校正(これは24日が締め切り。もちろんまだ何もやってない)
『高橋源一郎の明治文学史講義 in 神戸女学院大学』の編集(ようやく半分終わった。この仕事が一番楽しいのだが、楽しい仕事はいつも後回し)
『名越康文先生との対談本』の校正(これも楽しいけれど、量がはんぱじゃない)
甲野先生本の書評(ゲラがさっき届いた。まだ封を切ってない)
橋本治『蝶のゆくえ』の書評(これは気合いを入れて書かないと)
北海道新聞の原稿(新年に向けて…みたいなやつ)
BRUTUS の原稿(煙草を吸って何が悪い、という反社会的エッセイ)
その間に卒論をあと十二三本読んで、コメントして戻さないといけない。
修論の面談でK田くんへの長説教も今週のどこかに入れないといけない。
インタビューや取材が年内にあと二つ。
その間に、朝カルやって、納会やって、能を二回見に行って、大阪に来る平川くんと宴会をして、煤払いをして、年賀状300枚にネコマンガを描かないといけない。
この一週間ほどの間に出版企画や原稿依頼がざわざわ来るが、新しい出版企画はすべてお断りする。
もともと残り20冊くらいあった古証文をまとめて不良債権処理してしまったくらいである。
書き下ろしなんかいまから書けるはずがない。
雑誌からの原稿依頼は、すぐに書けそうなものだけ引き受け、あまり興味のわかないものはお断りしている。
まことに傲慢不遜な態度ではあり、お怒りの方も多々あろうと思う。ほんらいであれば、「はいはい、やりますやります。もう、やらせていただきますとも。みなさまあっての売文業ですから、毎度ごひいきに」というふうに揉み手をしながら受注しなければならない筋の仕事なのであるが、そんなことを言ってどんどん引き受けた日には旬日を出ずして私は衰弱死してしまうであろう。
命あっての物種。ここは人命救護を優先的に配慮させて頂く他ないのである。
最初の休日なので、まずは三宅接骨院に行って、身体を治して頂く。
目の疲れで首筋のリンパが腫れているそうである。
年内にもう一度来なさいと厳命される。
戻ってからまずは掃除。
この三週間ほど、ほとんど掃除する暇とてなかったので、家の中はぐちゃぐちゃである。
床を掃除して、あたりかまわず散乱している本や封筒やゲラの類をとりあえず片づけ机の上に本を拡げるだけのスペースを確保する(さっきまで、90センチ×180センチのデスクの上に、本を一冊拡げるスペースもなかったのである)
それだけで、なんだか一仕事終えたような気になる。
では、とパソコンを開くと、またインターネットが接続できない。
これはたいへんと秘書の勤務先にヘルプメールを送る。
ただちに沈着冷静な声でコールバックがあり、「まずルータの電源を一度落として、PCを再起動してみてください。それでダメならまた次の指示を出します」という簡にして要を得た指示をいただく。
さっそく「ルータ」(実際には秘書は「電話の横にある、UFOみたいなまるいやつ」と言ったのである。私が「あ、ルータね」と応じたら、電話機の向こうで息を呑む気配がした。「電話機の反対側においてある兜みたいなやつ」という指示に私が「あ、電気釜ね」と応じてもやはり息を呑むのであろうか)。
UFOみたいなまるいやつは部屋の隅でじっとりと埃が溜まり、「あの、私最新のデリケートな電子機器なんですから...もう少し丁寧に扱うとか、そう言う気配りはないんでございましょうか」的なややキツメの視線を私に送っていた。
ごめんね、ととりあえずそこらにあったティッシュでふきふきする。
指示のとおり一度電源を落とし、PCを再起動したら、あら不思議、ちゃんとインターネットがつながった。
もしかすると、ルータにつもった悪逆非道なハウスダストが交信を妨げていただけなのかも知れない。
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(2004-12-21 15:12)