三軸自在講習会。今回は光岡英稔先生と私がゲストとしてお招き頂く。
光岡先生とお会いするのは去年の秋に、ごいっしょに国技館での本田秀伸さんの対ムニョスの世界タイトル戦を観戦して、そのあと新宿で池上先生とご飯を食べたとき以来である。
金曜の夕方、まず光岡先生から芦屋に着きました、池上先生が着くまでひまだから遊びましょ、というお電話をいただく。
投宿先は隣の竹園ホテルである。私の部屋からロビーまで徒歩2分であるから「ほいほい」とでかける。
さっそく光岡先生とお供の野上さんと久闊を叙し、毎日新聞の中野さんもまじえておしゃべりしているうちに、今回のプロデューサー三宅先生、そして東京から池上先生ご一行も到着。どどどと元町「帝」に繰り出す。
先回の「下見(というより「下食べ」)ツァーでお腹がちぎれるほど焼き肉を食べたので、今回は少し控えめにしておく。
今回のイベントは池上六朗先生との対談本の収録もかねているので、ご飯をたべてるあいだも、お酒をのんでるあいだも、三人がしゃべっている間はずっとテープが回っている。
最初のうちはテープ起こしをする人々のご苦労を配慮して、なるべくまじめな話題を選んでいたのであるが、そのうちにもうどうでもよくなって(中野さん、ごめんね)、「ごくごく」とか「ぱくぱく、こ、これうまいっすね」、「あ、どーも、どーも、ま御一献」というようなテープ起こしの人が空腹であったら殺意を抱くであろうような会話でテープが埋め尽くされる。
20日は朝の10時から夕方4時半まで三軸自在講習会。
朝全員ぞろぞろと竹園ホテルから会場の芦屋市市民センターへ向かう。
今回は参加者が101名。60名が専門の治療者(柔整、鍼灸、カイロなどのみなさん)、で残り40名がそれ以外の方々。
池上六朗、三宅安道、光岡英稔のお三方と
合気道会からは飯田先生、ドクター佐藤、ウッキー、IT秘書イワモトくん、谷口さんが参加(飯田先生以外はみんな三宅先生の患者)。
ウッキーとイワモトくんは、池上先生をまじかに見て「治療者」として生きるかどうかを決断するたいせつな機会である。(私がふたりに「君達は三軸を習って、専門の治療者になりなさい」と厳命したのである)。
前半の3時間が池上先生による三軸自在修正法の原理の解説と、実技。
午後2時過ぎから、光岡先生による意拳の基本動作のお稽古と、発勁の実際を経験する会。
なんども中国に行かれた光岡先生の発勁は前回拝見したときよりさらにますます凄みを増して、勁を受けた人がほんとうに宙を飛んで、うしろで支えている私たちまでいっしょに崩れてしまう。
光岡先生の勁力がこのまま強くなってゆくと、この先どんなことになるのかもう想像もつかない。
意拳の基本原理は「ただしい時、ただしい場所、ただしい形」である、と光岡先生は繰り返しておられた。これは意拳に限らず、人間が生きることの基本原理であると私は思う。
生き方がただしければ、人間はその潜在的なポテンシャルを最大化できる。
まことに平明な真理であるが、それを「まのあたりにする」という機会はなかなか求めて得られるものではないのである。
私もいちおうギャラを頂いているので、何かしなければいけない。
三宅先生からのご依頼は、光岡先生の意拳の理合を三軸自在の原理となんとかつなぐような「中を取り持つ巡航船」の役目をということであったのだが、池上先生の魔術的治療と、光岡先生の超人的発勁にウチダの「解説」などもとより不要のものである。
それでも何か話さないといけない。
こういう局面で私がある程度確信をもってしゃべることができるのは「私が思うには・・・」ということではなく(そんな話は誰も聞いてくれない)、すべてが「多田先生からお聞きした話」である。
多田先生からお聞きした話の中には、「なんだかよくわからなかった」ので、そのまま「宿題」として何十年も心に残っているものがたくさんある。
もちろん、そのときどきの段階でそれなりの解釈を加えて納得はするのだが、すぐに「それだけではない」ということが分かってくる。
そして、光岡先生の意拳の原理や池上先生の治療原理をパラフレーズしなければいけない、というようなせっぱつまった局面で、私にできるのは、多田先生からうかがったまま長い間「宿題」として残っていた「意味がよくわからなかったことば」の意味は「なるほど、こういうこと」だったのかという得心を語ることだけなのである。
「師匠を持つ」ということがどれほどありがたいことであるのか、身にしみて感じた一日であった。
講習会のあとは、本田さんや守さんはじめ旧知のみなさんや、池上先生のお弟子さんたちで私の本を読んでくださっている方々としばらく歓談したのち、打ち上げのベリーニへ。
池上先生とベリーニで
ベリーニの久保さんに、「ホームページ日記に先生が『ベリーニは美味い』と書いてくれたおかげで、新しいお客さんが増えました」と感謝の言葉をいただく(お礼に秘蔵のお酒をごちそうして頂いた)。
ベリーニのお料理はすっごく美味しいです。久保さんは親切だし、「独身」です(ぜひこれを強調してほしいというご本人からの要望でした)。
わいわい呑んで食べているうちに、光岡先生はナイフを取り出して(どこにゆくときも、すぐにその場でお稽古ができるように、光岡先生はいつも「道具一式」を持ってゆかれるのである)会食の若い諸君を相手に「ナイフ取り」の稽古を始める。
どういう団体と思われたであろうか。
新幹線の最終で帰られる光岡先生と野上さんを竹園ホテルの前でお見送りしてお別れ。
次回の「光岡英稔先生意拳講習会」(於:神戸女学院大学)は6月19日と決定。
またホームページ上で正式に告知しますので、参加希望者はウチダまで申し込んでくださいね。
二大「超人」と二日にわたってごいっしょしたので、さすがにウチダも頭がくらくらして、家にもどるとそのまま爆睡。
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(2004-03-21 13:14)