『リバティ・バランスを撃った男』的風景

2004-07-12 lundi

参院選挙があるので、とことこと大原集会所まででかける。
芦屋市の善男善女がはがきを手に投票所に集まって来る。
角を曲がるたびに道路を歩いている人が増え、それが一つの建物に吸い寄せられてゆく。
私はこの風景を見るのが好きだ。
「民主主義って、これだよね」と思う。
ジョン・フォードの『リバティ・バランスを撃った男』に、西部のとある准州の代議員選挙のために市民たちが酒場に一人また一人と集まってくる場面がある。
受付のところで保安官とドクターが選挙人登録を確認して、人々は期待に胸をふくらませて会場であるサルーンに入ってゆく。
ヨーロッパからの移民たちにとっても、これがおそらくはじめての普通選挙の経験なのである。
選挙で選ばれるのは「ワイルド・ウェスト」の原理を表象するふたりのガンマン、トム・ドニフォン(ジョン・ウェイン)とリバティ・バランス(リー・マーヴィン)ではなく、法と言論を表象する法律家(ジェームズ・スチュアート)と新聞記者(エドモンド・オブライエン)。やがてジェームズ・スチュアートは准州の代表者にも選出されて、上院議員への階段を上ってゆくことになる。
不遇のうちに死んだジョン・ウェインの葬儀のとき、長い回想を語り終えたジェームズ・スチュアートは、彼の半世紀にわたる政治的キャリアを支えたのがその法律家としての見識の高さではなく、「リバティ・バランスを撃った男」という誤伝であることを理解する。
アメリカの政治風土について深く考えさせられるたいへんすぐれた映画であった、という話ではなくて、「一人また一人」というのが私には民主主義の原点を示す風景のように思われて好ましい、というお話でした。おしまい。

夕方からゼミ三年生の宴会。
一品持ち寄りなのでたいへんなご馳走がテーブルに並ぶ。
5時から11時過ぎまで、わいわいと歓談。
猫の祟り、生き霊の飛ばし方、バレーと能楽の身体運用の共通点などの話題で盛り上がる。
みなさんお疲れさまでした。
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