5月22日は、第42回全国合気道演武大会。
日比谷公会堂から日本武道館に会場を移して27回目の演武大会であるが、私はその第16回大会から27年間の連続出場記録をひそかに更新中である。
「一度始めたことは、なかなか止めない」というのが私の性癖なのであるが、ほんとにしつこいね。
自由が丘の同門の先輩同輩諸君の中でも、さすがに27年ともなると、たまには風邪を引いて熱を出したり、子どもが病気になったり、妻が産気づいたりなどの理由で、出場が途切れることもある。
連続出場記録を粛々と更新しているのは、おそらく私ひとりであろう。
90年、91年、92年は関西移住後で、まだ神戸女学院合気道会が演武会に出られるほど陣容が整っていなかったので、出場母体がなかった。だから、ひとりで武道館に行って、勝手に自由が丘道場の中に紛れ込んで演武させて頂いたのである。
ふつう、こういう場合、常識ある社会人は一定期間出場を自粛するものであるが、私は「一度始めたことは、もう止められない」悲しみのエビセン体質であるので、自由が丘道場のみなさんのご厚情にすがったのである。
93年からは多田先生のご高配で、神戸女学院合気道会として正規に出場させて頂くことができた。
東大気錬会も同年が初出場で、演武者控えの廊下で、まだ学生だった初々しい雑賀くんと「あ、いっしょだね。がんばろうね」とエールの交換をしたのを覚えている。
だから、神戸女学院合気道会として出場するのは今年が12回目ということになる。
今年はスーパー二年生軍団5人が初参加で、総勢17名の、たいへんにぎやかな演武となった。
参加者は松田高志・溝口良子・内古閑佳奈・楠佳織・北川真優美・澤奈緒・古橋右希・岸田汐・森川直・中瀬志保・森千花・二木佐知子・前川さち& “男子組” の常田裕逸・石田大樹・佐藤友亮のみなさん。白川カヨさんは残念ながら、木曜の稽古で鎖骨を痛めて涙の休場。飯田祐子先生は学会とバッティングで残念ながら宴会と翌日のお稽古のみの参加。みなさんどうもご苦労様でした。
演武会のあとは、恒例の「寒い九段会館屋上での多田塾ビヤパーティ」。自由が丘、月窓寺はじめ総勢100名が参加。なぜか、演武会のあとはしょぼしょぼ小雨が降ることが多い。
ここも最初に開拓したのは不肖ウチダである。
二十年ほど前に、たいへん暑い日に演武会があった。終わったあと、いつもなら自由が丘まで戻って「打ち上げ宴会」をするのであるが、あまりに暑くて、「とても自由が丘までもたない」と小堀さんが言い出したの(小堀さんがこういうことを言い出すと、もう誰にも止められない)。手近でとりあえずビールを飲もうということになり、そういうことになると決断の早いウチダが九段会館の屋上ビヤガーデンをみつけて「お、あそこにいこうぜ」と走り込んだのが、この恒例行事のことのはじめなのである。
ビヤガーデンで早稲田の諸君が宴会奉行梶浦真さんの指揮下に爆笑「アブラハム」などの持ちネタを披露。気錬会は例によって何もネタがないので、工藤くんの婚約披露をもって芸に代えさせて頂きますということであったが、これは毎年使える芸ではないな。
100名のビール代はすべて多田先生の奢り。多田先生、ごちそうさまでした!
ビールのあとは、神田すずらん通りまで足を伸ばして、またまた恒例の気錬会との合同宴会。
狭いところに30名近く押し込んで、工藤俊亮くん、新主将中村裕貴くん、副将の山本京祐くん、「店子」のQちゃんらと痛飲。
気錬会の新幹部のお二人はそろって細身のシティ派美少年なので、本学の部員諸君のなかにも隠れファンが少なくない。ヒロタカくんは、はにかむ横顔がキュートな平安時代の公達系で、ヤマキョーは笑顔に白い歯がこぼれるワイルド系。名香智子『花の美女姫』の世界がそのまま物質化したかのようである。
翌日は駒場で恒例の合同稽古。今年は早稲田も参加してくれたので、にぎやかな三大学合同となった。ヒロタカくんと早稲田の渡瀬主将が前半を指導され、後半は不肖ウチダが最近凝っている「時間差合気道」をご指導する。
ヴァレリー=ベルクソンの時間論に池上先生の三軸自在原理を応用したまことに精妙にして純理的な合気道なのであるが、悲しいかな唱道者であるウチダ自身の術技が術理に及ばないところが泣き所である。
幸い、“気錬会の至宝” 工藤俊亮くんに受けをお願いしたら、さすが日頃「多田塾研修会のあとに生ビールを飲む会」で「ツーと言えば、スリーと答える」気の感応のお稽古に余念なく励んだことが奏功してか、「こんなふうに受けを取ってくれたらありがたいのであるが」とウチダが思念するだけで、それをただちに実現して下さるまことに得難い同門のよしみなのでありました。
5月23日 東大気錬会・早大合気道会との三大学合同稽古会 :駒場第一体育館にて
(この稽古あとの記念撮影のデジカメデータをさきほど気錬会の高橋さんから送っていただきました。私の向かって右となりが早大合気道会の渡瀬主将、左となりが東大気錬会の中村主将です)
3時間の稽古で気持ちのよい汗をかいたあと、みなさまにお別れしてひとり市ヶ谷アルカディアへ。
紀伊国屋書店の ifeel という雑誌のお仕事で、構造主義の今日的意義をめぐって鈴木晶先生と対談なのである。
前日から、完全に合気道モードになっているので、その頭をアカデミックモードに切り替えるのに苦労する。
さいわい、こちらも「メル友交換日記」以来のコンビである鈴木先生がお相手であるので、昼食を頂きながらの対談であったが、一人が5分しゃべるあいだに一人は黙々とご飯を食べ、小鉢二皿ほど平らげると、お箸を置いて話を引き取り、交代にいましゃべった方がこんどはぴたり5分間お弁当を頂くという高等技術をご披露する。
構造主義というのは「情報の抜き取り」技法であり、その意味で知性の節度を説いたものであるが、節制の果てにめざしたものが「人間性の起源」の発見である以上、やはり動機は知性の法外さであるいう思いつき的なオチに強引に落とし込む。
この「ナントカであると同時に、まさに非ナントカなのである」というオチはだいたいどんなネタにも使える。
これはどこから突っ込まれても平気で言い逃れができるばかりでなく、そう言っている本人もだんだんその気になってきて思わず考え込んでしまうというなかなかに教化的にすぐれた落とし方なのであるので、お若いみなさんはぜひご参考にして頂きたい。
2時間の対談を終えてから会場わきの法政大学ボアソナードタワーに鈴木先生の研究室をお訪ねして、21階からの東京の絶景を賞味させていただく。こりゃすごいや。
そのまま鎌倉に戻られる先生と東京駅までご一緒して、駅頭にてお別れする。
鈴木先生どうも休日出勤させてしまって、すみませんでした。今度は仕事抜きでゆっくり飲みましょうね。
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(2004-05-24 12:10)