痛てて。
目が痛い。
痛いのも当然で、宿痾のメバチコを切除したからである。
厳密にはメバチコではなくて、霰粒腫(さんりゅうしゅ)というもので、結膜にある脂腺に雑菌が入って化膿して出来るのである。
どうしてそんなものが出来るのですかと執刀の西崎先生に訊くと、おそらく幼児のころに相当重症の結膜炎に罹患し、そのときに結膜そのものが「荒れて」しまったことに遠因があるのであろうというご説明であった。
先月苦しめられた結膜結石も原因は一緒だそうである。結石が出来るので目がかゆくなる。かゆいので寝ているあいだに目をごしごしこする。すると雑菌が腺から入り込り化膿するのである。
「はやく切る方がいいですよ」と言われる。
三軸自在の三宅先生も先般同じものを切除されたそうであり、「たいしたことないです」と言っておられたので、「じゃあ、ばっさりやってください」ということで一度出直して午後の手術時間に眼科を再訪。
手術室に寝かされ、麻酔してからまぶたを切開して二針縫う。
麻酔が効いて痛くないといっても、さすがにまぶたを切り取られるとけっこう痛い。
手術が終わって蹌踉と家路につく途中で麻酔が切れてきて、けっこうたいへんなことになる。
「うぎゃぎゃ」とおめきながらとりあえず鎮痛剤を服用してベッドに倒れる。
一時間半ほど横になっていると少し痛みが緩和して、「激痛」が「疼痛」くらいになる。
今日は貴重なオフなので、『現代詩手帖』の高橋源一郎論と紀伊国屋書店ご依頼の「翻訳論」を書き上げ、ついでに「トップ100校申請書類」のラフくらいは仕上げようと思っていたが、とてもそんなコンディションではない。
残った片目が視力のほとんどない右目なので、片目では本もよめないし、映画もみられない。(なにしろ、今もパソコンのディスプレーの10センチ前まで顔を寄せて打っているのである)それにこうやって右目を使っていると、左目もいっしょに眼圧が上がるのか、痛みが出てくる。もうヤメよ。
それにしても歯茎が化膿したり、結膜が化膿したり、外界とのインターフェイスがあちこち化膿するのは、要するにウチダ本体の免疫機能が低下しているからである。
疲れているのである。
疲れすぎて(翌日に残してしまった仕事が気がかりで)夜も眠つけないのである。
ウチダは果たして生きて夏休みを迎えることが出来るであろうか。
とりあえずいまから一週間ほどは私に「新規の仕事」を言いつけないでね。
おねがひ。
(2003-07-17 00:00)