12月11日

2003-12-11 jeudi

三宅先生のところに治療に行くと、痩せて不健康そうなサラリーマンが治療を受けていた。
気の毒な・・・と思って眺めたら、わがIT秘書イワモト君であった。
おお、なんと過酷な人生をキミはおくっているのか。
三宅先生も気の毒がって、いっしょに三宮にご飯を食べに行くことになった。
ご令息の将喜くんもご同行。Re-set でウッキーと合流。
さらに三宅先生の「掌中の玉」であるところのお二人の女性が参加して総勢7名の宴会となる。

今回の宴会テーマは「三宅先生のカルマ落とし」である。
ご存じの通り、人間がお金を稼ぐと、もれなく「カルマ」がおまけについてくる。
お金を退蔵すると、カルマもいっしょにたまって、心身に悪い影響を及ぼすことは、ひろくご案内の通りである。
それゆえ、古来、聖者といわれる人々は、カルマを逃れるためにいっさい「お金」に触れなかった。
しかし、こちらは資本主義市場社会で暮らす煩悩の犬であるからして、おいそれと財布をもたずに生きてゆくことはできない。
しかたがないので、お金が入ると「すかさず使う」というかたちでカルマ処理をするわけである。
三宅先生のようにお金がどんどん大量にはいる身分となると、ご本人ひとりの努力では、なかなか処理能力が供給量に追いつかないという事態に立ち至る。
このままでは遠からずカルマ貯蔵量の限界に達してしまうのではないか・・・
年末となり確定申告の時期が近づくにつれて、三宅先生の顔がしだいに暗く沈んできたのをウチダは見逃さなかった。
先生は膨大なカルマの処理に困じ果てておられるのである。
恩人が陥ったこの窮状を救わずして、どうやってこれまで蒙った大恩に報いることができよう。
ウチダにも処理せねばならぬ多少のカルマの不良在庫はないわけではない。だが、これはまあ合気道部の連中とかゼミの子たちとかるんちゃんとかにお手伝いいただければ、すす払い程度の手間で処理できる見通しである。
それよりまずは三宅先生の巨大カルマが先決である。
というわけで、一同必死になって、ほとんど宗教的使命感のうちに、ビール、ワイン、シャンペン、ウイスキー、カクテルを鯨飲し、さらにフォアグラを食べ、チーズをかじり、パスタを啜ったのである。
美味であった。
まことに美味であった。
皆様方のお話もたいへん愉快であり、また教養涵養上、ゆたかな知見にあふれたもの(クラブとキャバレーとキャバクラの違いについて、など)であったことも感謝とともに付記しておきたい。
三宮駅頭でお別れしたとき、心なしか三宅先生の顔にみずみずしい生気が甦ったように見えたのは私一人だけではないであろう。
さきほどその三宅先生から「感謝のメール」が届いたので、謹んで採録させていただく。
「私も、内田先生のご協力を得て、カルマを落とし、すっきりしました。今日来院した患者はきっとすぐ治ります。はあー、楽チン、楽チン。」
私がここまでデマカセを述べていたと思っていた読者諸君はもれなくゼウスの雷撃を受けるであろう。
まことに、よいことをしたあとは気持ちがよいものである。
三宅先生、また「よいこと」をさせてくださいね!
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