8月31日

2003-08-31 dimanche

三宅安道先生のご案内で、信州の池上六朗先生をお訪ねする。
池上先生には、7月末の芦屋での三軸修正法講習会でお会いして以来であるが、またゆっくりとお話をうかがう機会を楽しみに待っていたのである。
昼過ぎの新幹線で三宅先生とご一緒に新大阪発。名古屋で中央線に乗り換えて木曽の山の中を松本へ。松本駅には、先生とそもそも最初に池上先生にウチダ本をご紹介下さった最上浩さんがお迎えに来て下さっている。そのまま車で白馬村へ。池上先生がご愛用のプチホテル Bas Breau に投宿。
このホテルは自家製の野菜を使ったフレンチで有名なところだそうである。
さっそく池上先生の奥様もまじえて、生ビールで乾杯。そのままルイ・ジャドに突入。
お肉や魚も美味しいけれど、野菜がほんとうに美味しい!
身体の芯まで届くような「生命感」がある。取りたて野菜って、ほんとうに「生きている」ということがよく分かる。
生き物をこうやってばりばり食べて、なんと人間とは罪深い存在なのであろうと改悛しつつ「おいしいおいしい」と野菜を食べる。

座談の中心ははじめてお会いする最上さん。
池上先生のご紹介が「彼はね、皇族とやくざの親分と両方を診ている、めずらしい人です」というものであった。
さっそく御所の中でどんなふうに人々は暮らしているのか、日本最大のやくざ組織の一つであるS会の総長というのがどんな人物であるかといったきわめて興味深い論件についてのインサイドレポートが語られた。
最上さんがやくざの生態にたいへんお詳しいのは、ご自身の「現役」時代に池上先生の門を叩き、何年か修業されたあと、総長に「堅気になりたいのですが・・」と申し出られたところ、最上さんの技術を高く買われていた総長が「指つき」での退職を許可してくれたという経緯があるからなのである。さらにその前歴は「赤ヘル」というまことにシクスティーズにしてストリート・ファイティング・キッズ的な青春を送られた波瀾万丈の方なのであった。
このような方の辱知の栄を賜り、抱腹絶倒の内輪話を伺うというのは、なかなかふつうに大学の教師をしているとかなわぬことである。これも三軸自在の効用。

今回は池上先生との対談本の打ち合わせを少ししておこうと思って伺ったのであるが、最上さんの話があまりに面白かったので、こちらの仕事の話は、「では、そういうことで、よろしく」というだけで終わってしまった。
池上先生の『カラダ・ランドフォール-三軸修正法の基礎』は版元の柏樹社がなくなってしまい、今は絶版状態なのだが、今度BABに版元を移して再版されることになった。その「推薦文」を池上先生から頼まれる。たいへん光栄なお仕事であるので、喜んでお引き受けする。
最上さんの座談こそそのまま出版したいくらいなのだが、皇室とやくざのインサイドストーリーでは命がいくつあっても本にはできない。食後のウイスキーなど喫しながら、「ここだけの話」で「おおおおお」と盛り上がるしかないのである。

深更に及ぶまでわいわい呑んでいたので、翌朝はサバ目。
それでも美味しい朝御飯をいただいているうちにまた元気になってきて、お昼近くまで歓談。そのあと雨の中を松本に戻り、アルプスを望む涼しい診療所で、三宅先生ともども池上先生に治療を受ける。
池上先生ご夫妻のご案内で松本駅近くのフレンチへ。ここでまた日の高いうちから生ビールにベネチアワインを頂きながら、サーモン、フォアグラ、ラムなどを爆食する。
四食、おなかがはちきれるほどごちそうになり、持ちきれぬほどお土産をいただいて家路につく。
ご歓待下さった池上先生、奥様、最上先生、そして「プロデューサー」の三宅先生、どうも愉快な休日を過ごさせて頂きまして、ありがとうございました。今度は10月に赤ワインを手土産に鴨を食べにいきます。