光岡英稔先生による韓氏意拳講習会。
岡山から内家武学研究会の光岡先生がお弟子の野上明宏さんと共に、守伸二郎さんのご案内で、ついに岡田山に登場された。(そのあとを追って、巨大なキッキングマットを抱えて白石さんが自転車で登場)
本ホームページでの告知だけであったが、遠方からお越しになった方もあって、講習会参加者は50名ほどになった。
本学合気道会の他に、東大気錬会から工藤君(東京からごくろうさま)、ピーちゃん。京大合気道部 OB の赤星君、神戸大学合気道部 OB の中川さんご一行、凛塾の曽我君といった常連にまじって、心身道の辻田師範、三軸自在の三宅安道先生ご一行(福原秀夫さんは黒田鉄山先生の振武館のご門人)、そしてWBC世界フライ級第二位の本田秀伸さんも三宅先生とご一緒に見えられた。
光岡先生の凄さを一人でも多くの武道関係者に実見してもらうというイベントの趣旨はとりあえず達成されたようである。
まずは意拳の基本動作である形体八種類と站椿の基本二種類(全部で八種類あるのだけれど、今日はここまで)
そのあと、そうやって練り上げた光岡先生の功がどれほどのものかを参加者たちに実体験してもらう。
先年の大阪の講習会で私は先生の勁を一度経験したのだが、光岡先生はそのあと広州の珠海で意拳創始者王郷斎(ほんとうは「くさかんむりに郷」なのだが、私のワープロでは出ない)の四大金剛力士の一人韓星橋とそのご子息の韓競辰から直接韓氏意拳を学ばれて、技が一変してしまった(そうである)。
たしかに一層凄くなっている。
厚さ20センチのキッキングマットでプロテクトしても、ほとんどスイングバックのない掌底での打ちだけで人々が吹っ飛んでゆく。
押されているのでも、打たれているのでもなく、目の奧に火花が散るような電気的な衝撃が走るのである。
あとで光岡先生にお聞きしたら、合気道経験者はみんなわりと「勁の逃がし方」が上手だとほめて頂いた。「きれいに」飛ぶと、結果的に衝撃が身体に残らないのである。それでも、浸透性の高い勁や上下方向の勁だと「抜けない」ので、内臓へのダメージが大きい。
王郷斎は晩年まで試合を拒まなかったので、手合わせした経験のある武道家や格闘家は多いが、みな手が触れただけで「電撃」を食らって壁に叩きつけられたり、気を失ったりしたそうである(掌だけでなく、肘や肩からも発勁したと伝えられている)。
すごい世界である。
しかし光岡先生の勁を実際に受けると、そういう伝承が真実であることが実感されるのである。
そのあともカリ、シラット、グラウンドワーク・テクニックなど光岡先生の多彩な武技をご披露頂き、5時間にわたる講習会を終えた。
講習会後に30名ほどで懇親会へ。光岡先生を囲んで、意拳の話をさらに詳しく伺う。
ほっそりした温顔と優しい声で、ちょっとプロボクサーには見えない本田選手が熱心に質問をしていた姿が印象的であった。(せっかくの機会なので、白石さんにツーショットを撮ってもらう)本田選手は10月に世界タイトル戦が待っているそうである。みなさん、応援しましょうね。
二次会は渡邊さん、小林さん、ドクター佐藤、工藤君、ウッキーと三宮の RE-SET へ。
光岡先生を囲んで美味しいワインでますます盛り上がり、橘さん、国分さんら「街レヴィ武闘派」もまじえて、ふたたび光岡先生の発勁の体験会が始まる(ほかのお客さんはびっくりしていた。当然だけど)。
結局午前二時までわいわい騒いで、明日も朝から稽古のある先生を三宮ターミナルホテルまでお見送りして、ようやく散会(ドクターと工藤君はウチダ家泊まり)。
結局私は光岡先生とトータル15時間べったりとご一緒して、お話を聴き続けたことになる。ほんとうに愉しく充実した一日であった。
光岡先生はひとことで言えば「大洋的」(あえて言えば「ハワイ的」)な方である。
先生の笑顔を拝見し、穏やかな声を聴いていると、太平洋の海風のような爽やかで、暖かなものが吹き寄せ、響いてくる。
つい、にこにこしてしまう。
私が今年の夏、一念発起してこれまで何の興味もなかったハワイに兄ちゃんといっしょにバカンスに出かける決意をしたのは、光岡先生のような大洋的人格を生み出す風土を一度見たくなってしまったからである。
ともあれ、こうして希代の武道家の謦咳に親しく接することができるのも、もとはといえば、甲野善紀先生から始まる「ご縁ネットワーク」のおかげである。
光岡先生、野上さん、守さん、白石さん、そしてお仕事が忙しすぎて残念ながらお顔を出して頂く時間がとれなかった甲野先生も、みなさん、ほんとうにありがとうございました。
ウチダはまことに幸運な武道家であります。
(2003-07-19 00:00)