メバチコ手術に続いて歯の治療。
前歯がぼろぼろになっているので、ぶっこ抜いて人工歯根を入れるのである。
本日はまず根を抜くだけ。それでも70分に及ぶ大手術。
この年になると、歯を抜かれても瞼の裏をこじられても、あまり「びっくり」しない。
まあ、そういうものだよ、という涼しい諦観がだんだん身についてくるからである。
「なんで、オレの歯はこんなに悪いんだ、歯のバカヤロー」というふうには考えず、悪い歯なのに、よくここまで持ってくれた。ありがとね、という感謝の気持ちを抱くようになる。すると、あまり傷跡も痛まないものなのである。
歯みたいなものでも、できればちゃんと「成仏」してもらう方がいい。
歯のあとは三軸自在ぐりぐりと鍼。
一日中病院めぐりである。
編集者三人から電話が相次ぐ。
角川書店の『疲れすぎて・・』は順調な売れ行きだそうである。来週あたり重版がかかりそうですとヤマモトくんから弾んだ声が届く。
ね、だから、大丈夫だよって言ったでしょ。
今回はこれまで私の本を手に取ることの少なかった20代の女性にわりと売れているそうである。
ふむ。
晶文社の安藤さんからは『映画の構造分析』が来月なかばに出ますというお知らせと、甲野先生との次の仕事の打ち合わせ。
『映画の構造分析』は『北北西に進路を取れ』のプレーリーのシーンの写真を使った、ものすごくかっこいい装幀である。
山本浩二画伯の装幀とはだいぶ雰囲気が違う。
ああ、はやく手にとって見たい。
医学書院の白石さんからは朝日カルチャーセンターでの講演の打ち合わせと次の本の「キック」。
白石さんには申し訳ないけれど、「3月末」までに原稿を渡すという大嘘をこいてしまった洋泉社の原稿をまず書き上げないといけない。
海鳥社の『レヴィナス/ラカン』本も春休みに書き上げますと大嘘をついたし。
何よりも国文社の『困難な自由』の翻訳が遅れに遅れており、中根さんの温顔にもおそらく深い苦悩の縦皺が寄っているものと思われる。
というわけで、まずはこの三冊。
そのあいまに晶文社の「甲野先生本」とM島くんの「説教本」が入るし、本願寺出版社のキックも日に日にきつくなってきた・・・
どうして私がこんなにみんなから責められ、ゆえなき「罪悪感」に身をすくめねばならぬのであろう。なんだか理不尽。
泣きながらとりあえず『合気道探求』の原稿を書き上げて送信。
あと来月までに白水社から来た『ふらんす』のエッセイと内田百間先生の文庫版あとがきを書かないといけない。
なのに、6月21日まで、私には「週末」というものがない。
長い長い「死のロード」が明日から始まる。はたしてウチダは生きて夏休みを迎えることができるであろうか。
(2003-05-14 00:00)