鼎談・カルマ落とし・星取り表

2004-03-04 jeudi

関西電力の出している Insight というメールマガジンのお仕事で、「競争社会―新たな秩序をどうつくるか」というテーマで鼎談をする。
お相手はウチダより一回り以上若い、ばりばりの論客のおふたり。
村田晃嗣先生(同志社大学法学部助教授)は国際関係論(安全保障)がご専門で、『朝まで生TV』にもよく出演されている気鋭の政治学者。
小川進先生(神戸大学経営学研究科教授)は神戸大学のビジネススクールでイノベーション管理、マーケティング、流通システムなどを研究している、これまたレイザーシャープな経営学者。
このような方々を相手にして私にいったい何をさせようというのか、企画者の意図がいまひとつ読み切れなかったウチダであるが、とりあえずPちゃんの勤めている会社であるからして、関西電力さんには「あ、どうもうちとこの若いもんがお世話になっとりま」というわけで、まるでご縁ががないわけではない。
それに、Insight には二年前に短い連載をしたこともある。ちょうど、鹿児島大学の集中講義のときで、送稿するのをまるっと忘れて原稿を落としかけたことがあるが、その不祥事については、さいわいにも先方はご放念下さったようである。
ともあれ、新進気鋭の論客ふたりをお相手に迎えて(いちおう年功序列で、ウチダが司会)「競争社会の現状」「競争社会における新たな秩序づくり」「秩序づくりのための課題と方策」を論じることとなった。
国際社会における安全保障の枠組みとは何か、ビジネス・イノベーションの可能性、競争による社会の均質化、アメリカの統治システムの恐怖と希望、コカコーラはどうして売れるのか、企業における多様性の担保はどのようにしてなされるか、冷戦以後の国際関係のリセットの仕方・・・など、「どうしてそんなテーマについて、司会進行したり、いっぱしの意見を述べたりできるのか」ウチダ自身にも説明できないような諸問題について論点の整理をしつつ2時間にわたる内容ゆたかな鼎談を終わらせる。
ウチダの安全保障論のネタもとは土佐先生からいただいた本と(ウチダ唯一の定期購読誌であるところの)『学士会報』、ビジネスについての知識は兄ちゃんと平川くんからの聞きかじりなのであるが、それでつぎつぎと小咄を繰り出しつつ専門家のお相手をしてしまうというところが大胆というか無謀というか、「亀の甲より年の功」なのである。

しかし、寝不足状態のまま2時間にわたってまじめに鼎談の司会なんかしちゃったので、さすがへろへろになって、午後からの合気道の稽古はお休みしてしまった。(ウッキーすまぬ)
寝不足なのは、前夜、主治医の三宅安道先生ご夫妻とおともだちとご一緒に、元町の「焼き肉・帝」で腹がちぎれるほどお肉を食べたせいである。
もちろん、それは単にウチダの口がいやしいということではなく、「三宅先生のカルマ落とし」という宗教的意義と、「池上先生とこんどご一緒にお肉をばりばり食べるときのめにうの選定」という実務的要請もあってのことであるので、真摯かつ貪欲にお肉ならびにメドックなどをいただかなくてはならなかったのである。
食べた分だけ三宅先生のカルマが落ちると思うと、美味にさらに人間的達成感も同時に味わえるというたいへんに幸福な時間であった。
ああ、よいことをしたあとは気持ちがいいなあ。(三宅先生ごちそうさまでした!)
明日は名越康文先生とイタリアン(モード・デ・ポントヴェッキオ)を食する。
勧進元は新潮社。
新潮社のカルマがどれほどのものであるのかはウチダごときの想像力のよく及ぶところではないが、それでもささやかながら一臂の力を仮して差し上げたいと覚悟をあらたにして、明日は朝昼抜こうかしらと真剣に考えるウチダなのであった。

【おまけ】
最近のバカ映画の星取り表
『トリック』(堤幸彦:仲間由紀恵・阿部寛・生瀬勝久)(全シリーズ踏破、2週間かかったぜい)☆☆☆☆(「おまえたちのやっていることは、全部まるっとお見通しだ!」)いやー。これは楽しいわ。TV放映時もけっこうチェックしていたが、まとめてみるとまた一段と。仲間由紀恵の「ぜったい噛まない早口」が快適。しかし、野際陽子もありとあらゆるものに出るなー。ウチダは『赤いダイヤ』のときは真剣に野際ファンだったんだけどね。

『ハンテッド』(The Hunted by William Friedkin; Tommy Lee Jones, Benecio Del Toro) ☆☆ トミー・リー・ジョーンズとベネチオ・デル・トロによる『ランボー』のリメイク・・・ウィリアム・フリードキンは「焼きがまわった」のか、それともはじめから「焼けていた」のか。ちょっと考えさせてください。

『チャーリーズ・エンジェル:フルスロットル』(Charlie's Angels: Full throttle by McG: Cameron Diaz, Drew Barrymore, Lucy Liu) ☆☆ ま、好きにしなさい。

『ドリームキャッチャー』(The Dreamcathcer by Laurence Kasdan: Morgan Freeman, Thomas Jane, Jason Lee, Damian Lewis, Timothy Olyphant) ☆☆☆  前半の1時間は☆☆☆☆、後半の1時間は☆☆。前半の「なんだかわかんない感」が最後まで持続すれば・・・惜しい。でも、スティーヴン・キングってだいたいそうだよね。痔疾のひとは見ない方がいいです。
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