タカハシさん登場

2004-08-03 mardi

高橋源一郎さんが神戸女学院にいよいよ登場。
高橋さんは灘の文芸部だったので、神戸女学院高校の文芸部と交流があって、高校生時代に(竹信くんらとともに)何度か岡田山を訪れたことがあり、爾来35年ぶりの Babylon revisited。
今回の集中講義のテーマは「明治文学史」。
『日本文学盛衰史』と『官能小説家』のタカハシさんに漱石や一葉を論じてもらうのである。
これは喩えて言えば、タイガー・ウッズにクラブの握り方を教えてもらうとか、ジョン・レノンにビートルズのコード進行を教えてもらうようなものである。
しかし、このレアな機会のほんとうの意味をわかっている学生院生が本学には20名ほどしかいない・・・というのがまことに切ない。
それでもM杉K子先生やI田Y子先生らコアな文学研究者が全身を耳にしてかぶりつきで聴講している。

初日は漱石論。
溝口健二の『虞美人草』(これはびっくり)と清水宏の『金色夜叉』(これは爆笑)を見てから、どうして漱石は映画になりにくく、尾崎紅葉は映画になっても(というか映画の方が)面白いのかという本質的な問いへと向かってゆき、「地上最強の批評装置」タカハシさんをナマで堪能する。

感動さめやらぬまま、一同歓迎の宴へ移動。
会場は、『ミーツ』今月号で山本画伯がサラダを食べている武庫之荘のイタリアン『グロリア』。
タカハシさんをM杉先生、I田先生、ナバちゃん、ジローちゃん、山本画伯それにウッキーというまことに「濃いー」メンバーで囲んで怒濤の会食となる。
5時に始まって、5時間にわたり談論風発鯨飲馬食。
話頭は転々、奇を究めて、とても筆舌に尽くしがたいのであるが、結婚話(とくに「ドバイの花嫁」話)で盛り上がった。
ちなみに、参加者のうち未婚のウッキーを除く7名で、結婚回数の総計が13回、離婚回数の総計(こういうものって足し算するものじゃないような気もするが)が10回、そして子どもがいるのが二人だけ・・・というかなり傾向的な集団なのである。
『負け犬の遠吠え』というようなものではなく、ほとんど『マンモスの咆哮』みたいな壮絶な展開であった(この座談を録音しておいて出版したらかなり売れただろうな)。
それにしてもご飯とワイン(画伯提供)がすばらしかった!
下の写真はタカハシさんを囲む、ジローちゃん、私、画伯。ナバちゃんは携帯カメラの写真のサイズが足りなくてアップできませんでした。ごめんねナバちゃん。

二日目は樋口一葉。
本日の映画は美空ひばり(!)主演の五所平之助監督の『たけくらべ』(1955年)。
これがいかなる珍品かと思いきや、実にウェルメイドな傑作映画。
市川染五郎(現・松本幸四郎、まだ初々しいミドルティーン)が田中屋の正太郎。大黒屋が柳永二朗、信如の父が佐々木孝丸、美登利の姉が岸恵子(美しい・・・)、駄菓子屋のおばさんが山田五十鈴(怪演)、その他、中村是好、吉川満子、坂本武、山茶花究、桜むつ子・・・と錚々たる配役。
昭和30年は明治と地続きであり、ということは江戸時代とほとんど地続きであったということが、この映画を見るとよく分る。
タカハシさんの一葉論は『たけくらべ』と『蹴りたい背中』『蛇にピアス』の説話的構造の同一性、さらには驚くべき高橋家秘話へ、日記に隠された一葉の謎・・・と暴走を遂げ、あっという間の知的悦楽の数時間でありました。
でも、この講義を聞き損なった諸君も心配するには及ばない。
ちゃんと本になるからね。
さあ、明日はどうなるんだろう。わくわく。
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