6月11日

2003-06-11 mercredi

やっほーのオフ日なので、「お買い物」&映画の一日。
三宮大丸でアルマーニの夏のスーツとシャツと靴とデッキシューズを購入。
私は年に二回(初夏と年末)しか買い物をしない無精な人間なので、ここを先途と買いまくる。
三軸自在の三宅先生のおかげで体重が4キロ減って胴回りもだいぶ涼しくなった。
(ふふふ、あと6キロ。65キロまで減量するぜい。刮目して見る可しわが痩身)
だから、上着を肩幅胸囲で合わせるとパンツの胴回りは5センチも縮めないといけないのさ。(「さ」ににじむ自慢)

映画は『マトリックス・リローデッド』(私は「あの手の映画」だけは映画館で見ることにしている)
もちろん事前にすべての映画評はシャットアウトして、あらすじもみどころもバックステージ情報も何も入れず「タブララサ」状態で見る。
やはりユエン・ウー・ピンのコレオグラフィーのすばらしさに尽きる。
「しなう身体」の美しさを堪能。
人間の身体って、ほんとうにきれいだなあ。
一瞬停止して、リアルスピードに戻る、という仕方で「しなう身体」を見たい、という素朴な欲望に「痒いところに手が届く」的に応じてくれるサーヴィス精神に感動。
ストーリーラインとか構造分析なんか、もうどうだっていいよ。
ウチダは「こういう映画」を断固支持する。
そして、この映画的愉悦の原点にあるのは香港カンフー映画(ブルース・リーの超常的身体能力とツイ・ハークのオタク的わくわく感)なんだよね。
『マトリックス』シリーズはおそらく中国でもロシアでもアフリカでも中近東でも、世界中で支持されると思う。テーマとかメッセージとかいう水準ではなくて、「人間の身体の動きの美しさ」に対する私たちすべてに共通する素朴な感動のゆえに。
ただ、それでも映画的技巧が可能にする高揚感は『燃えよドラゴン』におけるブルース・リーの動きや、『荒野の七人』で酒場のカウンターを飛び越すときのスティーヴ・マックイーンの飛翔のゆるやかさや、「起こりのない」立ち方をするジェームス・コバーンが与える感動には及ばない(スティーヴ・マックイーンとジェームス・コバーンはブルース・リーの「弟子」なんだ、そういえば)。
ベン・ジョンソンの乗馬術、三船敏郎の操剣術、フレッド・アステアの階段の降り方、ケーリー・グラントの服の脱ぎ方、アラン・ドロンの帽子の脱ぎ方、クラーク・ゲイブルのネクタイのゆるめ方、ハンフリー・ボガードの煙草の吸い方、菅原通斉の猪口の扱い方、佐田啓二の靴の脱ぎ方・・・そういう「身体操法の美」を体系的に研究する人っていないのだろうか(いるわけないよな)。
ならば私がやるしかないか。うーむ。これはライフワークになりそうだな。
『マトリックス・リローデッド』ではキアヌ・リーヴスの「キスの仕方」が一つの「芸」として前景化していたから、こういうアプローチって「あり」だな。やはり。
というわけで突発的に全国の映画ファンにご提案。
「私の選ぶベストパフォーマンス・身体操法編」。どの映画のどのシーンで、誰の身体の遣い方にあなたは「美的な完成」を見たか、お知らせ願いたい。(これはけっこうまじめな提案である。それを収集して「映画に見る身体的美」という論考をまとめようというのだ、私は)