『渡り鳥』のホンを書いたのは、「あのハラケン」なのか?という問いかけに早速情報のご提供がありました。
ミヤタさん情報提供ありがとうございました。そのご教示によりますと・・・
「http://www.8107.net/akira/taidan_hk.htmlを見ると、冒頭で「原作者・原健三郎」とあって、なおかつ末尾に
> *原健三郎氏の原作とは、正確にはシリーズの原案のこと。
> 出典:別冊 近代映画 大草原の渡り鳥 特集号と注釈も付いています。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/7643/jinbutsu.html#haraken
にも、
> 小林旭主演の日活映画「渡り鳥シリーズ」の原案者としても有名。とあります。(「脚本家」だと書いてあるページも結構多いんですけど)
ただ個人的には、あのハラケンなら、「代議士やりながらアキラのホン書」いても不思議ではないような気もしますが(笑)。」
いや驚きました。
asahi.com で「原健三郎」を検索したら、「代議士を20期務め、00年に引退した原健三郎元衆院議長の選挙は、『お助け下さい』と本人や妻が土下座して投票を頼むことで有名だった」という情報しかなかった。
ミヤタさん提供のURLを拝見すると、渡り鳥、流れ者シリーズの「原作者・原健三郎、企画・児井英生」が対談していて(1960年)、その中で、ハラケンが、「それなら僕も三十年、書き続けるよ。代議士落ちたら、日活に移るよ。(笑)」と笑っていた。
このときすでに代議士14年目。その36年後に尾崎行雄、三木武夫に次ぐ在職 50 年を迎えることになるとはご本人も予想だにしなかったであろう。
しかし、むしろ驚きなのは、ハラケン自身が風貌といい、その後の政治スタイルといい、『渡り鳥』シリーズで金子信雄が演じた「地元の自然と民衆の伝統的なライフスタイルを破壊して、アミューズメントセンターやホテルを誘致しようとしている政財官癒着タイプの近代ヤクザ」と酷似していることである。
これはどういうことなのであろう。
金子信雄がハラケンに乗り移ったのか、それとも『渡り鳥』の登場人物として金子信雄をヴァーチャルに殺害することによってハラケンの内面における「金子信雄的なもの」の「禊ぎ」が果たされ、晴れて人格的に全面開花できた、ということなのであろうか。
しかし、「淡路島開発に与えた『渡り鳥』シリーズの説話論的影響」というような学術論文のあることを私は寡聞にして知らない。日本の若手映画研究者諸君はぜひともこういうスケールの大きなテーマに取り組んで欲しいものである。
金子信雄のキャラクターはその後『仁義なき戦い』の山守組長にほぼそのまま継承された。同じく『ギターを持った渡り鳥』で金子信雄の秋津組に草鞋を脱いで裏切られる滝伸次は山守組若頭武田明の苦悩にオーヴァーラップすることになる。
日本映画史もこうやって見るとまことに多領域をクロスオーヴァーしつつディープな世界を構築しているのである。
というわけで今夜は『大草原の渡り鳥』。
(2003-07-11 00:00)