10月24日

2003-10-24 vendredi

げっほ、げほ。げほげほ。
まことに今年の風邪はひつこいのー。
ドクターにもらったお薬を処方を無視してがぶがぶ飲んだら、熱と鼻水は収まったのであるが、咳がまだ止まらない。
げほげほ。
それでも三日ぶりにスーツを着て、大学へ出勤する。

出勤前にメールをひらくと、かなり面倒な問題が持ち上がっている。
もちろん大学の体面にかかわる問題なので、私ごときがここで縷々書きつづるわけにはゆかない。
しかし、本学の経営方針を決定されている方々は、いったいどのような情報と論理的根拠に基づいて、本学の経営方針をご決定遊ばされているのか、またその決定過程についての説明責任ということについてどんなふうにお考えなのであるか、ウチダには理解が及ばない。
たぶん、ウチダごときが理解するのは不可能なほどに深遠なご思案があるのであろう。

研究科委員会。
ここでもいささか面倒な問題が持ち上がっている。
もちろんコンフィデンシャルな問題なので、私ごときがここで縷々書きつづるわけにはゆかないのである。
ただ、「どっと」疲労感が出てくるタイプの問題である、と記しておくにとどめたい。

研究所総会。
イラチのシミチュー研究所長の「はえーはなしが」的議事進行により、瞬間的に総会が終わる。
私は多くの「イラチ」をこれまで見てきて、私自身をひそかに「日本一のイラチ男」と自負していたのであるが、シミチュー先生のあることを失念していた。世間は広い。
総会後の研究発表ではイネの遺伝子操作で医薬を生産するという今日的な主題のお話を伺う。
内容については失念したが(するなよ)、ひとつだけ断言できることがある。
パワーポイントを効果的に使用するためには室内の照度を下げる必要があり、室内照明が暗くなると、発表内容のクオリティにかかわらず、人間の知解能力は有意な低下を示す、ということである。

カミュ研究会。
本町のラ・ロシェルで、ひさしぶりに三野先生はじめとするカミュ研のみなさまの尊顔を拝する。
このところ学会をさぼり続けなので、お会いするのは3年ぶりくらいである。
久闊を叙すまでもなく、笑顔の三野先生から滞納している学会費二年分を徴収される。
「ためらいの倫理学」の初出は、この研究会発行の『カミュ研究第四号』であった。
ああいうことを好き勝手に書かせてくれる、まことに風通しのよい学会なのである。
ひさしぶりに同業のみなさまと談論風発。
しかし、話題は「国公立の専任教員6年間で25%削減」とか「非常勤講師の全員解雇」とか、恐ろしい話が主体であった。
日本の大学の未聞の地殻変動が始まりつつある。
いまから5年後に、日本の大学がどんなふうになっているか、正確に見通している人はたぶんどこにもいない。

ためらいの倫理学