10月18日

2003-10-18 samedi

理事長と面談。
松沢先生はたいへんにお忙しい方なので、面会を申し込んでから10日くらいあとにようやく45分だけお時間を頂く。
自己評価委員長として、教員評価システム、契約教員制度、理事会改革、職員の勤務考課システムなどについて、忌憚ないことを申し上げ、理事長からも忌憚ないご意見を承る。
もちろん内容はとってもコンフィデンシャルであるので、このようなところに縷々書き記すことはできない。
理事長は「やるときは、がんがんやる」という「断行」型の気質であり、「日本一のイラチ男」であるウチダとは、その点で通じるところが多い。
ただ、ご着任以来の「断行」プロジェクトの中には、事前の「根回し」というか、「瀬踏み」というか、「手当て」というか、そういう面倒な仕事にややご配慮を欠いていたために、実現に至らなかったものがある。
私はそれを惜しむのである。
いま理事長が構想しているプランは原理的には「大学のアクティヴィティを高めて、知的センターとしての求心力を回復する」というものであり、戦略的には「それしかない」とウチダも思う。
なんとかそれらの実現のために、理事長のお手伝いをしたいものだと思っている。
喫緊の問題は理事長の戦略的展望何を教職員の過半が「よく知らない」ということである。
理事長と教職員のあいだのコミュニケーションのチャンネルを制度的に担保するために何をなすべきか、ということを考えながら院長室をあとにする。

昨日はNTT出版のお二人の編集者と歓談。
また仕事のオッファーがある。
26冊目の企画である。
「返せる範囲の借金にはリアリティがあるが、返せる範囲を超えるともうどうでもよくなる」という原則にしたがって、「わははは」と笑って快諾する。
でも「アメリカン・グローバリズムの終焉」というお題はなかなか刺激的なプランであるので、来年はこれを主題にして大学院のゼミをやってみようかしらと考える。

洋泉社からは「武道論」の原稿依頼。これは30枚ということでお受けする。

龍谷大学の社会学部学会というところからシンポジウムの出席依頼。
「身体の歌を聴け」というかっこいいタイトルで、司会は先般お世話になった亀山先生。パネリストは岩下徹さんと甲野善紀先生と私というラインナップである。
岩下さんとは先般京都造形芸術大学のシンポでコバヤシ先生のご周旋でご一緒したし、来週の身体運動文化学会では本学にお越し頂くことになっている(私はシンポジウムの裏方である。司会はまたまたコバヤシ先生)。
甲野先生とはたぶんその前に少なくとも一度はお会いするような気がするので、「今日の話は昨日の続き」的シンポジウムとなることは必至である。
まことに「ご縁の風は向こうから吹いてくる」もののようである。
というわけで、11月は19日が朝日カルチャーセンター、20日がこのシンポジウム、21日が資生堂での Word Friday(対談のお相手は鈴木晶先生)と三日続きでしゃべくりまくることになっているのである。
おしゃべりは私の場合、知的活動というよりは合気道のお稽古にも通じる身体的活動であるので、こういうのはまったく苦にならない。

風雲三宅坂劇場につづいて、新店子の「Q伝ミカのOL武芸帳」が新連載開始。
店子になるのはウチダが「いいよ」と言えば、どなたでも自由である。その点ではそこらの長屋と同じである。
条件は一つだけ、「タイトルおよび装丁はウチダが決める」ということである。
今回のも最初は「阿Q外伝」にしようと思ったのであるが、「意味わかりません」と言われそうなので、今回のものに落ち着いた。まあ、それでも意味わかんないけど。