夜遅くにるんちゃんから電話がかかってきて、「お父さん! 『第三文明』の中吊り広告に写真がでっかく出てるよ。あたし、恥ずかしいよ」ときびしく責められた。
すまない。
今月半ばに思い立って顔写真はもう世間に出さないと決めたのであるが、あの日のインタビューは「写真はダメ」という告知が伝わっていなくて、カメラマンが現場に来ていたのである。
仕事に来ているプロに向かって「写真はとっちゃダメ。君は帰りなさい」というような非人情かつ反社会的なことは常識あるサラリーマンであるウチダは口にできない(「タトゥー」とは違うの)。
しかたなく泣く泣く写真を撮られてしまったのである。
しかし、これが最後である。
もう二度と私の顔がメディアに出ることはないであろう。
次のインタビューは『B』という雑誌であるが、顔写真の代わりにネコマンガでOKしてもらった(なかなか度量のある雑誌である)。
これからは芦屋写真館でばっちり修正してもらった(本人に全然似てない)証明写真かネコマンガで我慢して頂く。それがいやならご縁がなかったということでご勘弁。
だって、世間に顔を知られることで私自身には何の益もないからである。
TSUTAYA の店員に「あ、あれウチダじゃない? このあいだ中吊り広告に出てた? 何借りってたの? え? 『岸和田少年愚連隊・カオルちゃん最強伝説』? 頭悪い学者だな」と言われたり、コープの店員に「ねえ、見た? いまのウチダよ。やあね289円のカツオの叩きにしようか298円のタコブツにしようか、五分も迷ってたわよ。ビンボくさい」というようなことを言われたくない。
あれは「私の身体はカツオを求めているのか、タコを求めているのか」を知るべく耳をそばだてて身体からのメッセージを聞き取っている姿なんだから、多少は時間がかかるもんなんだよ。(「カオルちゃん」については特に言うべきことはないが)
(2003-06-30 00:00)