甲野善紀先生の講習会。1年ちょっとぶりの女学院登場である。
昨年、NHK「人間講座」のビデオ撮りのときに、甲野先生の受けを取るために東京のNHKスタジオでお会いしたのと、龍谷大学でのシンポジウムで岩下徹さんとご一緒したあと、しばらくお会いする機会がなかった。
NHKの「人間講座」に私は後ろ姿で登場していたのであるが、気がついた方はあまりおられないであろう。
今回は久しぶりに3時間余り、岡田山で甲野先生の最新の術技をご披露頂いた。
私も甲野先生に極められたり、倒されたり、飛ばされたり、持ち上げて頂いたり、たっぷりとその妙技を、身を以て体験させて頂いた。
甲野先生といい、光岡英稔先生といい、当代の武道の達人の技を間近で堪能できる機会に恵まれる点で、ウチダはまことに武道運の強い人間である。
私が異常に武道運が強いということは、「最近、運動してないから、腹出てきたなあ…」という悲しいほどプラクティカルな理由で、たまたま家から一番近い武道の道場に入門したら、多田宏先生の直門の弟子になってしまったという時点からすでに明らかである。
どれほど身体能力が高くても武道運の悪い人もいるし、私のように、身体能力は平均以下でも、武道運だけは超人的に恵まれている人もいる。
ほんとうは合否判定教授会、人事教授会と、本務多繁な折りではあったのだが、私がいなくても同僚のみなさんが適切なるご判断を下されるものと信じて、教授会はお休みさせて頂いた。
私ひとり楽しい思いをさせて頂いて、すまない。
それにしてもまことに充実した一日であった。
甲野先生からは「追い越し禁止」、「袈裟斬り」、「極短距離走」など、これから後の合気道と能楽での稽古の課題を抱えきれないほど頂いた。
多田先生は二十歳の頃に経験した植芝盛平先生の受けの体感を半世紀にわたって絶えざるレフェランスとされたわけであるが、私はその多田先生の受けを二十代、三十代に取らせて頂き、さらに甲野先生、光岡先生、さらには池上六朗先生と希代の達人の妙技に肌で触れる機会に恵まれ、そのすべてを生涯にわたるレフェランスとして参照することができる。
まことにありがたいことである。
講習会には、「京大合気道部の至宝」赤星くんがますますパワーアップして登場。意拳修業で鍛えた赤星くんには、もうまるで歯が立たない。
こうなると赤星くんと「東大気錬会の至宝」工藤くんのガチンコを一度見てみたい。
工藤くん、こんど来て、私にかわって赤星やっつけてね(でも赤星って、100キロあるから。自分では「体重計に載らないから体重わかりません」とか言ってたけど)
でも、その赤星くんをつくば大学の高橋佳三くんは軽々と抱えていたし。
未来ある若い人たちにはかないません。
合気道部の諸君も、講習会に参加されたみなさんも、甲野先生の術理の妙を堪能されたことでありましょう。
すてきなパフォーマンスをしてくれた仏大の川野さん、介護技法いきなり体得の「えこまの部屋」の福井さん、雑穀パンを焼いて下さった小池さん、東京から来て下さった鈴木さんはじめ遠いところから来て頂いたみなさん、どうもありがとうございます。
いちばんたくさん受けを取ったドクター。健ちゃん、谷口さん、谷尾さん。スタッフの合気道部のみなさん、てきぱきと幹事役をこなしてくれたウッキー、みんなご苦労さまでした。
ほんとうに愉快な一日でした。
なによりお忙しい中、女学院のために一日を割いて下さった甲野先生ありがとうございました!
また来て下さいね。
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(2004-11-19 22:07)