5月28日

2003-05-28 mercredi

忙しいオフの日。
まず朝一で下川先生のところのお稽古。これが最後の稽古となる。
この期に及んで、型の間違いを二カ所も指摘されてしまった。(ひえー)
いつのまにか「慣れ」で最初に教わったのと違う動きをしていたのである。
剣呑剣呑。

大汗をかいてから、帰り道にE阪歯科へ。
人工歯根を植えて、抜いた前歯の補修がいちおう終了。
歯根を固めるためにセメントをばりばりつけているので、うまく歯の根が合わず、しゃべると「ふがふが」感が残る。
あと二ヶ月この状態で、歯根が安定したら、もとの歯茎に戻るらしい。
やれやれ、これで肉をばりばり食べられる。

家に戻って紋付きの点検、袴の補修、長襦袢への半襟付けなど「針仕事」をする。
初夏の日差しの差し込む居間でキャロル・キングの60年代ヒットソングを聴きながらいそいそと針仕事をしていると、しみじみ「幸せ」を感じる。こういう「感じ」が分かる中年男性というのは、あまりいないのであろうが。

原稿依頼がばたばたと届く。
岩波書店から「岩波応用倫理学講座」への寄稿依頼。白水社から「現代思想の12人」のレヴィナスの項の執筆依頼。第三文明社からインタビュー依頼などなど。
岩波からはファックス、郵便につづいて電話もかかってくる。
担当は『図書』の寄稿依頼をしてきた若い編集者である。
「ウチダに寄稿依頼をしたら『私は岩波には書かない』とけんもほろろに断られた」というとんでもない噂がまことしやかに岩波内部では流布していたそうである。この方は「だめもと」で連絡してきた勇気ある編集者なのである。
私の担当は金井淑子さん「性/愛」の巻の買売春と自己決定に関する項目だそうである。
アンチフェミニストを公称する私のところにお話がある、ということは、先方にはそれなりのお考えがあってのことであろうが、果たして何を書けばよろしいのであろうか。
買売春はいかんよ、と書いただけでは、あまり「応用倫理学」にならないし。
海鳥社の別府さんから『レヴィナスとラカン』はどうなりました、とお尋ねがくる。
どうなったんでしょうね。

へろへろになったので、三軸自在研究所で三宅先生にぐりぐりしてもらう。
「頭がよくなるサプリメントは効きましたか?」とお尋ねを受けるが、答えにくい問いである。
「効きませんでした」ではせっかく下さった三宅先生に失礼である。
かといって「効きました」というわけにもゆかないではないか。