本願寺出版社のフジモトさんのお誘いでフェスティバル・ホールにキース・ジャレット・トリオを聴きに行く。
キース・ジャレットというと、私の年頃のジャズ少年にとっては、1967年の衝撃的なチャールス・ロイドの『フォレスト・フラワー』が「お初にお目にかかります」である。
私はこの年高校を中退してお茶の水のジャズ喫茶ニューポートで半年ほどカウンターのバイトをしていた。
チャールス・ロイドはこの前後二年ほどのあいだに Dream Weaver、Forest Flower,Love-In と立て続けに話題作を発表していて、たしか67年の Jazzman of the year に選ばれた「時の人」であった。
というわけでニューポートで朝から晩まで私はチャールス・ロイド・バンドを聴いて16歳の終わりから17歳の始めを過ごしていたのであった。
だからそのあと東大の East Herd というジャズバンドの新入部員になったときに私のドラミング・スタイルの「神様」がジャック・デジョネットだったのはごく当然のことだった。
ジャック・デジョネットのドラミング・スタイルはその少し前にジョン・コルトレーンとのコンボで一世を風靡したエルヴィン・ジョーンズの「裏に裏に入る」スリリングなスタイルをもう少し穏やかにした「きわきわの予定調和」というものであり、このコンセプトはウチダの気質にたいへんなじみのよろしいものであった。
もちろん私のドラム技術はコピーに遠く及ばなかったのであるが、それでも何を表現したいのかについては私なりのイメージがあったのである。
ロックでは、チャーリー・ワッツもリンゴ・スターもキース・ムーンも田辺昭知(スパイダーズ!)もデイヴ・クラークもハル・ブレインも好きだったけれど、ジャズ・ドラムについては「ジャック・デジョネット神様」だったわけなのである。
その神様を40年ぶりで拝見した。
ジャック・デジョネットのドラムスタイルの特徴は左手の非常に細かい動きにある。
この人は左手ひとつでかるく三連符を打つのである。
昨日の話じゃないけれど、身体が細かく割れていないとこういう芸当はなかなかできない。
肩の力を抜いて、なんだかずいぶんゆっくり打っているように見えるのだけれど、スティックだけ目に見えないくらい細かい動きをしている。
結局2時間ずっとジャック・デジョネットのドラムばかり聴いていた。
うーむ。
武道もジャズも帰する所はひとつだな。
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(2004-05-03 00:54)