2月6日

2004-02-06 vendredi

合気道の稽古を終えてばたばたと東京へ。
学士会館に12時近くに投宿。ばたりと就寝。
朝8時にがばっと起きて、「インターネット持仏堂」の原稿をさくさく書く。
午前中に面会が一つ。
新規ビジネスについてのお話である。
私のような人間のところにネットビジネスのお話が舞い込んでくるというのも不思議な気がする。
専門用語が飛び交って、話は半分も分からなかったけれど、日本社会が「ハイコンテクスト」社会であって、「阿吽の呼吸」でコミュニケーションするための汎用ツールには必ず市場のニーズがあるだろうという基本の考え方は納得。
でも、私はネットをつかってこんなことをやってはいるけれど、基本的には face to face の「身体派」である。
人間はおのれの拳に思想の全重量をかけるしかない、という17歳のときの(吉本的だなあ、このワーディング)基本的な構えはその後もぜんぜん進歩していない。
どちらかというと、いまでは「舌先三寸に思想の全重量をかける」だけど。
とりあえず、声が届く範囲で仕事をしたい、という自己限定があるので、大きい話はちょっと苦手である。

午後から御茶ノ水で三砂ちづる先生との対談。
今回は医学書院ではなくて、晶文社の安藤さんと足立さんの仕切り。
4月から東京の朝日カルチャーセンターでは三砂先生とウチダの連続対談というのを企画しているらしい(よく知らないけど)。
それに繋げて、話をまとめて一冊にしてしまおうというプロジェクトである。
三砂先生と会ってお話をうかがうのは、たいへんに楽しい。
まずは着物の話。
それからお産の話、身体感受性の話、龍神の祟りの話、書生の話、テレビと地域社会の話、ブラジルの幼稚園の話、母親の呪縛の話、ウチダの高校中退の真相の話などなど、4時間半ぶっつづけで話し続ける。
話は止まらないけれど、とっぷり日が暮れてきたので、御茶ノ水の駅でみなさんとお別れして、新幹線に飛び乗る。
深川めしでビールを飲みながら別れ際に安藤さんからいただいた高橋源一郎さんの新著『私生活』を車中で読みふける。
腰巻きが

「これを書いている間、二度結婚して、二度離婚した。死ぬかと思った」

そ、そりゃ、「死ぬかと思った」でしょうね。
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