Sapporo revisited

2004-10-03 dimanche

日本フランス語フランス文学会秋季大会に北海道大学へ。
編集委員をやめてから、学会には足を向けなくてなっていたけれど、旧友吉田城くんのお招きで久しぶりに学会にゆくことになった。
合気道の稽古を終えてからソッコーで荷造りをして伊丹へ。
18時半発のJ−AIRの小さな飛行機で新千歳空港へ。9時過ぎに札幌の京王プラザに投宿。小腹が減ったので、ホテルのレストランでビールとチーズとソーセージで軽食。
朝が早いので即寝る。

日曜は快晴。
札幌はもう秋深く、気温は10度くらい。背広の上にコートを着る。北大に来るのははじめて。
どこにあるのか知らなくて、ホテルから札幌駅まで歩いて、そこでタクシーを拾ったら、ホテルのすぐ裏が北大の正門だった。
広くて美しいキャンパス。
そういえば、従兄のツグちゃんの長女のアカリちゃんが北大の歯学部の学生だったことを思い出した。
早く着きすぎたので、構内を散歩して、池の鴨を眺めて時間をつぶす。
私の出るワークショップは10時40分から二時間ほど。
吉田くんが司会で、京大の多賀茂先生と私がパネラーで、テーマは「文学と身体 規範と逸脱」。
学会でのワークショップというのは初の試みで、同時に三会場で行われる(あとの二つは「自己を語るエクリチュール」と「『ソーカル』事件を考える」)。
三会場のパネリスト9名のうち、高橋純、大平具彦、赤羽研三の三氏は都立大の先輩、小倉孝誠さんは都立大時代の同僚。吉田くんは日比谷高校の同期生、多賀さんは神戸女学院に非常勤に来て頂いていたことがあるという(ウチダ的には)「身内のパーティ」である。
うちの会では、多賀さんが「怪物と奇形」の話をして、私が「身体と時間」の話をして、吉田くんが「舞踏と文学」の話をする。
どこがどうつながるのか危ぶまれるところであったが、司会の吉田くんのみごとな手綱さばきで、ちゃんと話がまとまった。

るんちゃんのバンド友だちであるところのS水社のS山くんが茶髪にサングラスというファンキーな格好で聴取されていたので、「あ、どうも娘がいつもお世話になっております」と平身してご挨拶をする。
「さっそくですが、弊社の***にご執筆をお願いいただけませんか」と切り込まれる。
娘が世話になっている手前、ほかの編集者相手のときのように木で鼻をくくるような態度をするわけにはゆかない。「は、前向きに取り組まさせて頂きます」と直立不動でお答えする。

2時間のセッションが終わり、自動的に北海道に来た用事が終わる。
懇親会に出て久闊を叙するつもりでいたのだが、学会日程が(私が3年も学会に出ない間に)変わってしまい、懇親会は土曜日に終わっていたので、明日の朝の飛行機まですることがなくなってしまった。
ほかにすることもないし、人に会う予定もないので、明日の朝までどうしたらいいんだろうと呆然と歩いていたら、赤羽さんに呼び止められて「これからどうするの」とご下問頂いた。
「すっことないんです。赤羽さん、遊んでください」とお願いする。
赤羽さんは編集委員なので、これからお仕事があるけれど、終わったら携帯に電話するから晩ご飯を一緒に食べましょうと言っていただく。
やれうれしや晩飯の相手がみつかったと歩いていたら、吉田城君ご夫妻ご一行に追いついたので、「いっしょにお昼ご飯にゆきましょう」と無理矢理身内にまぜていただく。
ふたりでクラーク博士像前でにっこりツーショット。
高校のときの友だちとこんなところでこんなふうに写真を撮っているとなんだか不思議な気分になる。
札幌駅のなんとかタワーでお昼をいただく。
札幌の街を見下ろしながら、北海道名物料理を食べるつもりであったが、なかなかそうはゆかないものである。
食事をしつつ談論風発。若い院生お二人がいっしょだったので、ついおじさん二人は「長説教」体制に入る。ごめんなさいね。初対面でいきなり説教かましてしまって。
お散歩にでかけるみなさんと別れて、ホテルに戻り、ゆっくりと風呂につかり、寝間着に着替えて昼寝。二時間爆睡。さすがに多少は緊張していたらしい。
夕方起き出して、平川君の『反戦略論』の「あとがき」の往復書簡の続きを書いて送信。
ちょうど仕事の終わった赤羽さんと連れ立って「すすきの」に繰り出す。
ご家族とのポルトガル旅行帰りの赤羽さんとは、ついこの間、シャルルドゴール空港で帰りの飛行機を待っているときにもばったりお会いした。
赤羽さんは修士のときからお礼の申し上げようもないくらいにお世話になっていて、足を向けて寝ることのできない大先輩である。
どういうわけだが、私が学会のあとに飲みに行く相手がつかまらなくて呆然自失しているときに限って私のそばを通りかかり「あ、赤羽さん、ご一緒させてくださいよお」と泣訴されて、つきあってくださるという不運にして寛大な先輩である。
「すすきの」交差点において、身体感受性を最大化して、「美味しい店」を看板だけで判定するという高等技術を繰り出す(これは私の特技の一つである)。
「ここ」と白羽の矢を立てた店に自信たっぷりにご案内して、赤羽さんと「ソーカル問題」「デコンストラクション」「都立大問題」「バイリンガル教育」「フェミニズムの鎮魂」「仏文学者の社会的責務」など多彩にしてハイブラウな話題を展開しつつ、さんまの刺身、あわびの刺身、いかソーメン、ホッケ、うにイクラ丼を生ビールと地酒で流し込む。
まことに美味ですなあとにこにこしながら札幌の夜は更けて行くのであった。
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