2月4日

2004-02-04 mercredi

レヴィナスの翻訳。
あと100頁。このペースでゆけば二月中に終わるはずである。
なんとか「年度内脱稿」という目標はクリアーできそうだ。
そのあとは春休み中に海鳥社の『他者と死者』を書き上げる。
そうすると4月以降は往復書簡と対談の仕事だけになる。
受け付け順からゆくと、次の書き下ろしは講談社メチエの『道徳論』。そのあとは文春新書の『ユダヤ文化論入門』。
この二つは年内に書けるかもしれない。
よく働くなあ。
対談とか講演のしごともなんだか春休み中にはずいぶんたくさんある。
ウチダはもともと「異業種」の人の話を聞くのが大好きなので、対談はよほどのことがなければ断らない。
講演は、拘束時間が文章を書くのに比べると圧倒的に短いから、わりと気楽に引き受ける。
神戸女学院大学のパブリシティというたいせつな「営業活動」でもあるしね。

翻訳のあいまに「作文の会」から頼まれた「身体と言語」という原稿を30枚書く。
ベルクソンやヴァレリーの「運動性記憶」というアイディアを武道技法論むすびつけようとしているところなので、それを架橋するための「言語と身体」の問題をしばらく前から考えている。
その途中経過報告書みたいなものである。
ちゃんと結論が出ないで、「ここまでしか分からない。これからどうなるのであろうか・・・」というふうに原稿が終わってしまったが、まあ、そういうものである。
下手にまとめるよりは「結論が出ませんでした」と投げ出しておく方が、あとあとのためだ。

午後から大学で自己評価委員会の研究活動・教員組織小委員会の会合。
島井先生、飯先生と私の三人だけのちいさな委員会であるが、ここで教員評価システムとかFD活動とかいろいろなアイディアを練っているのである。
おふたりともたいへんスマートな先生なので、話が早い。
早いついでに「脱線」も多い。
「そういえば、これは本筋とは関係ないんですけど」
という話で盛り上がる。
教員評価システムは本学が私学では全国にさきがけて・・・と考えていて実際に動き出したのは早かったのだが、学内での合意形成に時間をとってごちゃごちゃしているうちに、もう全国の大学がどんどん導入を決めてしまって、あっというまに「後方集団」にのみこまれてしまった。
この反応の悪さが本学の組織問題のネックである。
とにかく、ひとつことを決めるのにやたら時間がかかり、時間がかかっているうちに「なんのために」という本筋からはずれて、枝葉末節な手続き問題とか、「オレはきいてないぞ」とか、「私の立場はどーなる」とかいう議論に消耗する・・・ということがなんだかやたらに多い。
「雇用の確保」ということを最優先する、ということについてはどなたも異論はないはずである。
「理想的な大学教育をしたい」という思いはよく分かるけれど、その前段には「大学が存続する」という条件がつく。
大学がなくなってしまったら、理想的な教育もできない。

三宅先生のところに寄って身体をほぐしてもらう。
3月20日の芦屋の三軸自在セミナーに、池上六朗先生、光岡英稔先生、ウチダの「鼎談」というイベントが組み込まれたそうである。
池上先生と光岡先生の「対談」では、なんの話をしているのか聴衆に理解できないであろうから、ウチダを「通訳」としてそこに入れたらどうかという三宅先生のご高配である。
そのあとみんなでベリーニで美味しいものを食べるのだそうである。
これは楽しみ。
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