大学院の宴会を無事に打ち上げて、学期末宴会シリーズは無事終了。
さっそく本格的に仕事に取りかかる。
まず7月末締め切りで放置してあった『現代思想のパフォーマンス』の改稿作業。
これは難波江さんとの共著で2000年に松柏社という英米文学関係の本を多く出している出版社から出した本。
どうせ売れないだろうということで、2800円という法外な値段をつけられてしまった。
値段は高いし、著者はふたりとも無名だし、会社は別に宣伝もしてくれないので、2000部刷ったけれど、もちろんぜんぜん売れなかった。本屋さんでも見かけたことがない。
山本浩二の装幀ですばらしく美しい本だったんだけどね。
書評でも『英語青年』以外ではほとんど取り上げられなかった。
でも、最近岩波から出た「一冊でわかる」シリーズの『ポスト構造主義』(キャサリン・ベルジー、折島正司訳、2003)の「あとがき」のところに、訳者の折島さんが「日本で書かれたポスト構造主義解説本」の第一に挙げてくれた。
「まずは難波江和英・内田樹の『現代思想のパフォーマンス』。『現代思想のパフォーマンス』という題からも、『これはマニュアル本ではない』という帯の文句からも、この本の著者たちが『わかる』ことより『する』ことがだいじと考えていることがわかる。だがこの本はよくわかる。特にラカンを論じる章がよくわかる。ラカンを読んでから内田樹を読むよりも、内田樹を読んでからラカンをお読みになることを、強くお薦めしたい。」
と、強くお薦めしていただいたのである。折島先生、どうも、ありがとうございます。
「よくわかる」本を難波江さんも私も学生院生向きに書いたつもりだったが、こんな価格ではビンボーな学生さんは買ってくれない。それじゃ書いた意味がない。
しょんぼりしていたら、これを光文社が「新書で復刻したい」と言ってくれたのである。
ありがたいことである。
新書なら学生さんにも買える。
この本では難波江さんがソシュール、フーコー、サイードを。私がバルト、レヴィ=ストロース、ラカンについて「解説篇」と「実践篇」を書いている。
わかりやすい解説(少なくともわかりやすいことを標榜した解説)というのはよくあるけれど、実践篇というのは、実際にその理論をつかってテクスト解釈をしてみるとこんなふうになります、というシミュレーションである。これは新機軸。
ソシュールで『不思議の国のアリス』、バルトで『エイリアン』、フーコーで『カッコーの巣の上を』、レヴィ=ストロースで『お早よう』、ラカンで『異邦人』、サイードで『M・バタフライ』を読む・・・という趣向なのである。
現代思想の解説書は多々あるけれど、「実際に使うときは、こうやるんだよ」という手引きまでしてくれる本というのは珍しい(「これはマニュアル本ではない」と難波江さんは書いていたけれど、もちろんマニュアル本として読んでいただいてもまったく構わないのである)。
ただし、すごく厚い本(317頁)なので、このままでは新書にならない。
で20%くらい削りましょうということで、その作業の締め切りが今月末だったのである。
月曜から始めて、ほいほいと作業は順調に進んで、バルト、レヴィ=ストロースと片づいて、昨日一日でラカンの半分まで終わった。あと半日仕事である。
久しぶりに読み返してみたら、ラカンの解説がなかなか面白い。これだけ「噛んで含めるように」ラカンの基礎概念を解説した本は日本語で書かれたものでは他にないのではないだろうか。
『寝な構』でもラカンについては書いているけれど、いかんせん頁数が少ない。
というわけで、10月刊行(いったい10月だけで何冊本が出るんだろう)の光文社新書『現代思想のパフォーマンス』増補改訂版のご案内でした。買ってね!
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(2004-07-15 09:00)