2月25日

2004-02-25 mercredi

早起きしてまず『ミーツ』の原稿を一気に書く。
先月につづいて「結婚はお得か?」というテーマ。
人間は死者とだって対話できるのである。まして配偶者においておや。
というわけのわかんない理屈で強引にまとめる。
そのまま江さんに送稿して、新幹線に飛び乗る。
今回はライフサイエンス出版というところの『薬の知識』という雑誌の企画で、養老孟司先生との対談。
『バカの壁』で洛陽の紙価を高めた養老先生のお話を差しで伺えるとは、望外の幸運。
先生を待たしちゃいけないと予定の時間より1時間前にわっせわっせと会場の第一ホテルに着くと、なんともう養老先生が着いておられた(養老先生も私以上の「イラチ」の人なのであった)。
肝心の主催者が未着なのであるが、とりあえず「あ、ウチダです」と平伏してご挨拶をする。
ご挨拶をした以上、そのまま対談開始までじっと黙っているわけにもゆかない。
頂いた名刺の「オーライ! ニッポン会議代表」という不思議な肩書きはこれはいったい何ですか、というところから話が始まり、先生の「参勤交代説」を伺ううちに、とんとんと話が進んで、主催者登場まで1時間近くおしゃべりをする。
それから改めて対談ということになったのであるが、別に決まったテーマがあるわけではなく、さらに2時間余にわたって話頭は転々、奇を極めてよくここに抄録することがかなわないのである。
それにしても痛快無比な先生である。
先生が驚嘆すべき博識の人であることはみなさんご存じの通りであるが、極大から極小へ、観念奔逸的思弁から科学的実証性まで縦横にかけめぐって先生の軸が少しもぶれないのは、おそらく先生が本質的に「コモンセンスの人」だからである。
ふつうの人間は「人間はすべての真理を知ることはできない」ということを推論上の障害と考えるが、先生はむしろ「人間なんて、何もろくにわかっちゃいない」にもかかわらず、「『何がまっとうであるか』だけは判断できる」という経験的基礎の上に、あらゆる原理主義的思考、あらゆる「正義」のイデオロギーに敢然と立ち向かう。
その「立ち向かう」構えが「スマート」であるのは、知的原理主義と戦う人間が使うことのできる最良の武器が「笑い」であるということを養老先生がよくご存じだからである。
その意味では、先生はラブレーやモンテーニュの系譜につらなる「正統派ユマニスト」であると申し上げてよろしいであろう。
養老先生のような方が、社会の「メインストリーム」におられて、われわれを暖かく見守っていてくださるというのは、まことに心強いことである。
どうもありがとうございました。また、お話聞かせてくださいね。

昨日ビートルズについて書いたら、テープの提供元である「ナイアガラー界の大御所」石川茂樹くんからメールで訂正箇所のご指摘があった。
From me to you はビートルズがオリジナルで、デル・シャノンがカバーしたのである。
あと、「三橋三智也」じゃなくて「三橋美智也」。
ジョン・レノン、ポール・マッカートニーさまならび三橋美智也さまに対して、失礼の段、伏してお詫び申し上げます。
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