9月18日

2003-09-18 jeudi

短いようで長いバカンスが終わる。
早起きして荷造り。迎えの車で KAHULUI AIRPORT へ。そそくさとアロハ航空に乗って、30分でホノルル。ここは待ち時間が長いのでビュッフェでアメリカ風朝御飯。こちらに来て一度も食べてないホットドッグをバドワイザーで流し込む。ホットドッグも大きいけれど、付け合わせのポテトの量がはんぱではない。こんなものを全部食べていたら、たいへんである。
現に、「たいへんなこと」になっている人が五人に一人はいる。
兄ちゃんによれば、これはハワイのみの現象ではなく(たしかにハワイは人をしてデブにせしめる要素に溢れていることは否定できないが)、ニューヨークやシカゴでも事情は変わらないそうである。
国民の健康を気遣って、喫煙をあれほど厳しく禁止するお国柄であれば、フライドポテトとポテトチップスを禁止する方がむしろ趣旨にはかなっているのではあるまいか。
いや、あの国のことだから、そのうちほんとうに「公共施設でのポテト摂食を禁じる禁イモ法」を実施するかもしれない。

ホノルル空港の免税店でおみやげを買っているうちに搭乗時刻となり、再び機上の人となる。関空まで7時間半。
ご飯を二度食べて、お昼寝をするあいだに着いてしまう。
結局、『魔の山』は読了に至らず、下巻に入ったところで旅が終わってしまった。まだ600頁もある。ハワイのビーチはドイツ文学にはあまり向かないことが今回経験的に了察せられた。
総括するにハワイにいちばん合う音楽は(当然のことながら)ハワイアンであり、志ん生のもたらす深い脱力感もハワイ向きであることが知られたのである(おそらくコートダジュールにはなじまないであろう)。今後ハワイに行かれる方の参考に資すれば幸いである。

今回のリゾートでの支払いは部屋にチャージしてチェックアウト時に精算したのであるが、全額兄ちゃんがカードで払ってくれた。
「あとで半分こしようね」と申し上げたのであるが、「まあ、ここは奢っておくわ」というたいそう太っ腹な対応をしていただいた。
スーパーリッチな兄を持つというのはまことにありがたいものである。
今回のハワイ旅行は、身に添わぬアブク銭のもたらす「カルマ」を落とすという宗教的目的もあったのであるが、あるいは兄上のカルマは私の比ではないかも知れず、ここは長幼の序を重んじ、兄上の霊的浄化に一歩を譲ることにしたのである。
わが身のカルマについては今後、秋のスーツ購入、新車購入などの蕩尽的消費活動によって補正を計りたいと思う。

家にもどると、メールが50通ほどたまっており、ファックスからは数メートルの仕事が垂れていた。
明日から合気道の合宿であり、それが終わると24日から大学が始まり、もう休む時間も原稿を書く時間もなくなる。
夏ももうおしまいである。